《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十話 大人たちは腹黒い?
カインの言葉にアレクは絶句する。
確かに男爵に敘爵され、ドリントルの代として仕事をこなし、山が出來るほどのお見合い相手の手紙がきていた。
しかし、急ピッチで変革されているドリントルを見ている以上、軽々しく王都に出向いてお見合いなどするわけにもいかず、手紙の中を確認する事も怠っていた。
しかもレリーネ嬢に至っては、學園にいた時の後輩で知らぬ顔ではない。
話す機會も幾度とあり、見た目に関してもアレク好みであった。格に関しても申し分がなく、將來、ジンが辺境伯を継いだ後、代として過ごすつもりでおり、貴族令嬢を娶る事はないと考えていた。
特にレリーネに至っては上級貴族である伯爵令嬢であり、どこかの上級貴族の嫡男に嫁ぐのが普通であった。
更に言えばレリーネ嬢のいる領地は、エスフォート王國でも最南の海の側にあるミサンガの街だ。
このドリントルの街までは、馬車で十日程かかるのだ。
アレクとしてもまさかここまで來るとは思ってもいなかった。
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隣で呆然と座るアレクに、カインは説明を始めた。
「王都でエディンさんから依頼をけて、この街まで護衛をしてたんです。そうしたらアレク兄様に逢いに行くと言うもんだから……。僕はもう婚約者がいますけど、アレク兄様はいませんよね? そろそろと思って……」
説明しながらもカインはにやりと笑う。
人の路の話はの味だ。カイン自も散々周りを囲まれて逃げられない狀態になり婚約することになった。
貴族として敘爵されたアレクも同じ目にあうのは楽しみでもあった。
「アレク様、おひさしぶりです。お手紙をお送りしても返事を頂けなかったので……」
申し訳なさそうにして頭を下げるレリーネに、アレクは焦ったように頭を上げるように伝えた。
「レリーネ嬢、頭を上げてください。せっかくこの街に來たのですから、ゆっくりしていってください。僕も出來る限り相手できるようにしますから」
アレクの言葉に、レリーネは頭を上げ笑みを浮かべる。
「あ、お父様から手紙を預かっております。領主のカイン様とアレク様に」
レリーネが視線を送ると、後ろの騎士が魔法袋マジックバッグより、二通の手紙を取り出し、レリーネに手渡した。
レリーネはその手紙をテーブルの前に差し出す。
二人は封蝋の印を確認してから、封を切り中の手紙を取り出していく。
中を読んでいくと、カインは笑みを浮かべ、アレクは顔を青ざめさせる。
「――――わかりました。ただ……しだけ考えさせてください。さすがに急に決められても私としても……」
  読み終えた手紙をテーブルに置きアレクが答える。
「えぇ。わかっております。二週間ほど、この街にいる予定です。それまでにご返答をいただければ」
レリーネは深々と頭を下げる。
「では、今日はまだ街についてお疲れだと思いますから、明日、歓迎會をいたしましょう」
カインがそう言うと、ダルメシアに視線を送る。
ダルメシアは全てがわかっているように一禮をした。
しの間、雑談が続いたが、アレクはレリーネの言葉に頷いているだけだった。
學生時代の話から始まり、卒業してからミシンガの街で暮らしていた事。
ミシンガの街の事など、レリーネは嬉しそうな表を話していく。
そして、レリーネ達は宿へと戻る時間となった。
「アレク様、カイン様、本日はありがとうございます。明日、楽しみにしていますね」
満面の笑みを浮かべレリーネは宿へと帰っていき、見送ったカインとアレクは執務室で再度打ち合わせを行った。
「アレク兄様、レリーネさんと王都から護衛としてついていましたが、とてもいい方じゃないですか。これでやっと落ち著けますね」
笑みを浮かべるカインにアレクはため息をつく。
「それどころか、父上とすでに話もついているみたいだ。サンズ伯爵も了承していて、もう逃げ道は――ないかな……。とりあえずし考えてくるよ」
アレクは手紙を持ち、肩を落として執務室を後にする。
アレクを見送ったカインは自分宛の手紙を再度開いた。
「まさか……こんなことだったとはね……」
手紙にはこう綴られていた。
『親なるカイン卿へ。
まずは、伯爵に陞爵おめでとう。そして久しぶりだな。あの海で一緒に倒したゴーダの事は忘れないぞ。あの時は助かった。
それで本題だが、あの時、お主のところへ嫁を出せないと言ったのは、うちの娘がアレクの事をずっと好いているようなんだ。
々な縁談があったが、頑なに斷わられてな。妻から聞き出したらそういうことだった。
伯爵家として、さすがに例え辺境伯家であっても、相続権のない次男に嫁に出す訳にもいかない。
しかし、お主の推しのおで、アレク卿も男爵に敘爵されたのだ。
だからこそ嫁に出すことにした。お主の父、ガルム卿とはすでに話はついて承認ももらっている。
本人の意向もあるだろうが、基本的には覆ることはないと思ってくれ。
お主もエディン殿から依頼をけ、うちの娘を護衛したはずだ。もったいない位いい娘だろう?
お主からもアレク卿への説得頼んだぞ。
また領地に遊びにきたときは歓迎しよう。
それではまたよろしく頼む。
サンズ・フォン・レガント・ミシンガ』
「全部、大人たちの手の平だったんだな……」
カインは大きくため息をついたのだった。
時はカインが子爵の時まで遡る。
カインは海の幸が食べたいと思い、週末を利用して南へと飛んだ。
その時に海岸に現れた魔と遭遇することになった。共闘した男と意気投合し、自宅に泊まることになったのだが、その男が領主であり、レリーネの父、サンズ・フォン・レガント・ミシンガ伯爵であった。
しかも父、ガルムと學園での同級生であったことから、縁談話はアレクが男爵敘爵後、すぐに決まることになる。サンズ伯爵の子供は男子が一人、子が二人おり、もう一人の娘もカインと同級生であり、學園での學式でカインの主席挨拶を見ており、冒険者の出で立ちであったが、分についてはすぐにバレてしまっていた。
レリーネはそんなサンズ伯爵の娘だと知っていたので、カインもアレクとの婚姻に協力的であったのであった。
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