《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十三話 お披目パーティーその後

弾発言の投下が行われ、沈黙となった空気を緩めるようにヒナタは言葉を続けた。

「しかしながら、私はマリンフォード教國の聖です。いくら神託とはいえ、このままここにいるわけにもいきません。一度教國に戻り、教皇様含め話し合うまでは保留とさせてください」

その言葉に國王と國の重鎮たちはで下ろす。

「……その通りだな。まずは教國に戻っていただいて十分にだな――」

「もちろん、結果は変えるつもりはございません。神託ですから」

國王の言葉を否定するように、ヒナタは言葉を被せてきた。

「……もちろんだ。神託とあればな……」

カインのことをひと睨みし、渋々ながら國王は頷いた。

そのまま國王は正面に立ち貴族達を見渡す。

「聖殿のことはこれからになる。今日はカイン・フォン・シルフォード・ドリントル伯爵と我娘テレスティア、シルク・フォン・サンタナ嬢、ティファーナ・フォン・リーベルト騎士団長の婚約のお披目だからな。主役たちを差し置いておく訳にはいかない。最後にシルフォード伯爵から言葉をもらおう」

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國王の言葉にカインは席を立ち、國王の橫へと歩み寄る。

カインに集まる視線は、素直に祝福する者や嫉妬に満ちた顔をしている者もいる。

先ほどの聖弾発言を聞けば誰でもそう思うだろう。

一段高い場所に立つカインを參列した貴族たちはテーブルを囲みながら視線はカインへと注いだ。

「今日は、婚約のお披目にお集まりいただきありがとうございます。こうして伯爵の位を持っておりますが、見ての通り若輩者でございます。これまでこのエスフォート王國を盛り上げてきた皆さまを見習いながらこれからも進していきたいと思います」

最後に一禮をすると、參列した貴族たちからは盛大な拍手が起こった。

「それではこれで閉會とする」

國王の言葉に再度盛大な拍手が起こり、その中を王族からホールを退出していく。

王族が退出した後、聖が退出し、次にカインも、テレスティア、シルク、ティファーナを伴ってホールを退出した。

待機室に案されたカインはソファーにどっと座り込んだ。

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「はぁ……疲れた……」

疲れ果てたカインの前には、三人が座る。

もちろん婚約者である三人だ。

「カイン様、どういうことでしょうか……聖様までカイン様の妻になると言っていますし」

口を尖らせたテレスティアがテーブルにを乗り出すようにカインを責め立てる。

「そんなこと言っても僕は何も知らないし、あの場でいきなり神託を話すなんて思ってもみなかったよ」

困った顔をしたカインは返答をするが、テレスティアの怒りは治まっていない。

隣でシルクは特に気にした様子もなく、ティファーナと紅茶を飲みながら雑談に華を咲かせている。

「もう、これ以上は増やさないでください。本當に人するまでに何人になるのか……」

項垂れるテレスティアをフォローするように、シルクが會話にってきた。

「テレス、今回は仕方ないよ。聖様だって神託と言われたら仕方ないと思うし。しかも聖様も年が一緒だし、楽しいと思うよ?」

「私も何人妻がいようが構わないぞ。カインと模擬戦できればし合えれば」

緩いシルクとじないティファーナの言葉にテレスティアは肩の力を抜きため息をつく。

「わかりました。將來妻として皆と一緒に支えられるようにいたします」

「うん、そうそう! テレスがんばろうね!」

シルクの笑顔に釣られてテレスティアも笑顔になる。

その顔を見てやっとカインも肩の力を抜いてほっとした。

そうして婚約のお披目は無事に終わりを迎えるのであった。

◇◇◇

パーティーが終わり、參列した貴族たちも各々の屋敷に戻っていく。

その中でとある執務室では一人頭を抱えている男がいた。

「まったく……次は聖様だと……カインめ、これ以上私に心労を與えたいのか!」

次から次へと問題を起こすカインに、疲れ果てた表をしたガルムにセバスがそっと紅茶を差し出す。

「ガルム様、紅茶を飲んでし落ち著いてはいかがですか」

目の前に出されたカップを手に取り紅茶を一口飲み、ふぅーっとため息をつく。

「落ち著かれましたか、それにしてもカイン様は聖様までも……。ふふっ。これはシルフォード家にとっては目出度いことですね」

ガルムの心労を余所にセバスは満足そうな顔をしている。小さいころからカインを知っているセバスにとっては、カインは目にれても痛くないほど可いのだ。しかも自分の甥のコランを執事として置いてもらっている。

そんなカインが王殿下、公爵令嬢、そして聖までがカインの妻になろうとしている。

仕えている執事として最高の譽れであろう。

そんな気持ちを出さないセバスにガルムは愚癡りながら時間は過ぎて行った。

◇◇◇

婚約披パーティーが過ぎてから何事もなく數日が経った頃、王城の前に白銀の鎧をまとった騎士二十人が整列していた。

白銀の鎧のの部分には、マリンフォード教國のシンボルである鳩の図柄が彫刻されている。

先日、捕縛された聖の親衛隊長の代わりがマリンフォード教國から王國へと到著したのだ。

代わり王國へ到著した親衛隊には近衛騎士団副団長であるダイムが対応をしている。

しかし向き合った二人は共に頬を緩ませ笑顔で握手をわす。

「ハゲン殿、久しぶりですな。元気にしていましたか。まさか聖様のお迎えにハゲン殿自ら出向くとは」

「これはダイム殿、お久しぶりです。相変わらずですよ。今回は、わが國の失態ですからな。だからこそ私が來させてもらいました」

二人は舊知の仲であり、共に若い頃、教國との合同模擬戦で知り合ってから十年以上の付き合いとなっていた。

互いに武を高めあい、現在のハゲンはマリンフォード教國の聖騎士隊副隊長を務めている。

教國にとって聖騎士隊とは騎士の最高位であり、そこの副隊長といえばナンバー2に當たる。

まさに、ダイムが近衛騎士団の副隊長をしているのと同じなのだ。だからこそ二人は余計に仲が良かった。

「二日程休養させてもらってから出立することになると思う。まずは捕縛されている親衛隊長と會わせてもらえるかな。我が國としても取り調べをしないといけないからな」

「分かっている。詰所の牢に今はってもらっている。他の親衛隊についても個室を與え待機してもらっている。すぐに會える様に手配しよう。まずはゆっくりしてくれ」

ダイムと隣に並び、案されるように近衛騎士団の詰所へと向かった。その後を整列した聖騎士がついていく。

その日のうちに、聖暗殺を企んだ親衛隊長はハゲンの取り調べをけ全て吐いた。

取り調べ室にはマリンフォード教國の者のみが參加となっており、どのような取り調べをけたのかは知る由もなかった。親衛隊長の他に二名の親衛隊が今回の聖暗殺を企んだことが発覚し、その者もその日のうちに捕らえられた。そして取り調べを行った聖騎士たちには緘口令かんこうれいが敷かれた。

そして夜、一軒の店のカウンターには引き締まった三十代の男二人が橫並びで酒を煽っている。

「ダイム殿……今回は迷をおかけした。それに……聖様が王殿下の婚約披で申し訳ないことを」

木でできたジョッキにった酒を煽りながらハゲンはダイムに軽く頭を下げる。

「ハゲン殿、気にしないで良い。聖様が神託を発表した相手のカイン殿は……。明日の謁見には會えると思う。別に話をする機會を設けよう。自分で判斷してみるとよい」

「明日の謁見の後に手配してもらえるかな……私も自分の目で確かめてみたい」

「そうだな……ただ、模擬戦は挑むなよ? 自分たちがいかに――いや、やめておこう。まぁ久々の出會いだ、楽しく飲もう」

二人はジョッキを合わせ、懐かしい會話を弾ませながら親を深めていった。

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