《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十二話 皇最強?

カインの笑みにマティアスは顔を引きつらせる。

「お前ら、剣を引け! こ、これはシルフォード伯爵……どうしてこのような場所に……?」

聲を震わせながらも聞くマティアスに、カインは冷たい言葉を浴びせる。

「まず……謝罪がないのですが。若輩とはいえ、これでも一応貴族當主となります。他の貴族の方がおられる前で、當主に向かって”小僧”と言われてしまえば示しがつきませぬ。『不敬罪』を使用しなければなりませんが……?」

その言葉を聞いたマティアスは、震いさせてコルジーノ侯爵に視線を送る。さすがのコルジーノ侯爵も、若輩とはいえ貴族當主にそう言われたら頷くしかなかった。

マティアスは、その場で膝をつき頭を下げる。

「こ、これは……シルフォード伯爵……申し訳ございませんでした。お許しください……」

頭を下げるマティアスに、さらにカインは追い打ちをかける。

「僕はそれでいいですけどね……。先ほど、そこの令嬢に”お嬢ちゃん”って言いませんでしたか? 僕はそう聞きましたが……」

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「いえ……それは……」

「そちらにいるご令嬢は貴族當主ではありませんが……バイサス帝國の第六皇、リルターナ皇殿下です。隣國の皇殿下に対しての暴言どういたしますかね? コルジーノ侯爵」

カインの言葉に、コルジーノ侯爵とマティアスは驚きをわにする。

リルターナは、あまり派手なのを嫌い、王國に到著した際に面會を行ったが、直接會ったのは國王を含め、マグナ宰相や、エリック公爵のみであり、リルターナの顔を知る者はない。

コルジーノ侯爵もリルターナの顔を見るのは初めてであった。

「そ、そんな……皇殿下ですと……!?」

「ま、まさかっ……」

驚いている二人を余所にカインはリルターナに視線を送ると、リルターナは深く頷いた。

そして懐からバイサス帝國の國の紋章をあしらった豪華なプレートを取り出した。

「バイサス帝國第六皇、リルターナ・ヴァン・バイサスよ。貴方たちの所業は全て確認させていただいたわ。私の……友達、パルマの拐についても國王に直接報告させてもらいます!」

強い口調で言うリルターナに、マティアスはを震わせる。

「そ、そんな!? 私が何をしたというのでしょうかっ!? に覚えもありませんが……」

惚けるマティアスにカインを始め、リルターナも眉間に皺を寄せる。

「パルマのことを拐しておいてよくそんな事が言えるわね! 地下の牢屋も確認させてもらったわ。他にも數人の子供がいたのを知ってるのよっ」

「うぐぐっ……。コルジーノ侯爵……」

縋るようにマティアスはコルジーノ侯爵に視線を送るが、返ってきたのは予想外の言葉だった。

「マティアス! お前は拐にまで加擔していたのか!! 私は信じられないぞ!! 私は知らん!!」

「えっ……そんなぁ……」

助けを求めるはずだったのが突き放されたことに、マティアスは驚きの表をする。

その時だった。

扉が開かれ、大勢の衛兵が屋敷になだれ込んできた。

「ここで拐事件が起きていると報がっ!!」

先頭に立ち衛兵の隊長が剣を抜き、ホールの異様な景にきが止まる。

に向かって膝をつく商會長のマティアス、貴族と思えるような人を守るように立つ護衛、そして倒れている冒険者。

ってきた衛兵の誰もがこの狀況に理解できるものではなかった。

そして、いつの間にかカインの後ろに現れたダルメシアがカインの耳元で小聲で話し掛ける。

「一応、衛兵を呼んでおきました」

「ダルメシア、それでいい。ありがとう」

衛兵を呼んだのはダルメシアだと知ると、頷いて口を開く。

「衛兵さんお疲れ様です。ここの商會では拐が行われていました。後ろにいるもその被害者です。僕たちはそれを助けにきました。そして奧にはさらに攫われたと思われる子供たちもいます。確認を」

カインの言葉に隊長は眉を顰める。先ほどいた者たちはカインの正を知っているが、衛兵たちはまだ知らない。

「君たちは……。この倒れている者たちは……君たちがやったのか?」

「僕がやりました。剣を抜かれましたのでね」

「そうか……それで……君は、そこのご令嬢の護衛かな……?」

リルターナは貴族令嬢と一目でわかるが、カインは冒険者の恰好をしている。衛兵たちも護衛としか考えていなかった。

「僕は、カイン・フォン・シルフォード・ドリントル伯爵です。隣にいるのはバイサス帝國皇、リルターナ皇殿下になります」

「リルターナ・ヴァン・バイサスよっ」

二人の言葉に、衛兵たちは隊長を含めて固まる。そして理解した衛兵はすぐさま片膝をついた。

衛兵全員が剣を納め片膝をつき、一番先頭にいた衛兵隊長が顔を上げた。

「これは申し訳ございません。皇殿下、シルフォード伯爵……。この狀況が未だに理解できておりませぬ。ご説明をいただけますでしょうか」

「そうですね。サラカーン商會の拐されたのは、知っていますよね? リルターナ皇殿下が報告に伺っているはずです」

「はい、その話は聞いております。それで衛兵たちも探しておりました」

カインはその言葉に頷き話を続ける。

「そのは、この商會の地下にある牢に捕らえられておりました。僕はその報を知り、こうしてここまできたのです。サラカーン商會は僕の創った商品を仲介しているところですからね……探すのは當然でしょう?」

「シルフォード伯爵自らです……か……?」

衛兵隊長もカインが直接探すことに理解が追い付かなかった。當主は基本的に指示を出すのであって、自らくものではない。

それが自らいて、行われたであろう戦闘もするとは思ってもいなかった。

「不思議ですか……? そうですね、これでどうでしょう」

カインは懐から、白金プラチナにり輝くギルドカードを取り出した。

「これでも一応Sランクの冒険者ですので」

「なっ!!」

カインの提示したギルドカードに、意識の取り戻していたゲルターは絶句する。

ゲルターも長きに亙り冒険者を行い、Bランクまで上がったのだ。その苦労は自分が一番知っている。

そしてSランクになるために必要な実力についても……。

Aランクを超えSランクの領域にいる冒険者は周りからは”化け”とひとくくりにされている。

もちろん衛兵もそのギルドカードのに目を見開く。

「そうですか……わかりました。では、確認のために皆様ここで殘っていてもらえますか。お前ら、奧の調査をしてこい!」

衛兵隊長の言葉で、數人の衛兵が奧へと進んでいく。

そんな中一人だけ帰ろうとしているものがいた。

「わしは帰る。関係ないからな」

「申し訳ありません。この場はしお待ちを……」

「ええいっ! うるさい! わしはコルジーノ侯爵だぞ。この事件とは関係ない! 今來たばかりだからな。失禮する!!」

衛兵隊長の言葉も聞かずにコルジーノ侯爵は商會を後にした。

「カイン……いいの?」

リルターナは不安そうな聲でカインに聞くが、カインは仕方ない顔をしながらも頷いた。

「……この狀況では止めることはできない。コルジーノ侯爵は僕よりも上位にあたるしね。しかも國の大臣だ。なんの証拠もなく止めておくことはできないよ」

カインの言葉にリルターナは悔しそうな顔をする。

「でもね……マティアスが全部話せば別だけど……」

カインは膝をついているマティアスを見下ろし、にやりと笑った。

その視線にマティアスは太った震いさせ、冷や汗をかきながら俯いたのであった。

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