《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十三話 無神経な執事

「マティアス……貴方には詰め所でゆっくりと話してもらうからね」

「わしは関係ない!! そこにいる冒険者たちが勝手にやったことだ!!」

カインの言葉に、マティアスは言い逃れを始めるが、ゲルターが一番最初に口を割った。

「俺は全部話すぜ。そこの商會長から依頼をけて、その子を攫った。どうせもう奴隷墮ちか死刑は確定だしな。貴族様に剣を向けたんだし諦めているよ。ここで逃げようとしても、どうせ、そこの坊ちゃんには勝てる見込みはないしな」

「?! ……むぐぅ……」

さすがのマティアスも雇った冒険者が白狀してしまえば諦めざるおえなかった。

力なく膝をつき、観念した様子のマティアスを橫目にカインは衛兵隊長に聲を掛ける。

「衛兵隊長さん、これでいいですかね? 下にまだいる子供たちは皆さんにお任せします。マティアスや冒険者についても。ただ、パルマは僕たちが連れて帰ります。それでいいですか?」

カインの言葉に、衛兵隊長はただ頷くことしかできなかった。

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「下に子供達がいます!」

下に先行して降りた衛兵たちから聲が上がる。そして牢の鍵を開け、衛兵に連れられて子供達が地下から上がってくる。

衛兵隊長は子供達の視線に合わせる為に膝をつき優しく話しかけた。

「君たちはいつからここに……?」

まだ十歳にも満たない子供達は皆震えていたが、その中の一人のが弱々しく口を開く。

「十日くらい前からだと思う……でも、ずっと薄暗いところにいたからわからない……家に帰れる……?」

「大丈夫、おじさんたちはこの街を守る衛兵だよ。みんな家まで無事に送り屆けるからね」

衛兵隊長の言葉に安心したのか、子供達は泣き始めた。隊長はひとりひとりの子供達の頭をそっとでて立ち上がる。

そして先ほどまでの優しい笑顔は消え、厳しい視線をマティアスに送った。

拐は重罪だ。覚悟しておけよ。こんな小さい子供達を……よくも……そいつと冒険者たちを捕らえろ!」

隊長の言葉に衛兵たちはロープを用意し、縛っていきそのまま外へと連れ出されていく。

そして隊長はカインに向き直り深々と頭を下げた。

「シルフォード伯爵、ありがとうございました。書類をまとめたら王城に提出いたします。そしてーー皇殿下も我が王國のためにご盡力いただき深く謝いたします。私はこれから屋敷の調査にります。他にも何か隠し持っているかもしれませんから……」

隊長の言葉に、カインとリルターナは「頼んだ」と伝え頷いた。

「あとは任せて僕たちは帰ろうか。パルマ、送っていくよ」

カインたちは揃ってナルニス商會を後にする。そしてーーダルメシアがカインの耳元で小聲で囁く。

「カイン様……馬車は乗ってきておりませんが……」

その言葉にカインは転移で來たことを思い出し苦笑する。リルターナもその言葉を聞こえていたのか、リルターナの馬車で送ってもらえることになった。

者臺にニギートとダルメシアが乗り、中にはカインとリルターナ、そしてパルマが乗る。

パルマといえど、皇の馬車へ乗ることに恐れ多いと張して遠慮していたが、リルターナが手を取り馬車へと乗せた。

そして馬車はサラカーン商會へ向けて走り出した。

サラカーン商會までは馬車で十分ほどの距離にある。やはり商會は街の一畫に集まっているのですぐに到著した。

商會の前では、タマニスが落ち著きがない様子で右往左往していた。

その前に豪華な馬車が一臺止まる。商會を束ねるタマニスとはいえ、皇族が乗る豪華な馬車が目の前に止まれば嫌でも姿勢を正す。

ニギートが者臺から降り、扉を開ける。

馬車からは涙目になったパルマが降りてきて、そのままタマニスに抱きついた。

「おじさーーーん!!!」

「パルマァァァァァ!!!」

パルマを抱きしめ無事を実しているタマニスを橫目に、カインとリルターナは馬車から降りる。

「無事に送り屆けましたよ」

カインの聲に振り向いたタマニスは、カインとその隣にリルターナがいることに顔を青ざめさせる。

「カイン様!? それに……こ、こ、皇殿下までっ!?」

タマニスは馬車に彩られているバイサス帝國の王家の紋章を見上げ顔を引きつらせる。

喜びを一転させタマニスは膝をつく。

「こ、これは失禮いたしました。もしかしてお二人がパルマを……?」

二人は無言で頷くと、タマニスは地面に頭を著きそうなくらいまで下げる。

「パルマは學友ですから。無事でよかったです」

リルターナは気にすることもなく微笑むが、タマニスとしては皇殿下が自ら助けにいくなど思ってもいない。平民の一庶民としては恐れ多く頭を上げることもできなかった。

「タマニスさん、もう頭を上げてください。こうして無事に戻ったことですし。もうししたら衛兵もここに來ると思います」

「カイン様……本當に何から何までありがとうございます」

「いいんですよ。パルマは僕にとっても友達ですからね。僕たちもそろそろ帰ります。家で心配していると思いますし」

微笑むカインにタマニスとパルマは深々と頭を下げた。

「カイン様、屋敷までお送りいたしますわ」

「いや……ここからそのまま歩いて――」

「お送りいたします」

し聲のトーンが変わったリルターナに斷るのは無理だと悟ったカインは早々に頷く。

「じゃぁパルマ、明日學校でね!」

「それでは失禮しますわ」

二人は馬車へ乗り込むとニギートの合図で進みだす。その馬車が見えなくなるまでタマニスとパルマの二人は頭を下げ続けた。

「それにしても……カイン様、今日は助かりました。もしカイン様がこなかったらと思うと……」

リルターナは自分のしたことを振り返り、し震えた後にカインの袖口を摑んだ。

「そうだよ。危ないとこだったんだから。行くのが遅くなったら……皇殿下なんだから自重しないと」

「だって……馬車を見つけたからつい……。でも、助けてくれて本當にありがとう」

リルターナとカインの距離はしずつだが近づいていく。

肩がれそうな距離にまで近づいたリルターナは頬を染める。

「カイン……実はね――」

「カイン様屋敷に著きました」

「…………」

「著いちゃったね。じゃぁまた明日ね」

「――うん……明日ね」

カインは馬車から降りると、リルターナの馬車を見送った。

◇◇◇

「それにしてもカイン様って本當に強いんですね……。きがまったく見えなかったですよ」

「…………」

「リルターナ様ももう無茶はしないでくださいよ」

「…………」

者をしながら笑顔で話し掛けるニギートとは違い、リルターナは拳を握りしめプルプルと震えている。

「あれ、リルターナ様? もしかして寢ちゃったりしてますか?」

前を向き者をしているニギートに、リルターナの表を見えていない。

カインとの二人の時間を邪魔されたリルターナは、気にしないで話しかけるニギートに眉間に皺を寄せる。

――そしてキレた。

「……ニギートの……バカァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

「えぇぇぇぇぇえええええ!?」

後ろからの罵倒にニギートは驚くのであった。

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