《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第三話 將來の住まい

時は數ヶ月遡る。

カインの執務室に大きな紙を持ったルーラが訪ねてきた。

「カイン様、これを見てください。私、頑張りました!」

を張って言うルーラの持ってきた紙に視線を落とす。

そこには街全の計畫図が描かれていた。

綺麗に區畫整理された街並み、所々には公園などが描かれており、カインも思わず銘の聲を上げるほどの出來栄えだった。

商業區など全て綺麗に區畫され、中には小さな商會でもれるようにショッピングモールのような建まで描かれている。住民が住む場所もいくつかに分かれており、考えただけでも頬が緩んでいく。

「私の理想の都市計畫です。日本であった時から考えていた理想の都市です! これをやりましょう」

熱心に説明するルーラにカインも銘はけるが、さすがにこれはやり過ぎではないのかと思った。

しかもこの通りに作るなら莫大な資金が必要であり、全部をやるには人手も足りない。

「きっと大丈夫です。カイン様の莫大な魔力があれば! 裝についてだけ人に任せていけば、そこまで費用はかかりませんし、住民もどんどん増えていますし、稅収ももっと増えるはずです」

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「よし! やろう!」

「ありがとうございます!」

將來的な事を考えたら、街にとってもいい事ではある。

二人はアレクを説得し、決行される事になった。

しかし、何年もかけて造る計畫だったが、カインとルーラの悪ノリが限度を超えて、數カ月で街を作り上げてしまったのだ。

街の住民の説得については、アレクに丸投げし、今より綺麗な店舗や住宅にすると説明していき納得してもらった。

冒険者が多い街だった事から、ギルドマスターのリキセツも賛同し、反対する者はほぼ皆無であった。

しかし、広がった街、そして中央奧に大きく空いたスペースがあった。

「ルーラ、ここのスペースは?」

カインの言葉にルーラは「待ってました」と言わんばかりに笑みを浮かべた。

「ここには、城を建てましょう! カイン様の城です。將來、王様をお迎えするのですから、それくらいは必要かと」

「…………城?」

「えぇ、城です。他に何か? 流石に城を先に建てたら住民から苦がくるかもしれません。だから街を先行したのです」

それから、カインとルーラはどんな城を建てたいか話を進めていく。

「やはり、ヨーロッパにあるような城がいいですね。私も海外旅行に行った時に見ましたが、それはしましたよ」

ルーラの言葉にカインの脳でも想像が膨らんでいく。

(城なら世界事典ワールドディクショナリーがあれば出來るか。ここまできたのなら……)

そして、カインの無限の魔力とルーラの意が、自重知らずの城が出來上がった。

外観の箱だけ創り上げ、細かい裝は人をれることになった。

もちろん、この出來上がった城を見上げて、アレクに二人とも説教されたのは言うまでもない。

◇◇◇

「カイン様……あれほど、お父様から自重をしろと言われてませんでした……か?」

引きつった表をするテレスティアにカインは頬を掻く。

「いや……ちょっと楽しくなっちゃってつい……」

「“つい”で城を建てたなんて……そんな人はいません!!」

「まぁまぁ、テレス、そんなに言わないでも。結婚したらここに住むんだからいいんじゃない?」

シルクの言葉にテレスティアは怒っていた表が一気に変わっていく。

照れたような表になり、頬は紅く染まる。この城で生活しているところを妄想しているのであろう。

「ゴホン……よろしいでしょうか」

城の前に並んでいたアレクから聲が掛かった。

「ようこそ、ドリントルへ。代をしている、アレク・フォン・シルフォードです。今日は屋敷城に部屋を用意しております。一泊だけですが、ごゆるりとお寛ぎください」

キリッとして挨拶をするアレクが一禮すると、唖然としていた教師や生徒が、その聲にハッとする。

そして生徒はアレクの顔を見て思わず頬を紅く染める。

「どうぞこちらへ」

護衛の騎士と冒険者たちは別に宿が用意されており、そこで別れる事になった。

もちろんクロードから「カイン、國でも興すのか?」とからかわれ、またリナから頭を叩かれたのは言うまでもない。

従者の先導で教師と生徒たちは屋敷の中へと案される。

ホールは吹き抜けとなっており、天井は一面に絵が描かれている。初めて見た生徒たちからは激の聲を上げた。

カインは三人からの冷たい視線を浴びながらも、案するシルビアの後についていく。

「お手伝いで屋敷に來ましたが、この城にはびっくりしましたよ」

(城って言うなよ……。ますます疑が湧くだろ)

カインは苦笑いしながら、三人の部屋へと案していく。

「カイン様は奧の部屋ですね。後、皆さまはこちらの部屋になります」

カインの部屋からいくつか空いて三人の部屋を指示する。

「ここからの部屋はどうなっているのでしょう」

疑問に思ったテレスティアが聞くと、シルビアは笑みを浮かべながら答えた。

「ここはですね……カイン様の奧様の部屋になりますので、それまでは誰も泊める事はございません」

「?!……そんな、私たちの部屋まで用意してあるなんて……見てみたい……です」

「王殿下もシルク様も將來カイン様に嫁ぐことになっておりますし、覗くだけなら問題はありません。ご覧になりますか? 流石にまだお泊めすることはできませんが……」

「「見たいですっ!!」」

シルビアの言葉に二人が食いついた。

部屋の鍵を開け、中へ案すると大きなベッドが置かれ、化粧臺、ソファーまでが置かれている。

各部屋にトイレと洗面臺もあり、三人は目を輝かせる。

「すごいっ! こんな豪華な部屋に……うふふ」

「カインくん、ありがとう! これなら直ぐにでも嫁ぎたいくらいだよ」

二人は満足そうな顔をする。しかし、その中で一人だけはを噛みしめる。

(ずるい……。私の方が早くカインと知り合ったのに……。バイサスのがこの時だけは恨めしいわ)

には見せないが、リルターナは二人が羨ましいとじていた。

そんな事は誰も気づかず、シルビアの案は続いていく。

「これが奧様用の部屋になります。あと、奧はカイン様の部屋があるだけです」

「「そこも見たいですっ!!」」

シルビアはカインに視線を送る。仕方ないと思い、カインは渋々ながら頷いた。

両開きとなっている重厚なドアを開けると、そこは応接セット、執務用の機が置かれて、さらに奧には――キングサイズがいくつも並ぶ程の大きさのベッドが置かれている。

きっと十人くらいが眠れる程のスペースがある。

カインもやり過ぎだと思っていたが、ルーラが「これくらい普通です!」と、一番張り切って仕上げていったのだ。

たしかに快適ではあったが、ここまで大きいと一人で寢るのには寂しいとじてしまうほどであった。

「……す、すごい……。お父様の部屋より豪華かもしれない……」

「ここで將來……」

二人とも將來を脳裏に浮かべ頬を染めた。

そこにリルターナから予想外の言葉が出た。

「カイン様……奧様用の部屋が隨分あるんですね?」

その言葉にテレスティアとシルクの二人が固まり、妄想から現実に引き戻された。

二人は廊下に並んでいる扉の數を數え始める。

確かに廊下の両側には部屋が十程度確保されていた。

そして二人の視線はカインに集中する。

「か、カイン様……もしかして……これだけの數を娶るつもり……なのでしょうか?」

「カインくん、さすがに十人とかは許容できないよ?」

冷たい視線で二人はカインに詰め寄っていく。

「私ももしかしたら――」

二人の後ろで小聲で呟くリルターナが笑みを浮かべ頬を染めた。

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