《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第八話 拐されたのは……

馬車は程なくしてカイン邸の前に到著した。

門の前にいた兵士も、貴族と思われる馬車が來たことに張が走る。

姿勢を正した兵士にニギートは馬車から降り聲を掛けた。

「こちら乗っているのはバイサス帝國リルターナ皇殿下である。約束は取り付けていないがシルフォード伯爵にお目通り願いたい。伝言をお願いできるか」

「しょ、々お待ちください。今、屋敷に確認をとってきます」

衛兵もまさかバイサス帝國の皇自らシルフォード邸に來るとは思っておらず、焦る顔を隠すように一人が屋敷へと駆けて行った。

衛兵からコランに話が伝えられると、すぐに屋敷へと案するように指示がされ、急いでコランの言葉を伝えに兵士が馬車へと戻ってきた。

「確認がとれました。どうぞ中へおりください」

ニギートが者をする馬車がシルフォード邸の門を潛り、屋敷の前に橫づけされた。

すでにコラン他従者一同が並んで待機していた。もちろん中央にはカインの姿もあった。

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ニギートが馬車の扉を開き、そしてリルターナが降りてくる。

「リル、こんばんは。こんな時間にどうしたの? まずは中に案するよ」

笑顔で挨拶するカインに対して、リルターナの表い。

「こんな時間に申し訳ありません。急遽話したいことがございまして……お邪魔しますわ」

カインに導されるように屋敷にると――そこにはレッドドラゴンの剝製が目にってくる。

「ヒィ……、これが噂に聞くレッドドラゴン……」

「あ、ごめん。驚かせちゃったね。最近誰も気にしなくなったから説明するのを忘れてたよ……」

一瞬、腰を抜かしそうになったが、事前にニギートから報を仕れた事でなんとか耐えることができた。

リルターナは生きていても可笑しくない程に良くできたドラゴンの剝製を見上げる。

「……これが十歳にも満たない歳に倒せるものなのかしら……」

カインには聞こえないように小聲でリルターナは呟いた。

「まずは応接に案するよ。こちらにどうぞ」

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リルターナの言葉を気にした様子もなく、カインは応接室へと案する。

応接室にはカインとリルターナが向き合って座り、各自の後ろにコランとニギートが控えている。

シルビアは部屋の端にあるテーブルで紅茶の準備を始めた。

用意が出來ると、各自の前にカップを置き、紅茶を注いでいく。

カインはリルターナに紅茶を勧めると、自分も一口飲んだ。

「それで……急用と聞いたけど、何があったの?」

「それはですね……」

リルターナが後ろに控えているニギートに視線を送ると、気づいたようにニギートが口を開く。

「私から説明させていただきます。本日の事なのですが――」

學園の帰りに貴族街での拐について説明していく。そして今、衛兵詰所でその事を話してきた帰りということで締められた。

カインはその話を聞きながら次第に眉間に皺を寄せていく。

エスフォート王國の貴族街での出來事を、バイサス帝國からの留學生である皇自らがこうして出向いているのだ。

問題がある王國部の事に手間をかけさえたことにカインは頭を下げた。

いきなり頭を下げたカインにリルターナは驚きの表をし、そして焦ったように頭を上げるように聲を掛ける。

「カ、カインがそんな頭を下げることじゃないのよっ」

「それでも、王國のためにこうしてリルがいてくれたことは変わりないから。この國の貴族の一人として禮を言わせてもらう。ありがとう」

頭を上げたカインが笑顔でそう言うと、その笑顔にリルターナは頬を染める。

その姿を後ろから眺めるニギートは「これが王を落とした笑顔か……」と思いながら笑みを浮かべた。

「僕のほうでも調べてみるよ。何が出來るかわからないけど……」

カインの言葉にリルターナも頷いた。

グルルゥ……

「……!?」

張が解けたのか、部屋の中でお腹の鳴る音が響いた。

その音にカインは笑みを浮かべ、リルターナは更に顔を赤くした。

「そろそろ夕食の時間だね。一緒に食べていく?」

「?!……いいのですか?」

「うん、もちろん。コラン、大丈夫だよね?」

「はい、勿論でございます」

コランの返事に満足したようにカインは頷いた。

コランがシルビアに視線を合わせると、部屋の隅で待機していたシルビアは頷き確認をするために部屋を出ていく。

數分すると部屋がノックがされシルビアが戻ってきた。

「もう食事の用意が出來ております」

その言葉にカインは頷いた。

「そろそろダイニングに行こうか。今日の食事は?」

「本日はハンバーグでございます。他には――」

メニューの説明されたが、リルターナは聞き覚えのないメニューに首を傾げる。

「カイン、その『はんばーぐ』って初めて聞きましたけど……王國の名料理か何か?」

「あ、リルは知らないと思うよ。最近王國でも広まってきて食べられるようになったんだ。楽しみにしててね」

カインはリルターナをダイニングに案する。

カインとリルターナが橫に並び座り、ニギートも客として席が用意された。

用意された食事が並べられていく。そのや料理の數々にリルターナは興味津々だ。

特に『はんばーぐ』と言われたの塊を目にし、どんな料理なのか気になってしかたなかった。

「今日はリルターナ皇もお見えになられている。それではいただこう」

カインはジュースの注がれたグラスを持ち上げ乾杯の合図をする。

一つ一つのグラスや、料理の乗せられている皿を含め、バイサス帝國にはないでありリルターナは見るばかりだった。

リルターナはナイフとフォークを持ち、ハンバーグにナイフをれていく。

「うそ、こんな塊なのにらかい……」

一口サイズに切られたハンバーグをリルターナは口に運んでいく。

そして口に含むと――その頬が次第に緩んでいく。

味しい! しかもこんならかいのに、口の中にが広がっていく。これは何なの!? こんなの食べた事ないわ」

先ほどまでの張が噓のように口に運ぶスピードが増していく。リルターナが気づいた時にはすでにハンバーグは無くなっていた。

無くなって寂しそうな表をするリルターナにカインは聲を掛ける。

「気にったなら、お代わりあるよ? すぐに用意させようか?」

カインの言葉に笑みを浮かべ思わず頷きそうになったが、ニギートが「ゴホン」と咳をすると、その表は一気に引き締まる。

「……大丈夫よ。他のも食べてみたいし……」

名殘り惜しい表をしながら他のに手を付ける。しかしその食べたも予想外の味しさにリルターナの頬を緩んでいく。

そんな表の変化を楽しみながらカインも食を進めた。

「もう學園は慣れた?」

カインの問いかけにリルターナは頷く。

「テレスやシルクが良くしてくれるからね。カインもいるし。クラスの子も話しかけてくれるようになったから大丈夫」

テレスの答えにカインは満足し、笑みを浮かべながら頷いた。

下座だが同席しているニギートも一口ずつ口へ運ぶ度に舌鼓を打っていた。

そして食事が済み、紅茶を楽しんでいるところにコランがカインの傍に寄って耳打ちをする。

「カイン様、サラカーン商會の會頭が急遽お會いしたいと。何か鬼気迫る表をしております。いかがいたしましょうか」

「うん、わかった。しだけでも時間をつくるよ。応接に案しておいて」

「かしこまりました」

コランは返事をすると退出していった。

「リルターナ、しだけ席を外すね。食後のデザートを用意させるから」

「……デザート……。わかったわ」

すでに満腹のはずのリルターナは、デザートと聞きを鳴らす。

シルビアに対応をお願いして、カインは部屋を出て応接室へと向かった。

扉を開けると、タマニスがいきなり土下座で待っていた。

「カイン様! お願いがあります! パルマが……パルマが攫われたかもしれません!」

その言葉にカインは目を見開いた。

「……もしかしてパルマ、晝間貴族街へ……?」

「はい……。カイン様からグラスが納されましたので、予約していた貴族の方々に連絡をと頼んだのですが、夕方になっても帰ってこず、そしたら衛兵が商會にきて、もしかしたらパルマが攫われたかもしれないと……。貴族街への場の付はしておりますが、退場の付をしていないのはわかってます。通報があって調べたということです」

説明を終えたタマニスは頭を床にり付けて懇願する。

「私は獨で子供はいません。弟のサビノスの一人娘なんです。何があったら弟に顔向けできません……だから……どうか、どうか……」

カインは涙を流しながら懇願するタマニスの肩にそっと手を置いた。

「タマニスさん、顔を上げてください。僕も全力で探します。ちょっと待っていてください」

カインは後ろに控えているコランにリルターナを呼ぶように伝える。コランは頷くとすぐに部屋を退出していった。

程なくしてノックと共にコランが扉を開け、その後ろにはリルターナがいた。

「カイン、どうしたの? 急に呼び出すなんて……お客さんなんじゃ……?」

「その事なんだけど……拐されたのは、――――パルマみたいだ」

カインの言葉にリルターナも目を見開いた。

そしてカインは言葉を続ける。

「パルマの家のサラカーン商會の會頭のタマニスさん。その件で今きたんだ」

「パ、パルマだったのっ!? 拐されたの……すぐに助けださないと」

焦るリルターナをカインは抑える。

「カイン様……この方は……?」

未だに土下座した狀態であったタマニスは、急にカインが招きれた貴族の令嬢に疑問を持った。

「あ、タマニスさんは初めてなのか……。拐の通報をしたのがこの……リル、リルターナ・ヴァン・バイサス皇殿下だよ」

カインの言葉に今度はタマニスが今までにないほどの驚きの表をした。

「えっ、コ、コ、皇殿下ぁぁぁぁぁああああ!? これは失禮いたしましたっ!!!」

今日一番ともいえるほど大きなタマニスの聲が、部屋の外まで響き渡ったのであった。

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