《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十七話 ドリントル到著
ドリントルから來た冒険者であろうか、その冒険者とラゲットは倉を摑みあっている。
「田舎のCランクが何生意気言ってるんだ? ドリントルで生き抜いてきたCランクだぞ?」
「同じCランクに田舎もドリントルもあるのか!? あん?」
ニナリーも止めにってるが、ラゲットは治まる様子もない。二人とも酒に酔っているようだ。
カインはため息をつきながら中にり、二人に聲を掛けた。
「そろそろ止めないかな? 他のお客さんも迷――」
「うるさいガキがっ!? 黙っていろ!」
「カインは黙ってろ! こっちの問題だ」
カインの言葉に耳を貸すつもりのない二人は、一度離れると、剣の柄に手を掛ける。
もし剣を抜いたりしたら、それこそ大問題になる。
カインは深くため息をつき――。
「――二人とも……止めようね……」
言葉と同時にカインから出た殺気が、食堂の中を一気に染めていく。
喧嘩を始めようとした二人はその殺気を直接け、恐怖で歯をガチガチと鳴らし、を震わせる。
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そして止めようとしていたニナリーだけでなく、食堂で食事をしている他の冒険者も全員が恐怖でを震わせている。
「な、なんなんだお前……」
ラゲットは顔を青ざめさせて言うが、振り返ったドリントルの冒険者はカインの顔を見て一気にを直させる。
「――――し、銀髪の悪魔シルバーデビル」
ドリントルに所屬している冒険者でその名を知らない者はいない。
ギルドの訓練場を大破し、ドリントルの模擬戦かわいがりをした上級冒険者を引退まで追い込んだ、銀髪の子供。
さすがに領主だと知っているのは限られた者だけなので、知っているのはこの場にはいない。
(銀髪の悪魔シルバーデビルか……、また酷い通り名をつけてくれるもんだよな……)
カインが一歩近づくと、ドリントルの冒険者は腰を抜かし、後ろに下がっていく。
そしてカインは笑顔で告げる。
「ここは宿場の酒場です。暴れたら迷になるでしょう? 冒険者だったらそれくらいわかりますよ……ね?」
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カインの言葉に恐怖で震えている、食堂にいる者たちは、首を縦にブンブンと振る。
そして殺気を消し、笑顔でラゲットに聲を掛ける。
「ドリントルは冒険者が多いですからね。気を付けてくださいよ? あ、すみません。フルーツジュース一つください」
酒場で勤めるウエイトレスも殺気をけてカウンターの中に逃げ込んで震えていたが、カインの言葉で我に返り「ハイっ! ただいま!」と言い用意を始める。
マッハの如く準備がされ、カインの前にドリンクが置かれた。
ラゲットに喧嘩を売った冒険者も、連れが會計を済ませ逃げるように店を出ていった。
カインは、先ほどまでの席に座りけ取ったドリンクを飲み、食事を進めるが、同じテーブルの者たちは誰も手を付けない。
「どうしました?」
口をモグモグさせながら問いかけるカインに、し距離を置いたニナリーが小聲で口を開く。
「――カインくんって……一……」
その問いにカインは笑みを浮かべ一言だけ返す。
「……ただのドリントルの冒険者ですよ?」
そこにいた誰もがきっと思ったことは同じだろう。『そんなバカなことがあるか』と……。
しかし、それを先ほどの恐怖を味わった者は、誰一人面等向かって言えるわけがなかった。
葬儀のように靜まり返った酒場に、し申し訳ないと思ったカインは、早々に部屋へと戻った。
「しやり過ぎたかな……そこまで殺気は強くしたつもりはないんだけどな……」
次の日、朝食を済ませた護衛一同は、レリーネが泊まった宿の前で、馬車を用意して待機する。
昨日の事が原因か、四人はカインとし距離をとった狀態で待っている。
(昨日、失敗したかなぁ)
そんな事を思いながら、レリーネが出てくるのを待つ。
しの間をおいて、レリーネ達が出てきた。優雅に挨拶をした後、馬車へと乗り込み出発をする。
道中、昨日までと打って変わり靜かになった。ラゲットも昨日のカインの変わりようから、やはり遠慮しているように見けられる。
そんな中、ニナリーがカインに話しかけた。
「カインくん、カインくんって実は――結構有名だったりする……?」
し張気味のニナリーにカインは笑顔を向ける。
「そんな事はないと思いますけどね……。ドリントルのギルドではしだけありましたけど……」
言葉を濁すように説明するカインに、ニナリーはほっとをでおろす。
実際は、カインの所業を知る者は、視線を合わせることもないし、領主だと知っている者は気軽に聲など掛けられるはずはない。
「そうよね? こんなに可いのに、昨日の人たちは変な名前で呼んでたし……『銀髪の悪魔シルバーデビル』とか騒よね?」
その言葉にカインは苦笑しながらも頷いた。ニナリーは笑顔になると「みんなの誤解を解かないと」と言い、他のメンバーの場所へ走っていく。
そしてニナリーの説明のおか、晝食の休憩時にはし打ち解けられたが、ラゲットだけは未だに距離を置いていた。
晝食を済ませ、し進んだ場所で森から出てきたゴブリンが出てくる機會があったが、真っ先にラゲットが突撃して対処をしていく。
そんなことをしている間にドリントルが見えてくる。
ドリントルはカインの魔法により、信じられないほど立派な外壁に囲まれている。數キロに渡って広がる外壁に、初めて見た同行者たちから聲が上がる。
「すげぇ……。これがドリントルか……」
「本當にすごい……」
街の場門は商人たちの馬車で賑わっている。検問の順番待ちをしており、このままでは日が暮れてしまうのは目に見えていた。
カインは、先にれるように渉すると伝え、一人だけその場を離れる。
一人で並んでいる橫を抜け、若い衛兵に聲を掛けた。
「護衛の者ですが、貴族令嬢が通りますので、通してもらってもいいですか?」
「貴族!? どちらの方でしょうか?」
「ミサンガの街のレガント伯爵令嬢になります」
「伯爵家の……。一応分証を――」
「いい。その方のお連れならそのまま通していい」
若い衛兵の言葉を遮ったのは、壯年の衛兵だった。
「そのままってもらって構いません。というか……冒険者稼業ですか……カイン様……」
最後は小聲で話す壯年の衛兵に、カインは笑顔を向け軽く頭を下げる。
「ありがとう。今回は護衛なんだ。立場は緒でね! それじゃ、馬車呼んできますね!」
カインはその言葉を殘し、馬車へと駆けていく。
壯年の衛兵の対応に、若い衛兵は首を傾げ質問をする。
「隊長、そのまま通していいんですか? 何も確認してないですが」
「?!……よく覚えておけ。あの方はな――」
衛兵隊長が若い衛兵の耳元でそっとカインの立場を教える。
「?! 領主様!? 本當まじか……。あの人が噂の……」
「お前もこの街で働くならちゃんと覚えておけよ」
「ハイッ!!」
そんなやり取りも知らず、カインは馬車へと戻り、そのまま通れる事を伝えた。
「さすが地元の冒険者ってことか……」
ラゲットもその待遇に言葉をらす。
馬車は場の為に並んでいる馬車の橫を素通りすると、門のり口には衛兵が両側に整列しており、その中を通り過ぎ街へとる。
冒険者たちですらVIP待遇のような歓迎に困した。
そして一行は街へとると、敷き詰められた石畳や、広々とスペースを取っている道などに驚きをわにする。
「これ……王都よりも綺麗に街づくりがされてるよね……」
「本當に……新しい領主になってからこうなったと言ってたよね……」
ニナリーとマインが小聲で話しながら街を歩く。
ラゲットやクロスも、その綺麗に整備された街並みに張気味に街を進んでいく。
カインは特に気にした様子もなく、一番前で先導しドリントルで一番高級な宿へと案をした。
レリーネとその従者たちはこの宿に泊まるが、ラゲット達護衛の四人はまた別の宿に泊まることになっている。
従者が馬車から降り、先に付を行い、その後にレリーネが馬車より降りてきた。
「カイン様、このような手配までしていただき、ありがとうございます」
「これも護衛の役目ですから。僕はここまでですので、依頼表にサインをお願いします」
カインは懐から出した依頼表を従者に手渡すと、従者がサインを書き込んで返した。
「ありがとうございます。僕の護衛はここまでですが、ラゲットさんたちが泊まる宿には案しますよ」
ラゲットたちを宿へと導するところで、レリーネからカインに聲が掛かる。
「あのぉ……カイン様……実はこの後ーー」
レリーネの言葉にカインは笑顔で頷いたのだった。
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