《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十六話 宿場町

城門を出て二日間の護衛任務だ。

貴族の私兵が先導し、その後を貴族の馬車が進み、カインたちは後ろの荷馬車に乗って後をついて行く。

「あと二日間、やっと目的地だぁ。王都はししか満喫できなかったな……」

四人組のパーティーは貴族の街からの護衛を行なっており、すでに十日の日程をこなしていた。

「どこの街から來たんですか?」

カインが問いかけると、リーダーのラゲットは視線を外し、代わりにニナリーが返事をする。

「王都のずっと南にある、ミシンガっていう街なの。海のすぐ近くにあるのよ。海の幸が味しくていい街よ」

「海の幸……是非行ってみたいです!」

王都やドリントル、グラシアでも魔の素材が多く採れたので、基本的に料理が多かった。

海の幸は、アイテムボックスがあるとはいえ、時間停止機能がついたアイテムボックスは貴重であり、王都まで流通することはほとんどなかった。

「カインくんは、ずっと王都かドリントルにいるの?」

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「えぇ、育ったのはグラシアですけど、十歳からずっと王都ですね。最近はドリントルと行き來してます」

「まだ人もしてないのに、冒険者なんて大変だね。魔が出ても私たちが守るから安心してね」

「ーーはい……よろしくお願いします」

さすがにこの狀態でSランクと言えるはずもなく、カインはただ頷いた。王都からドリントルの街の間には徹底して警備を行なっているため、盜賊などは出ることはない。

逆に森から出てきた魔との遭遇率のほうが多いくらいだったが、商人たちの行き來の安全確保のために定期的に討伐も行なっている。しかも、途中、中間地點に宿場町まで設けている。

カインがアレクに話し、公共事業として通の便を良くした事で、さらに流通は栄えていた。

一行が向かっている最中も、商人の馬車が行き來しすれ違うことも多かった。

「それで……なんで貴族のご令嬢が、ドリントルへ?」

「私たちも詳しくは知らないのよ。誰かに會うためとは聞いているけど……」

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(そんな話は聞いてないな……。もしかしてアレク兄様かな……)

そんな事を話していると、晝食の休憩所に到著した。

荷馬車から、テーブルと椅子を取り出し、従者が組み立てて行く。護衛の冒険者達は手分けして周囲の確認を行なった。そして、馬車から一人の令嬢が降りてきた。

ニナリーたちは海に近い冒険者らしく、小麥に日焼けしていたが、その令嬢は金髪のストレートで、日焼けしておらず、まだ十代のだった。

令嬢はカイン達の前まで來て聲を掛けた。

「護衛、お疲れ様です。皆さまの食事も用意させてますので、もうしまっててくださいね。明日までよろしくお願いします」

貴族らしくなく、平民の冒険者たちにまで優しく聲をかける珍しい令嬢だなとカインも心した。

そして、令嬢はカインの前まできた。

「王都からの二日間よろしくね、私はレリーネ・フォン・レガントよ。宜しくね……えっと……」

カインも立ち上がり、頭を下げて挨拶をした。

「カインです。王都からドリントルの案をさせてもらうことになりました。こちらこそよろしくお願いします」

カインも伯爵當主である。簡単な挨拶であったが、その優雅さは平民のものではない。レリーネもカインの挨拶ですぐに気づく。

「――カイン様ですね。カイン様は……その……どこかの……」

レリーネの問いにカインは笑みを浮かべる。

「今は――ただの冒険者のカインですから」

カインの言葉にレリーネは笑みを浮かべ頷いた。

「――そうですね……、ただの冒険者のカイン様、よろしくお願いしますね」

レリーネは優雅に挨拶をし、従者が用意したテーブルへと戻っていった。

「カインくん、すごいね。貴族相手でも怖じしないなんて」

「子供だからだろ? 怖いもん知らずはこれだから……」

呆れるラゲットは配られた食事に手をつけていく。

「まったく……ラゲットったら。カインくん、気にしなくていいからね。いつもあんなじだから。でも、戦闘に関しては安心していいからね」

「はいっ! 大丈夫です。気にしてませんから」

カインもけ取った食事に手を付けていく。

食事が済み、し休憩すると出発となった。

「夕方までには宿場町につくと思います。手配はしてありますから」

「途中宿なんてあるの!?」

「えぇ……二日の距離ですし、皆さん泊まる場所が限られていますから……」

「それならやる気が出てきた!」

荷馬車に乗り込み、馬車は走り出す。

そして夕方前には宿場町に到著した。

宿場町は、簡易的な木の板で周りを囲われており、魔からの襲撃も避けられるようになっている。しかも、ドリントルからの依頼として、常に數人の冒険者が待機している。周りの巡回を行って、魔が出てきた場合に討伐するためだ。

宿もいくつかグレート分けして用意してあり、その中で一番奧にある高級な宿をすでに抑えていた。

カインは宿場町の門を潛ると、先導しその場所まで案をする。

そして一番奧にある、三階建ての宿の前で馬車を止めた。

「今日の宿はこちらになります。宿場町なので風呂はありませんが、お湯のサービスはあります。冒険者の皆さんは隣の宿になりますので……」

カインは先導し、従者と共に付を済ませる。

そして、レリーネを一番いい部屋へと係に案させた。

「カイン様、お気遣いありがとうございます。おでゆっくりできますわ」

「いえいえ、明日もよろしくお願いします」

カインは一禮して宿を後にし、ラゲット達と合流する。

「皆さんは隣の宿です。さすがに貴族と一緒に泊まるのはどうかと思ったので……」

カインの言葉に皆が頷く。

「カイン、お前、気が利くじゃねーか。よし、宿に行ったら飯にしようぜ!」

ご機嫌になったラゲットがカインに肩を組み、隣の宿へと向かった。

各自チェックインした後に食堂へと集まることになる。

「じゃぁ一時間後に食堂でね」

ニナリーの言葉に皆が頷き、各自部屋にっていく。カインの分も部屋を取っており、個室へとった。

「このまま屋敷に転移してもいいけどな……たまには冒険者の気分を味わうかな」

裝備を外し、アイテムボックスにれてのんびりとし、時間を合わせて食堂へと向かった。

食堂ではすでに全員が集まっていた。

「カインおせーよ。もう始めようかと思ったとこだったぜ」

「すいません。々とやってたら……」

「まだ時間前でしょうが! あんたが『腹減ったから早く行くぞ』とか言い出したんでしょ」

ニナリーに説教されているラゲットを橫目に席に座る。

注文を済ませ、ドリンクが行き渡ったとこで乾杯をする。

「では、明日には目的地のドリントルだ。二週間お疲れ様! 乾杯!」

「「「「乾杯!!」」」」

カインは未年なので、ジュースであったが、他の者は酒のったジョッキを打ち付ける。

そして次々に運ばれてくる料理にラゲットたちは舌鼓を打つ。

「ここの料理味いなっ! 酒も味いし」

味い料理と酒に、どんどんと酒の量は増えていく。

満足そうな顔をして食事を済ませていると、後ろから聲が掛かった。

「あの、すみません。よろしいでしょうか」

振り向くと、従者の一人であった。

「レリーナ様がカインさんをお呼びになっているのですが……」

申し訳なさそうに伝える従者に、ラゲットが口を開く。

「カイン、行ってこい! どうせ酒飲めないしな!」

「――はい……。一緒に行きます……」

カインは従者と共に、レリーナが泊まっている宿へと向かった。

すでに食事を済ませているようで、部屋へと案される。

特別室となっている部屋は、主寢室と、従者の寢室、それと応接室からなっている。そして隣の部屋には警備の部屋も設けられており、貴族が泊まれるような造りとなっている。

カインは案されるまま、レリーナの腰掛けるソファーの対面に座った。

「急にお呼びして申し訳ありません。このような素晴らしい部屋を手配していただいたことに、お禮を言いたくて……」

頭を下げようとするレリーナをカインは手で制した。

「気にしないでください。僕は依頼をこなしているだけですから……ね?」

「やはりカイン様は……」

「冒険者のカインです。それ以外の何者でもありませんから」

「――そうでしたね……私としたことが……。それでは、しだけ相談に乗ってください」

「僕でよければ……こんな子供で申し訳ありませんが……」

カインの言葉に、レリーナは人払いをする。

従者は困していたが「問題ないから」と一蹴し、従者たちを部屋から追い出す。

そして真剣な眼差しでカインを見つめる。

「実は今回ドリントルに向かっているのは――」

◇◇◇

カインは笑顔を浮かべながら、レリーネの泊まっている宿を出ると、ラゲットたちが泊まっている宿へと戻る。

そして扉を開けると、そこには――他の冒険者と摑み合いをしているラゲットがいた。

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