《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十二話 婚約お披目パーティー2
紹介と共に盛大な拍手が起き、その後、乾杯が終わりホールには再び音楽が流れる。 
カインの婚約者たち三人は、次々と挨拶にくる貴族たちが並び始める。
橫目で婚約者三人を見るが、薄っすらと化粧をしており、見慣れているカインでも見惚れるほど綺麗だった。
「カイン君、うちのシルクを頼んだよ。まぁ何があっても大丈夫だと思うけど。それと――」
エリック公爵はカインに顔を寄せ小聲で話す。
「……子供をつくるのは人してからね?」
「ちょっ!!」
「もう! お父様ったら!!」
隣にいたシルクにも聞こえていたようで、顔を真っ赤にさせて反論をする。
テレスティアも聞こえていたようで、妄想をしているのだろうか、し上を眺めながらも顔を赤くし、両手で頬を押さえている。
レーサン公爵も笑顔で「また模擬線しような! ティファーナを頼んだぞ」と一言だけ告げ離れて行った。その後も上級貴族と言われる當主やその家族から祝福の言葉が次々と放たれていく。
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そして見覚えのあるコルジーノ侯爵が息子のハビットを連れて挨拶にきた。
コルジーノ侯爵はし不機嫌そうな顔をしながらも、カインに祝福の言葉を告げる。隣にいたハビットは終始無言で不機嫌そうだった。五歳のお披目の時から何かとシルクに気を出していたのが、カインに橫から取られたと思っているのであろう。しかも同じくであるテレスティア王まで婚約者としているのだ。嫉妬しないはずはない。
但し、相手は同じ年とはいえ、上級貴族の伯爵家當主になる。文句を言えるはずもなかった。
恨めしそうに去っていく二人をよそに、次々と挨拶に來る貴族たちと言葉をわしていく。
そして終始笑顔のガルムとサラが、しだけ不機嫌そうな顔をしたレイネを連れて挨拶にきた。
「カイン、婚約したといってもまだ人もしていない。わかっているよな?」
「カイン、早く可い子供見せてね!」
正反対の事を言う二人にカインは苦笑する。
「テレスティア王殿下、シルク嬢、ティファーナ卿、カインの事、頼みました」
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ガルムが三人に向かって軽く頭を下げる。
その姿に三人が驚き、返事を返していく。
「カイン様は私達と一緒にがんばっていきます」
「みんな一緒だから楽しくやっていきます」
「強い子を産みます」
ティファーナだけ言葉に問題があったが流しながらもカインは頷いた。
「レイネお姉様、これからよろしくお願いします」
「レイネお姉様、仲良くしてください」
テレスティアとシルクのその言葉でレイネの表が緩んでいく。
「――おねえさま……おねえさま……うふふっ。えぇ! もちろんよ! 姉として仲良くしましょう!」
今まで妹がいなかったレイネは「お姉様」という言葉に、満面の笑みを浮かべる。
機嫌が良くなったレイネを連れて、ガルムとサラは次の人のためにそのまま橫にずれていった。
その後も上級貴族たちの挨拶が數組続き、上級貴族の挨拶が終わると、次は子爵以下の下級貴族の番となる。
筋で盛り上がった貴族服を著て、豪快な笑顔を見せながらトリス子爵がやってきた。
グラシア領のラメスタの砦の街を守っており、五歳のお披目の時にも顔を合わせていた。
「カイン卿、このたびはおめでとうございます。まさかあの小さかった子がここまで立派になるとは。うちの兵士たちもきっと喜びます」
笑顔で話すトリスだったが、やはり伯爵となったカインには言葉遣いを選びながらだった。
「そんなトリス子爵、昔のようにしてくださいよ」
カインはそういうが、トリス子爵は首を橫に振る。
「さすがにそういかないのだ。カイン卿はすでに上級貴族になられておる。個人的に會う時ならまだしも、こうした公式の場所では気を付けないと周りもうるさいからな」
トリス子爵の説明にカインも渋々ながら首を縦に振る。
「また父の屋敷で話しましょう」
カインの言葉にトリス子爵は笑顔でうなずき、人並みへと消えていった。
何人かと順に挨拶をしていると、王城のり口で會ったラングドシャ子爵の番となった。
「シルフォード伯爵、晝間は申し訳なかった。久々に王都にきたので舞い上がっていたみたいだ」
素直に頭を下げるラングドシャ子爵に好を持ったカインは笑顔で返事をする。
「気にしないでください。改めてよろしくお願いしますね」
カインの言葉に頭を上げたラングドシャ子爵は頬を緩ませ、カインと握手をした。
ラングドシャ子爵との話が終わると次に待っていたのは、サラの父親でもあるサントス子爵だった。
「カイン卿、久々であるな。本日は本當にめでたいな。まさか伯爵まで陞爵されるとは……。しかも王殿下にシルク嬢まで。さらにティファーナ殿と、これは……先が思いやられるな。まぁさすがわしの孫じゃ」
まだ近くにいたラングドシャ子爵も「孫」という言葉に反応して戻ってきた。
「カイン卿、サントス卿が孫と言われたようだが……」
ラングドシャ子爵の言葉にカインが返答する前にサントス子爵が口を開く。
「ラングドシャ卿、そうじゃ、わしの孫でもある。わしの娘がガルム辺境伯に嫁いでおったのでな」
ご機嫌そうに話すサントス子爵に、ラングドシャ子爵も驚く。
「まさか、そうなのですか……。サントス卿にはお世話になっているのです。そんなつながりがあったとは……」
「まぁ、ここで話をしていたら、他の者が挨拶出來ぬであろう。あちらで話そうではないか。ではカイン卿また」
二人が去ったその後も、貴族たちと挨拶を続けていき、一時間以上も挨拶をしていたことにカインはどっと疲れ果てた。
テレスティアとシルクはすでにテーブルで年が近い學友たちと話に華を咲かせている。
ティファーナも、筋隆々の武たちに囲まれて話に盛り上がっていた。
時より剣を持った構えをしているのは、脳筋気味なところがあるから仕方ないことだろう。
メイドからドリンクをもらい、やっと落ち著いたときにはパーティーも終盤に差し掛かっており、最後に聖から祝福の言葉を貰い、國王の言葉で締めることになっていた。
「あともうちょっとか……」
ヒナタを眺めたが、國王たちと同じテーブルを囲んでおり、王族からの言葉に無表ながらも頷いていた。
そしてパーティーも終盤にかかった。
音楽が止まり靜かになったホールで國王が立ち、皆を見渡す。
「楽しい時間だったが、そろそろ時間になる。最後に聖殿から言葉をいただく。聖殿よろしく頼む」
國王の言葉に立ち上がったヒナタが國王の橫に立った。
心なしかヒナタの顔が赤い気がしたカインは、ヒナタが座っていたテーブルを見ると、そこには途中まで飲んだと思えるワイングラスがあった。
「……もしかして……」
し不安になったカインはヒナタの顔を見ると視線があった。ヒナタはし赤みをさした顔でにっこりと微笑む。
「今日はお招き頂きありがとうございます。こうしてカイン・フォン・シルフォード伯爵、テレスティア王殿下、シルク様、ティファーナ様とこの度婚約されたことを聖として祝福いたします。そして――」
その後もヒナタからは、聖として神の崇める言葉が続けられた。
「――最後に、昨日、教會にて祈りを捧げていると神託をけました。その言葉をこれから話します」
『神託』と聞いて驚かない貴族達はいなかった。盛大な拍手と聲援がヒナタに向けられることになった。
もちろん國王を始め上級貴族や、このエスフォート王國を管理している司教ですら『神託』と聞き目を見開き驚いたのだ。
「神からの神託をそのままこの場にて伝えたいと思います」
ヒナタは堂々と一段高い場所からホールにいた貴族達を一した。
そして最後にカインに視線を合わせ、再度悪戯っぽく微笑んだ。
(何か嫌な気がする……。あの神様たち、変なこと言ってなければいいんだけど……)
その笑顔に不安をじたカインは顔を引きつらせる。
「神からの神託はこうおっしゃりました。『ヒナタよ、あなたはカイン・フォン・シルフォード・ドリントルの妻となりこれから先、夫となるカイン・フォン・シルフォード・ドリントルを今いる婚約者たちと一緒に支えなさい』これが神からの言葉になります」
「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」
誰一人言葉を発することはなかった。
ここにいる誰もがその衝撃的な神託に顔を引きつらせている。
もちろん神々の顔を知っているカインが一番酷い顔をしていた。してやったりとした顔をしたヒナタが言葉を続けた。
「わたしも神からいただいた神託に従おうと思います」
言い切ったヒナタは笑顔で頷く。
その言葉に國王含めて貴族たちは絶句である。
もちろんカインも神託の中に茫然とした。
王家や公爵家の娘が婚約した男にさらに聖まで加わると言うのだ。
そんなに簡単に認められることではない。聖といえば、この世界の教えであるマリンフォード教の神の次に讃えられている人なのである。
「せ、聖殿……。それは余りにも無理が……」
やっと言葉を発した國王にヒナタが追い打ちをかける。
「神託です。それに従わないと?」
「そ、それは……」
全員が引きつった笑顔のまま婚約披パーティー終わりを迎えようとしていた。
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