《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十四話 事件は闇へ

事件から數日が経ち、王城の謁見の場でカインは隣にいると共に膝をついている。

「面を上げよ」

國王より聲が掛かり、カインと隣にいる――リルターナが顔を上げた。

「この度は、この王都で起こっていた拐事件において、二人の活躍により解決された。よって褒を取らす。カイン・フォン・シルフォード・ドリントル、並びにリルターナ・ヴァン・ヴァイサス皇よ、其方らには白金貨二十枚ずつを褒とする。リルターナ皇においては、他國にも関わらず協力いただいたことに謝する」

「ありがたくおけいたします」

「ありがとうございます。國王陛下」

二人は再度頭を下げた。

「それではこれで――」

「ちょっとお待ちを!」

謁見を終了を宣言しようとしたマグナ宰相の言葉を一人の貴族が口をはさんだ。

「なんだ……コルジーノよ。何か意見があるのか……?」

玉座に座る國王がコルジーノ侯爵を睨めつける。

コルジーノ侯爵は一歩前に出て、膝をついた。

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「実は、私が王家から與えられた屋敷ですが、昨日未明に……真っ二つに切られていました……これは他國か魔族の仕業にありません!」

「「ブフォッ」」

玉座に座っていた國王とマグナ宰相は同時に吹き出した。

周りにいた貴族たちも、コルジーノ侯爵邸の前を通った者は誰もが知っていた。

膝をついているカインは肩を震わせ下を向いている。

國王はカインに視線を送った後、再度、コルジーノ侯爵に視線を送る。

「その件については噂程度であるがすでに話を聞いておる。難儀とじるがすぐに修繕をするようにな……。王都にいる上級貴族の屋敷が半壊しているとは見栄えも悪い」

「陛下……あの……補助などは……?」

「その方も侯爵であろう。上級貴族としてもちろん自費で賄うように」

「……そんな……」

「――これにて終わる。宰相頼む」

國王の言葉にマグナ宰相は謁見の終了を宣言した。

國王が退出した後に、各上級貴族たちも退出していく。

カインもリルターナとともに退出をすると、すぐに止められた。

「シルフォード卿、陛下がお呼びになられています」

「えっ……本當ですか?」

「えぇ……マグナ宰相とお待ちになられております」

カインはがっくりと肩を落とし、案する従者の後を追う。そしていつもの応接室へと通された。

従者が部屋をノックし扉を開けると、すでに國王とマグナ宰相が待っていた。

「陛下、お待たせいたしました」

カインは指示されるまま、席に座る。

「のぉカインよ。言いたい事は分かっているよな……」

「いえ、なんの事やら……」

「――――まぁ良い。コルジーノには苦労してもらわんとのぉ……なぁカインよ?」

「言ってる事は良くわかりませんが……陛下も苦労しているのですね」

「うむ……特にお主のせいでな」

「……え?」

「証拠がなければ問題ないと思っているのはコルジーノもお主も一緒ではないのか……? まぁいい……今日は機嫌がいい。下がってよいぞ」

「はい、それでは陛下、失禮いたします」

カインは一禮した後に部屋を退出した。

「――――やっぱりやりすぎたかな……」

そんな事を呟きながら王城を後にした。

◇◇◇

時は事件の後に遡る。

から逃れたコルジーノ侯爵は一軒の屋敷へと寄っていた。

そこは下級貴族である男爵の屋敷であり、コルジーノ侯爵の子飼いでもあった。

「コルジーノ侯爵!? こんな時間にどうされました?」

コルジーノ侯爵の厳しい表を察したブリードはすぐに屋敷で最上級の応接室に案をする。

そして人払いを行った。誰もいないことを確認したコルジーノ侯爵は機嫌が悪そうに口を開いた。

「ブリード、すぐに”アレ”を手配してしい。今すぐにだ」

「?! ”アレ”ですか……わかりました。すぐに手配いたしましょう」

その場で指を弾くと、すぐに黒ずくめの男が現れ膝をつく。

「お呼びでしょうか」

「むぐっ、いつでも待機しているのか……」

「もちろん、何かあった時のためもありますけどね」

「そうか、実はな――」

今日の出來事を説明していく。そして見つかったら分を剝奪されてもおかしくないと思われる証拠品まであるかもしれないと。

「――全部処理できるか?」

「お任せを。但し、こちらに全てお任せ願えますか」

「うむ。儂に火のがこなければ問題ない。任せたぞ」

「はい、ではすぐに取り掛かります。では」

黒ずくめの男はその場で消えていく。

「不思議なもんよのぉ……あとは間違えるなよ」

「えぇもちろんです」

二人は怪しく笑いあった。

そして深夜――。

屋敷な簡単な捜索を終え、次の日からまた捜索に乗り出すことになったナルニス商會では、壊された扉を簡易的に修繕し、誰もれないようされた中で數人男がいていた。

「証拠は全て燃やせ。何ひとつ殘すな」

リーダー格の男が指示を出していく。商會の地下から最上階に及ぶまで油が撒かれていた。

油をまき終えた男たちは窓から出していく。そして一人の男が火魔法を放った。

「これで問題ないだろう」

人気のなくなったナルニス商會の中は油によって火が次々と広がっていく。

石造りであった商會ではあるが、裝は基本的に木製である。油が撒かれて火を付けられれば勢いは止まることはなかった。

衛兵が駆け付け、消火活を行ったが、火が消えた頃にはすでに裝は火によって炭と化していた。

次の日、その火事を聞いたカインは、ダルメシアを喚び対応策を考えた。

「ナルニス商會とコルジーノ侯爵の繋がりは全部灰か……」

「えぇ……申し訳ございません。まさか昨日の今日であのような手を取るとは……人間とは深いものですな」

魔族は基本的にあまり影でいたりはしない。そういう者もいない訳ではないが、基本的には真っ向からぶつかり合い強さを競う。

ダルメシアが人間の本質までは見抜けないのは仕方いことだった。カインもそこまでは想定しておらずダルメシアを責めることはなかった。

「今日にでも私の蟲たちをコルジーノ侯爵の家に放っておきます。ただ……見聞きすることは出來ますが証拠となると難しいかと」

「わかっている。でも報はしいんだ。調べておいてくれるかい?」

「わかりました。では……」

ダルメシアは一禮をすると影へと沈んでいった。

報はすぐに集まった。

やはりコルジーノが手配を行っていたということはすぐにわかった。但し、使い魔からの報なので証拠にはならない。

そして深夜、カインとダルメシアは二人でコルジーノ侯爵の屋敷の上空にいる。

「何かいい案がないかな……」

腕組みをして考えるカインにダルメシアは助言をする。

し騒ぎを起こした空きに忍び込むというのはどうでしょうか。忍び込むのは私の方で行いますが……」

ダルメシアの提案にカインは頷いた。

「なら、魔法を打つからその騒ぎの空きに頼む。扉を壊すくらいでいいよね」

「それでよろしいかと、では私はその間に……」

火事になったら大騒ぎになってしまう。カインは風魔法を選択し放った。

『真空刃エアカッター』

カインの右手から放たれた魔法は真空の刃となって屋敷の扉へと向かっていく。

しかし、その刃は屋敷に向かうにつれ次第に巨大化していった。

そして――――屋敷ごと分斷した。

分斷された部分から、屋敷が次第に崩れていく。

カインはその慘狀を見て言葉を失った。

「…………」

「……カイン様……それは流石にやり過ぎかと思われますが……確かに扉は破壊されておりますが、屋敷ごと真っ二つにするとは……」

初級魔法を放ったつもりだったが、自重知らず魔力のおで大慘事となった。

破壊の規模も大きくなれば、その音も大きくなる。その音は周りの屋敷まで響き渡るほどの

「――ダルメシア……今日は帰ろう……」

「――はい……承知いたしました」

二人は転移魔法でその場から消えていった。

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