《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二話 ドリントルの街

「カイン様、おはようございます」

「カインくんおはよう!」

「テレス、シルクおはよう」

制服姿のテレスティアとシルクがカインに手を振り挨拶をする。

「カイン、おはよう」

「リル、おはよう」

その橫でリルターナも笑顔であった。

Sクラスは二十一人いるが、最終的にイルスティンに向かう生徒は十六人となった。

一ヶ月以上の長期に渡る研修のため、家の事などで行けない者もいた。

馬車は學園用に五臺用意され、各馬車に四人の生徒が振り分けられていく。

殘る一臺に同行する教師三人が乗ることになる。

「――なんで僕がここなの……?」

カインが乗る馬車は、テレスティア、シルク、リルターナと同じ馬車になっていた。

「それはねぇ……」

テレスティアとシルクが目を合わせて微笑み合う。

(二人が絶対に手を回したな……)

いくら學園は貴族の上下はないと言っても、王族から頼まれたら教師も嫌と言えないであろう。

しかも、國王から直々に三人の護衛も依頼されている。

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學園の統括をしている、エリック公爵もいる。

どこから指示が來ていてもおかしくなかった。

仕方ないか、とカインはため息をついた。

馬車に乗り込むまで四人は雑談をしていると、後ろから聲が掛かった。

「おーい! カイン、久しぶりだなっ!」

カインは振り返ると、笑みを浮かべた。

「お久しぶりです。皆さん元気でしたか?」

そこにいたのはクロード、リナ、ミリィ、ニーナの四人であった。

「おう! 元気だったぜ? 國から出た急の指名依頼と言われて聞いてみたらな……お前の子守だろ? 思わず吹出したわ」

バチーーーン

後ろからクロードの頭を叩くリナがいた。

「だからカイン……様は貴族だって言ってるでしょ! しかも伯爵様に何言ってるの!」

その二人のやり取りにミリィとニーナは苦笑しながらもカインの前に立つ。

見上げていた二人の長に、カインはいつの間にか追いついていた。

「カイン、立派になったな。あれだけ小さかったのに、もう抜かされそうだな」

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「うん、カイン立派になった。これでじ――」

思わず、最後まで答える前にニーナの口をカインは抑えた。

ニーナは事あるたびに『人』とか言い始める。

言い切る前に止めたことに安心したが、背中に寒気をじた。

恐る恐るそっと後ろを振り返ると――、そこには鬼が二人いた。

しかもリルターナまでが冷たい視線をカインに送っている。

「カイン様、ちょっとお話しが必要かしら」

「カインくん、まずは正座しようか?」

「私もじっくりお話を聞かせてくださいませ」

なぜか馬車の裏に連れてこられ、カインは正座させられていた。

「あの方たちは以前學園に先生として來られた人たちですよね? なんでカイン様はそこまで仲良いのでしょうか」

カインは正座したまま、期の家庭教師だったことなどを説明していく。

「――そうですか。この件についてはわかりました。でもカイン様、これから他國へ行くのです。十分気をつけてください」

「――はい……」

三人はカインの必死の弁明に渋々ながら納得した。

「でも、さっき『人』って言おうとしたよね? カインくん」

シルクの言葉に、また説教は振り出しに戻り、馬車が出発する間際まで続いた。

馬車は六人乗りの余裕がある作りになっている。

奧にテレスティア、シルク、リルターナが座り、カインは対面に一人で座る。

最初はカインの両側にテレスティアとシルクが座ろうとしていたが、カインが斷固として拒否した。

リルターナの立場もあり、そこはすぐに納得してくれたのでカインはホッとする。

「でもこれから、カイン様と一ヶ月以上一緒に過ごせるなんて夢のようです」

「そうそう、カインくん、いつもいないからねぇ」

「それは……一応領主だし、ドリントルも見ておかないと」

「そういえば、最初の街がドリントルでしたっけ。カイン様の街。楽しみです」

イルスティン共和國はエスフォート王國の北にある。そこに行くのにいくつかの街を通り抜けていく必要があるが、今回はなぜかしだけ遠回りしてドリントルに寄ることになったのだ。

エスフォート王國で発展が著しいドリントルを見ることで、將來の役に立つであろうという學園からの通達であったが、カインとしては街では、平服か貴族服、それか冒険者の格好をして歩いている。

顔見知りが多い中、制服姿など見せたことはなかった。

街の途中の宿場町で一泊し、次の日の午後には何事もなくドリントルの街が見えた。

ここ一週間ほど、カインは領主としての依頼で近くの魔を狩るように手配しており、魔と出會うことはなかった。

「もうすぐドリントルだっ。街が見えたぞ」

護衛から聲が上がった。

テレスティアたちは馬車の窓を開け、ドリントルの街壁を見て聲を上げた。

「カイン様、あれがドリントルなの? 王都よりも……立派ではないです……か?」

「凄いよっ! 綺麗な白一の外壁なんて初めて見たよ」

「帝國でもこんな綺麗な外壁は……」

三人が思いのまま言葉に出す。

人口の増加が止まらないことで、カインは再度、街の外壁を広げていた。

東西南北にさらに街を広げ、壁の高さは十メートル程まで高くしている。

稅収もきっちりと納め、他の領地よりも多額に納めている事から、王都から査察が來る事はない。

それをいい事に、カインは膨大な魔力を駆使し、街をどんどん魔改造していった。

それは、カインの魔力とルーラの建築知識、すでに諦めたアレクによるものだ。

カインたちの馬車は四臺目を進んでいる。

アレクに宿の手配など任せていたが、カインはし心配になる。

先頭の馬車が門を潛ると、街の中からは聲援が上がった。

何事かと思い、カインも窓から顔を覗かせる。

そこには――――。

広く作られた石畳の道の両側には兵士が並び、その後ろには街の住民たちが統一した旗を振っている。

その數は一萬人を超えるであろう住民が一堂に集まっている。

大人から子供まで皆、旗を持ち馬車へ向かって聲を上げている。

「な、なんじゃこりゃーーーー!!」

カインは思わず聲を上げた。

「カイン様……さすがにこれはやり過ぎでは……?」

「歓迎は嬉しいけどさ、これ、王都よりすごいよ?」

「カイン様は歓迎されているのね?」

三人の言葉にカインは冷や汗をかく。

何も知らされていなかったのだ。無理もない。

同行する教師たちも困しているであろう。

そんな中、護衛のクロードが馬車の隣まで來てカインに聲をかける。

「カイン、すげーな。お前の街。こんな歓迎、初めてかもな」

クロードは笑しながら言うが、カインは苦笑しか出來ない。

聲援をけ、馬車に乗っている生徒たちは住民たちに手を振る。

テレスティアやシルクも同じように窓から顔を見せ、手を振るとさらに聲援が大きくなる。

「王様もいるぞー! わーい!」

「エスフォート王國萬歳! カイン様萬歳!」

歓迎の聲が響く中、この計畫を立てた者たちに説教しようと決めたカインだった。

先頭の馬車は領主の兵士に導されたまま進んでいく。

馬車は街の中央を進み、そのまま領主館へと向かった。

「――――もしかして……」

カインは背中に冷たい汗をかく。

學園の馬車は導されるがまま、領主館の敷地へとっていく。

そして領主館の前に止まった。

領主館の前には、中央にはアレク、ダルメシアを筆頭に、王都から來たであろうコラン、シルビアを含め従者一同が並んでいた。

馬車から降りた生徒や、教師、護衛たちまで唖然とした表をする。

同じように馬車を降りた、テレスティア、シルク、リルターナも同じような表をした。

――そして、テレスティアは引きつった表のままカインに視線を送る。

「――――カイン様、なんで――――王城より立派な城・がここにあるんです……か?」

馬車を止めた屋敷は――王都にある王城よりも立派な、領主館城が建っていた。

その言葉に「やっぱり言われると思った」とばかりに、カインは大きなため息をついたのであった。

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