《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二話 転校生は皇

夏休みが終わり、生徒が次々と登校していく。カインも馬車に乗りいつもの通りに登校する。教室にると見慣れたSクラスのクラスメイト達が各所に集まり夏休みの出來事について話し合っている。

すでにテレスティアとシルクも登校しており、二人で仲良く話していた。

「あ、カイン様おはようございます」

「カインくん、おはよう」

「テレス、シルク、おはよう」

カインは二人の話にっていく。

「いよいよ、今日ですね。事前に王城で歓迎パーティーを開く予定でしたが、相手方から目立ちたくないとのことで斷られましたので……」

「今日私たちも初めて會うのよね。いったいどんな人なんだろう、皇様って……」

二人は今日初めて會う皇を想像しながら話をする。

チャイムが鳴り、先生が一人ってきた。

「おし、みんないるな。おはよう。今日はこのSクラスに転校生が來ている。ってきていいぞ」

教師の聲に扉がゆっくりと開かれた。

部屋にってきたのは、蒼の髪を腰までばし、前髪を眉のあたり揃えられただった。長は百五十センチほどで、クラスの男子たちから嬉聲が上がるほどのだった。

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そのは教壇の橫に立ち、周りを見回してから深々と一禮した。

「皆様、はじめまして。バイサス帝國から留學してきました、リルターナ・ヴァン・バイサスでございます。エスフォート王國に來たのは二度目ですが、王都は初めてです。これから仲良くしてください」

クラス中の男たちから歓聲が上がった。

「皇様だってよ……」

「本當にだ……」

男たちの歓聲に不機嫌になるクラスのたち。

リルターナは特に気にした様子もなく、再度深々と頭を下げ、そして、顔を上げるとカインの事を見つめてにっこりと微笑んだ。

カインに向かって微笑んだことで、テレスティアとシルクの表には張が走る。

「やっぱり……」

テレスティアが小さく呟いた。

カインはリルターナに微笑まれたことに、特に気にする様子もなく、淡々と話しを聞く。

「聞いての通り、リルターナ嬢は、バイサス帝國の皇であるが、この學園では分は関係ない。リルターナの席は……そうだな、テレスティアの後ろに座ってもらおう。リルターナ、そこの席に座ってくれ」

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「先生、わかりました」

リルターナは皆に微笑みながら、席の間を抜け、自分の席につく。

丁度、カインの斜め後ろに座った。

「それでは、一時間目はホームルームとする。皆、自己紹介もあるだろう。カイン! お前から自己紹介だ」

教師に言われたことで、カインは席を立ち、リルターナのほうに向きなおる。

「カイン・フォン・シルフォード・ドリントルです。王國より伯爵位をいただいています。どうぞよろしく」

カインは簡単に挨拶を終え、早々に席についた。次に席を立ったのは、隣に座るテレスティアだ。

「テレスティア・テラ・エスフォードでございます。この國の第三王になります。そして隣に座る、カイン様の婚約者・・・です。どうぞよろしくお願いいたしますわ」

テレスティアは、婚約者・・・のところを強調したように、リルターナに挨拶をした。リルターナはその言葉を聞いた瞬間に驚いたように目をし見開いた。

そして次は三席であるシルクが立つ。

「シルク・フォン・サンタナです。この國の公爵の次になります。そして、同じくカインくんの婚約者です。どうぞよろしく」

二人の挨拶に、クラスの男子たちから口笛など、冷やかしが発せられる。そして同じようにリルターナはし驚いた表をしながら、カインを不機嫌そうに一度見つめた。

そして次々とクラスメイトが自己紹介をしていった。その時には先ほどの不機嫌な表を隠すようにリルターナはニコニコとしながら話を聞いていく。

三十人近い挨拶が終わるころには、一時限の終了になった。

「それでは、これでホームルームを終える。次は普通に授業をするからな」

教師が教室を出ていくと、男たちが一気にリルターナを囲むように集まった。

「改めて、よろしく! 僕は子爵の嫡男の――」

に群がる男たちを、子たちは周りからため息混じりに見ていた。

そんな狀況に、リルターナも疲れたような表をしていた。そして前に座る、テレスティアが聲を掛けた。

「皆さん、そんなに一斉に聲を掛けたら、リルターナさんもわからなくなってしまいます」

テレスティアの一言に男子たちは諦めたように各自の席に戻っていく。さすがにいくら學園の中とはいえ、王の言葉に逆らえるわけではない。

「リルターナさん、ごめんね。賑やかになってしまって……」

「ううん、テレスティアさん? ありがとう……」

「テレスって呼んでくれて構わないわ。友達はそう呼ぶし」

「なら、私のこともリルって呼んで」

二人が微笑みあう。シルクも混ざり三人で仲良く話しているのを、カインは自分の席で肘を付きながら聞きっていた。

「二人と仲良くしてれば大丈夫そうだな……」

安心したカインは笑みを浮かべた。

三人が話す中でチラチラとリルターナがカインに視線を送っていることに気づいたシルクがリルターナに質問をした。

「リルって……カインくんの事気になって……る?」

リルターナはシルクの言葉に、顔を真っ赤にして否定する。

「そ、そ、そんなことないわ……だって、初めて會うんだ……し……、それにお二人の婚約者でしょう? しどんな人か気になって……」

最後はし寂しそうに答えた。そしてリルターナは元のネックレスを握りしめた。テレスティアはそのネックレスが気になり質問をする。

「そのネックレス、シンプルだけど良くお似合いですわね。大事なみたい……」

「……うん、小さい頃に出會った人に選んでもらったの……」

大事そうに先端についている蒼い石を眺め思い出すように答え、最後にカインに軽く視線を送った。

そのあとも、三人での話は続いていく。さすがに王、皇、公爵令嬢の三人の會話にっていける強者は誰もいなかった。

チャイムが鳴り、扉が開き教師がってくる。

「それでは授業を始める――」

次の授業も始まった。すでにリルターナにも教科書が渡されているようで、真面目に授業を聞きっていた。

何事もなく授業は進んでいき、晝食を迎えた。學園には大きな食堂があり、そこで晝食を食べる生徒が多い。弁當持參の者も友人と食堂で食べている場合もある。

カインは食堂に行き、食事を乗せたプレートを持って空いている席を探していると、テレスティアが手招きをしている。近くにいくとリルターナとシルクも座っていた。

「カイン様、ここが一つ空いています。ご一緒にどうぞ」

「ありがとう。お邪魔するね」

カインはプレートを置き席に座った。

「せっかくですから親睦を深めたいと思いまして、リルもおいしたのです」

「リルターナさん、この學園の事は二人に聞けばなんとかなるよ。改めてよろしくね」

カインの言葉にし寂しそうな表をしながらもリルターナは頷いた。

食事をしながらも雑談は続いていく。帝國のについては話すことはできないが趣味など普段何をしていたかなどと同士の話は盛り上がっていく。

「そういえば、リルは一度エスフォード王國に來たことがあるって言ってたよね? 王都には來ていないって言っていたけど、どの街に?」

テレスの何気ない質問に、リルターナは顔に張が走る。

「うん……小さい頃に……ラメスタの街まで……」

「ラメスタって……グラシア領だよね? カイン君のお父様が治めている……。もしかしてリルとカインくんって會っていたりしてね?」

「そ、そ、それは……ないと……思う……」

小聲で返事を返すリルターナにカインも言葉を足した。

「僕も一度しかラメスタの街には行ったことないんだ……。父上の付きそうで行ったんだけど、ほとんど騎士と訓練に明け暮れて――」

何年も前の事を思い出しながらカインは話し始めた。

その話の中では、いながらも騎士と訓練に明け暮れて、街の商店街には一度だけ行ったことがあると話す。

リルターナはし期待した表をしながら聞いていたが、カインの話が終わりを迎えた時には寂しそうな表をした。

「カイン様はそんな小さい頃から訓練をしてらしたのですね。だからあそこまで強い――」

「そういえば、二人ともカイン様の婚約者ということですが、いいのですか? 二人とも……。やきもちを妬いたりとか……」

テレスティアの話を切るようにリルターナは二人に質問をした。

「二人じゃないんだよね。今でもカインくんには三人正式な婚約者がいて、多分――あと一人増えるかな?」

シルクの言葉にリルターナは想像以上の衝撃をけた。

帝國でも人前には婚約者が決まることは普通であったが、それは家同士の付き合いを深めるために政略的に婚姻を結ぶのだ。

さすがに人前に三人、いや四人と婚姻を結ぶことが決まっているのは皇子であってもありえなかった。

「これ以上増やさないように私からもカイン様に言っているのです」

テレスティアもシルクの言葉に頷きながら説明をする。

二人の言葉を聞きながら、リルターナはしきつめの視線をカインに送った。

「そんなこと言っても……」

カインは頭を掻きながら否定をすることはなかった。

「――そうですか……、申し訳ありません、私は先に教室に戻っています」

リルターナは席を立ち、プレートを持って出て行ってしまった。

「何か悪いこといったかな……」

カインは遠くなっていくリルターナの後ろ姿を見ながら呟いた。

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