《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第六話 歓迎會
「……そうですか。それはご苦労を」
「痛みります。王國からこの街を預けられているのに申し訳ない」
バルド子爵も軽く頭を下げる。
「いえ、十分によく治められていると思います。治政は私にも詳しくはわかりませんが、簡単なものではないでしょう」
「確かに々なしがらみはありますな……」
「そこはわしが見ておりますからの。大船に乗ったつもりで大丈夫でしょう」
バルド子爵の言葉にコルジーノ侯爵もニヤニヤと笑みを浮かべ同調する。
そして食事が終わり、各自が部屋へと戻っていく。
応接室ではワイングラスを片手にコルジーノ侯爵とバルド子爵が向かい合っている。
「で、準備の方は問題はないか?」
「えぇ、人數は集めております。あちら・・・ともすでに話を済ませております。……それにしても本當に――やるのですか?」
「當たり前じゃ。あのシルフォード伯爵クソガキのせいで、どれだけわしが苦労してると思ってるのだ。國王、公爵、宰相はあのガキの事を目にかけている」
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カインによって王都の闇ギルドが壊滅し人売買での儲けがなくなり、さらには王國に納めた罰金、そして屋敷の損壊だ。
自分の派閥である下級貴族たちも、カインの治めるドリントルが発展し、人口の流出に歯止めが効かない狀態であった。
街からあがる納稅も減り、コルジーノ侯爵の懐にる金も実質的に減っていた。
いくら上級貴族の侯爵家といえ、こうも自分の財布にダメージを與えるシルフォード伯爵は目の上のたんこぶである。
今まで間接的に引きずり落とそうとしたことはあったが、全て失敗に終わっていた。
すでに我慢の限界であり、今回の件で実質的な排除を計畫した。
コルジーノ侯爵はワインを口に含み、自分の立てた完璧・・な計畫に満足し、笑みを浮かべるのであった。
◇◇◇
生徒たちは馬車へと乗り込みテレンザの街を出発した。
この後、三日ほど掛け國境を抜け、イルスティン共和國にる予定である。
最初に向かう場所は貿易を主にしている街であり、この街から、エスフォート王國、バイサス帝國などに輸出が行われている。
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馬車は何事もなく、國し三日後、イルスティン共和國のガザールへと到著した。
先頭を進む教師が付を行い、生徒たちはスルーである。
そして馬車は夕刻前に宿泊する宿へと到著した。
「この街で明日から二日ほど見學を行う。夕食の後、早く寢るようにするんだぞ。明日はこの國の學園の生徒とパーティーがある予定だ」
教師の言葉に生徒たちは返事をし、振り分けられた部屋へと案される。
他國なだけあり、今回は、貴族、平民問わず部屋は二人部屋となっていた。
食事を済ませ、次の日のために早々と生徒たちはベッドへとっていく。
カインはまだ眠気はなかったが、一人で宿を抜け出す訳にもいかず、諦めて眠りについた。
次の日。
午前中から市場などを回っていく。店頭に並べられている商品は各國から取り寄せられたも多い。
珍しいなどを見ながら、街を歩き、そして見學するギルガッド學園へと到著する。
學園では合同で授業をける事になっていた。
案された教室は、五十人程がれる部屋で、片隅に二十人ほどの空席がある。
生徒は三十人程度であろうか、男半々ほどおり、カイン達は案されるまま、その席へとついた。
「おぉ……人が何人もいるぞ」
「あの人格好いい……」
そんな聲が生徒たちから上がる。
「ハイハイ、みんな靜かに。今日はエスフォート王國から生徒たちが見學に來てますからね。しかもっ! 王國で一番レベルが高い王立學園のSクラスの生徒さん達です。ちゃんと勉強しましょうね」
「「「「「「はーい」」」」」」
「それでは授業を開始します。では――――」
授業の容は王國と変わらなかったが、イルスティン共和國の仕組みについてもれられることが多々あった。
それぞれの街が獨立した國となっていたのが起源で、各街同士で貿易をしていたが、それぞれの街の良い所を共有しようという事になり、現在の制となっている。
國は議會制となっており、各街に議員がおり、最高権限の議長は各街の議員が持ち回りで行われていた。
南のガザールは貿易を。
北のリボルームは傭兵を。
東のバルザーナは工蕓を。
西のティレーゼは農業を。
そして中央に議會の街、タンバールがあった。
このイルスティン共和國は、衛兵以外の兵士を持たず、全てリボルームからの傭兵で賄われている。
各街から補助金をリボルームに出し、そして街からは戦力を出す。
そんな関係である。
「――――それでは今日の授業は終わりです。これから歓迎會がありますから、生徒の皆はホールに移してください」
終了のチャイムがなり、教師から今後の説明がされた。
カイン達生徒一行は、教師と共に大きなホールに案される。
育館程度の大きさがあり、すでに數十人の生徒たちがいた。
テーブルがいくつも配置され、立食パーティーの用意がされていた。
カイン達も指示されたテーブルに四人ずつに分かれていく。
もちろん、カインの周りにはテレスティア、シルク、リルターナである。
同じ教室にいた生徒たちも各テーブルに分かれ、ドリンクが配れていく。
準備が出來たところで、壯年の男が前のステージに立った。
「ようこそ、エスフォート王國の生徒たちよ。私はこの學園長をしている、バルガ・ランデムです。長旅でお疲れだろうが、今日は歓迎の準備をさせていただいた。當學園の生徒たちとも流ができたらと思う。それでは乾杯!」
「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」」
生徒たちは金屬製のグラスを掲げ、乾杯をすると生徒たちは、テーブルに置かれている料理に手をつけていく。
「カイン様、このサンドウィッチも味しいですよ」
さすが王ともいうべきか、しずつ口へと運んでいく。
カインも同じように一つ取り口へと運ぶ。
「うん、味しいね」
そんな話をしていたが、周りからの視線がカイン達のテーブルに集まっている。
ゾロゾロと生徒たちがカイン達の周りに集まって來た。
そしてその中で一人の年が一歩前に出て聲をかけた。赤い髪を靡かせ、クールに笑う。
「失禮、しいお嬢様方、僕はこの街の代議員の嫡男で、ラルフ・バンテーガと言います。お名前をお伺いしても?」
集まって來た生徒たちの視線は、カインではなく同じテーブルにいるテレスティアたちに集まっていた。
(確かにテレスティア達を見たら三人ともだもんな……)
カインも三人の周りに十人以上集まっていく生徒たちを見て苦笑する。
「テレスティア・テラ・エスフォートですわ」
「シルク・フォン・サンタナです」
「リルターナ・ヴァン・バイサスです」
三人が自己紹介をすると、生徒たちから盛大な歓聲があがる。
「おい、王と皇だぞ。しかももう一人もサンタナ家なら公爵家だ」
「まじかっ……、全員逆玉じゃねーか」
そんな聲が生徒たちから上がる。
「おぉ、王殿下に、皇殿下、そして公爵令嬢であられましたか。宜しければこの後もまたお話しができましたら……」
自信満々に言うラルフであったが、テレスティアが首を橫に振る。
「殘念ですわ。明日にはもう街を出てしまいますので」
「それでは、ご連絡を。お送りしますので手紙をけ取っていただけますか?」
「……殘念ですが、もう――婚約者がおりますので」
「そう、私も婚約者がいます」
テレスティアとシルクの言葉に、ラルフはむぐぐと唸るが、未だに諦めてはいないようだった。
「その、婚約者はどんな方なのですかっ!? もしかして……政略結婚では!?」
引き下がらないラルフに、テレスティアとシルクはカインの両側につき腕を絡めていく。
カインは「えっ!?」と思ったが、すでに遅い。
「このカイン様が婚約者ですわ」
「そうそう。カインくんが相手なのでごめんなさい」
男たちの嫉妬の目が一気にカインに集まったのだった。
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