《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十一話 登場?

いきなり聲のかかったパルマは俯いていた顔をそっと上げた。

そこには微笑んだカインが立っている。そしてその後ろには店に來てくれたリルターナも立っていた。

二人がこの場所に現れたことにパルマは信じられないような顔をする。

「パルマ! よく頑張ったわね! 無事でよかった。迎えに來たわよ」

リルターナは笑顔で聲を掛けるが、パルマは未だに混した狀態だった。

「カイン様……リルターナ殿下……ど、どうしてここに……」

「パルマが攫われたってタマニスさんが屋敷に飛び込んできたんだよ。それで全力で探させてもらった。怪我もしてないし無事でよかった」

微笑むカインに、次第に気が緩んできたのかパルマの瞳には涙があふれてきた。その涙は頬を流れ床を濡らしていく。

「グスッ……、あ、ありがとう……ご、ございます……。もうみんなに會えないんだと……。攫った男の人は私の事を奴隷として売るって……グスッ」

「もう大丈夫だよ。とりあえずここを出ようか……」

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カインは鉄格子をそっと両手で摑むと――そのまま一気に捻じ曲げた。人が一人通れるほどのスペースを何事もないように曲げる。

後ろで見ていたリルターナとニギートは信じられないような顔をする。

カインは気にすることもなく鉄格子の隙間から中へとり、パルマの手を取り立たせた。

――そしてゆっくりとパルマの頭をでた。

「もう大丈夫だからね」

そう笑うカインのにパルマは飛び込んだ。

「ウワァァァァァァァァァァァァン!! 怖かったよ!! もう誰とも會えないんじゃないかと!! お父さんや學園のみんなと會えないんじゃないかと!!」

大泣きするパルマの頭をカインは何も言わず優しい顔をしてゆっくりとでていた。

數分の間泣いているパルマをで続けていると、次第に気持ちが落ち著いてきたようだった。

そして今までずっとカインに抱き著き泣いていたことを理解すると、耳をパタッと倒し、顔を真っ赤にしたパルマが恥ずかしそうにする。

「落ち著いたかな? そろそろ上に行こうか。家に帰らないとタマニスさんも心配しているし」

その事にれなかったカインは、アイテムボックスから布を一枚取り出し、パルマに掛けた。

カインの言葉にパルマは涙を腕で拭い、笑顔をカインに向ける。

「はいっ!」

元気よく返事をしたパルマに笑顔で頷いたカインは、リルターナ達を連れ上への階段へと向かった。

◇◇◇

時はし遡る。

三人が地下に降りていきダルメシアが一人で部屋で佇んでいた。

「やれやれ……このタイミングですか……まったく間が悪い……」

意識をなくし倒れている護衛達を後目にダルメシアはため息をつく。そしてそっと影の中へと沈み消えていく。

その時、商會の前には馬車がつけられた。

そこからはでっぷりとした重たそうな腹を揺らした二人が馬車から降りてくる。

「これはこれは侯爵閣下、こんなところまでご足労をいただきありがとうございます。お様で例の件はうまくいきそうです。娘は捕らえておりますし、それで権利と引き換えにすれば……」

「そんなことはどうでもいい! わかっているんだろうな? うまくいったら……」

「もちろんです。その為に裏の仕事をしてくれる上位の冒険者まで雇いましたからね。まぁ用が済んだら――処理しますけど」

ニタニタと笑うコルジーノ侯爵とナルニス商會の會頭であるマティアスが商會へと戻ってきた。

手をり合わせゴマをするマティアスに、ご機嫌な様子なコルジーノ侯爵。

そしてマティアスは自分の商會の看板とも言える大きな扉がないことに気づく。

「?!……何があった!?」

マティアスが勢いよく建り、その後をコルジーノ侯爵が追う。

二人が見たものは倒れて意識を冒険者たちだった。一人は腕が切斷され、その切斷された腕も転がっている。

「なっ!!」

その狀況を見た二人は目を大きく見開く。

「お前ら、侯爵閣下を守れ!」

馬車を護衛していた手勢の兵士が、コルジーノ侯爵を囲むように立つ。

「これは……なんだ? 何があった……マティアス……どういうことだ?」

「……私も何があったか……。おい! ゲルターを起こせ。何があったか聞くんだ!」

マティアスが護衛の一人に聲を掛けると、その護衛はゲルターを起こす。

「――ウッ……」

意識を取り戻したゲルターはゆっくりとを起こし、辺りを見渡す。

「ゲルター! 何があったのだ??」

まだ意識が朦朧とした狀態であったゲルターはゆっくりと口を開く。

「――バケモノ……」

その言葉と同時に、奧からリルターナと執事のニギートが現れた。

「お前らかっ! この慘狀を引き起こしたのはっ!!」

リルターナと二ギートもホールに戻った途端に、大勢の兵士に剣を向けられたことに揺するが、すぐにリルターナが反論をした。

「貴方達がパルマを拐した真犯人ね! すぐに衛兵に連絡するわ! 待っていなさいよ!」

 リルターナが息巻くが、マティアスが気にした様子もなく笑みを浮かべた。

「これは生きのいいお嬢ちゃんだ。もう1人搬送する獲が増えただけ……。お前たち、男はいらない。この娘だけをーー」

「娘だけをなんだって……?」

二人の後から階段を登ってきたカインが口を挾む。

「小僧……お前がこれをやったのか……?」

その言葉にカインは首を傾げる。

「小僧……? マティアスさん、それは僕に言っているんですか……。ねぇコルジーノ侯爵閣下?」

カインの言葉にマティアスを始め、剣を向けている兵士、そしてコルジーノ侯爵が目を見開く。

コルジーノは冒険者風の格好をしているカインを護衛のために囲んでいる兵士の合間から覗くと目を見開く。

「……シルフォード……伯爵……何故……このようなとこで……?」

シルフォード伯爵というコルジーノの言葉に、兵士は驚き、そして一番驚いたのはマティアスだった。

「シ、シ、シルフォード伯爵!?」

「マティアスさん、久しぶりですね……僕のお披目會以來でしょうか?」

カインはいつもの様に怪しい笑みを浮かべたのだった。

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