《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第五話 納品
カインとリルターナは二人で學園を後にする。
普段、カインは徒歩で通學をしているが、リルターナは皇という立場上、馬車で通學をしていた。學園り口の馬車の待機場では、ニギートが馬車の橫に立っていた。
カインと共に校舎から出てきたことで、ニギートはしだけ驚きの表をする。
「リルターナ殿下、お疲れ様です。……これはシルフォード伯爵、リルターナ殿下の執事をしておりますニギートと申します。お見知りおきを」
姿勢を正しニギートはカインに禮をして笑みを浮かべる。
「カイン様、うちの執事のニギートよ。私が小さい頃から世話をしてもらっているの。それよりもサラカーン商會に向かって。カイン様からガラス細工を頂けることになったの」
「カイン・フォン・シルフォード・ドリントルです。初めまして……なぜ私の名前を……?」
不思議に思ったカインにニギートは満面の笑みをして答える。
「それはもう、日ごろからリルターナ殿下からいつもいつも――」
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「ニ、ニギート! 余計な事言わなくていいの!」
焦った様子のリルターナがニギートの言葉を遮った。言い過ぎた事に失敗したという表をしたニギートは作り笑いをしながら馬車の扉を開けた。
「あ、これは失禮いたしました。では、馬車へどうぞ」
リルターナは顔を紅くしながら、カインを馬車に乗るように促した。
二人が馬車に乗ると、者をしているニギートが合図をし、馬車は進み始める。
リルターナは隣に座るカインの顔を橫目で見ながら、首元のネックレスを握りしめため息をつく。
(やっぱりカイン気づいてくれないのかな……)
そんなリルターナの気持ちを余所に馬車はサラカーン商會へと進んでいった。
サラカーン商會の前に馬車を止めると、パルマもすでに店に帰っているようで、制服のまま店番をしていた。
ニギートが馬車の扉を開けてカインとリルターナが馬車から降りると、意外な二人が一緒にいることにパルマはし驚きの表をしながらも頭を下げる。
「カイン様、リルターナ殿下、いらっしゃいませ」
「パルマ、頑張っているようだね。今日はタマニスさんは?」
「先ほどまでいたのですが、王都の商會の會合に行ってるんです。だから私が留守番を……皇殿下やカイン様がいらっしゃっているのに、店主がご挨拶できずに申し訳ありません」
丁寧に謝るパルマに気にしてないと言い、奧の応接室を貸してほしいことを伝えた。
二人はパルマの案で、店の奧の応接室へと案され向かい合って座った。
座った二人にパルマが紅茶を淹れる。
「そんなに高級な茶葉ではないので申し訳ないのですが……」
恐しながらパルマは二人の前に紅茶を注いだカップを置いた。
二人は淹れてもらった紅茶を飲みながらし雑談をしてから本題にる。
カインは特に気にした様子もなく、アイテムボックスから無造作に一つずつグラスを置いていった。
「……アイテムボックス……」
普段、テレスティアやシルク、パルマを含むサラカーン商會の皆はカインがアイテムボックスを持っているのを知っている。
知らなかったリルターナはし驚いた表をしながら呟いた。
「あ、そっか……。リルターナ殿下は知らなかったよね。あんまり公開はしていないから、一応ね」
カインはウインクしてから予約した數のグラスを並べていった。
デザイン三種類を四つずつ並べていくのに、リルターナはそのグラスのしさに見惚れていた。
「頼んだのは十だと思うけど、キリが悪いから二つは僕からのプレゼントで。せっかく王國へ來たんだからね」
満面の笑みを浮かべるカインに、リルターナは頬をし紅く染めた。
「カイン様、ありがとうございます……。それと私の事は『リル』って呼んでください。テレスもシルクもそう呼んでくれるから」
「――リル……」
カインはふと何か考えた様子をしたが、すぐに視線をリルターナに戻した。
「それにしても、カイン様は蕓の才もあるのですね。すでに街を治められておりますし、蕓は娯楽品に関しても……、帝國ではそこまでの人材はおりません。王國が羨ましいですわ」
「そんなことないですよ。周りの人材に助けられているだけですから」
その後も二人は雑談をしていると、部屋がノックされニギートが応接室にってきた。
「失禮いたしま――こ、これは素晴らしい!」
部屋にってきて早々にテーブルに並べられている、鮮やかなとりどりのグラスに見惚れていた。
興して見っているニギートの頭を、リルターナが叩いた。
「ニギート、みっともないわ」
叩かれたニギートは先ほどまでの様子が噓のように、澄ました様子で「これは失禮」と一言だけ殘し、リルターナの後ろに控えた。
「カイン様、みっともないところをお見せして申し訳ございません」
頭を下げるリルターナに気にしてないよと聲を掛け、話を進めていった。
追加でもうししいという要もあったが、今回は特別で売るということで、次回からは順番を待つことにリルターナも納得した。
パルマに納めるためのグラスも次々と並べていき、テーブルには數十のグラスが彩られていた。
「こんなに……」
目の前に並べられたグラスに唾を飲みこむリルターナを余所に、パルマは數の確認を行い、店の奧へと運んで行った。
全てが終わると、リルターナに納めたグラスも専用の箱に仕舞われていく。
「リルターナ殿下、これが納品分になります。お確かめを」
「ええ、仕舞っているのは確認したから問題はないわ。ニギート、馬車へ運んでもらえるかしら」
「はい、リルターナ殿下」
ニキードは大事そうに箱を抱え、順番に馬車へと運んで行った。
全ての荷が積み終わると、リルターナは席を立った。
「パルマさん、ありがとう。貴方のおで早くれてもらえることができましたわ。學園でもこれから仲良くしてくださいね」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
笑顔のリルターナに、張しながらもパルマは微笑んだ。
「そろそろ私も帰りますわ。大事な商品もありますし、カイン様……お送りいたします」
「あ、いや……うん、じゃぁ送ってもらおうかな。パルマ、また學園でね」
「カイン様、ありがとうございます。さっそく予約している人たちにご連絡してきますね」
四人は応接室を出て、馬車へと乗り込み、パルマはその姿を見送った。
「明日から、連絡して回らないとな……」
視界から消えていく馬車を見ながら、パルマは呟き店へと戻っていった。
「カイン様……良ければ屋敷へ寄りませんか? 大事な商品もありますし、ニギートだけでは心配なので」
馬車の中でリルターナはカインに小聲で問いかけた。
「さすがにそれは……」
「あ、帝國から持ってきた茶葉もありますの。良ければそれもお出しいたしますわ」
押しの強いリルターナに、カインは折れてリルターナの屋敷へ向かうことになった。
リルターナの屋敷は貴族街の中で、カインの屋敷とは反対のほうにあった。それでも歩いて三十分程度の距離ではあったが。
屋敷はさすが帝國の王が來ることに対して、王國としてのプライドを保つために、カインの屋敷より立派な建であった。大きさでいえば父親であるガルムの屋敷と同等であった。さすがにカインの屋敷とは違い、魔改造されているわけではなかった。
屋敷のり口の前に馬車を付け、二人は馬車から降りると、従者たち一同が並んでいた。
「いらっしゃいませ、シルフォード伯爵」
従者一同が挨拶のあと、頭を下げる。カインは恐しながらもリルターナの後を追って屋敷へとった。
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