《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十話 貴族の価値
予想外の言葉にカインは思わず、フォルトに視線を送る。
「言っている事がわかりませんが……? 街中での襲撃であれば、今回はギルドカード剝奪の上、犯罪奴隷ですよね? しかも今回は依頼者もいる。その依頼者含めて同じ処分の筈ですが」
「あぁ、規約的にはそうなる……」
カインの言葉に、フォルトは頷く。
「だから、わしが出てきたのだ。この街の代議員のわしがな。それだけでお主の面目も立つだろう」
自信満々に言うマルフにカインはため息を吐く。
「一……どういう事なんですか?」
カインの問いにフォルトは渋々ながら真相を話し始めた。
「襲撃を依頼した者は、ラルフ・バンデーガ。マルフ殿の嫡男だ。それはバンザ達がすぐに吐いた。それでマルフ殿に連絡をしたのだ」
「まずその名前に聞き覚えがありませんが……?」
依頼者の名前を聞いても、カインは全く聞き覚えがなかった。
思い出すために悩んでいるカインにフォルトが助言をする。
「今日、學園で會っているはずだ。歓迎會でな……」
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その言葉でカインは思い出す。テレスティア達を口説こうとしていた男だ。サクッと振られ面目を潰されて引っ込んだのを思い出した。
「あー、テレス達に聲を掛けて振られた人ですね。……あ、それで……」
頭の中で一本の線が繋がった。カインはなぜ、この街で襲われるのかわからなかったが、あの場でカインに面目を潰されて、その仕返しの為に冒険者に依頼をし、襲撃をしたのだと。
納得して頷くカインに、マルフが口を開いた。
「確かにうちの馬鹿息子ラルフが依頼したようだ。しかし、依頼したのは脅すだけと本人は言っている。だからこそ、この街の代議員であり、國の重鎮であるわしがわざわざ出向いたのだ」
カインは自信満々で言うマルフの言葉にため息を吐き、フォルトに視線を送る。
「この場合ってどうなります? 僕はエスフォート王國の人間なので、この國の法律には詳しくありません」
「多分、基本的には同じであろうな。結果に拘らずな。依頼した容が脅すだけだというのは狀の余地はあるとは思うが……」
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「そうですか……ちなみに僕の事はどこまで知られています?」
「それについては、襲って返り討ちにした冒険者登録をしている、エスフォート王國の學生だとだけ」
マルフを他所にカインとフォルトは話続けていると、後ろで控えていた騎士が我慢出來なかったようで、口を挾んできた。
「おい、マルフ様がいるのにその態度はなんだ?」
怒りに満ちた顔をする騎士に視線を送り、ため息を吐く。
「僕はエスフォート王國の人間です。明日にはタンバールに向かいますが、そこで今回の話を上層部の方にさせてもらっても?」
騎士はムググと言いながら、後ろに下がった。
「――わかった。お前はこうやって金を引き出そうとしているんだろ? 幾らしいんだ。大銀貨か? それとも金貨か?」
的外れな事を言い始めるマルフに、カインは何度目かの大きくため息を吐く。
「お金の問題ではないと思いますよ。ここに本人も來て謝罪するなら、まだ狀の余地はありますが、代議員という立場を使い脅迫紛いの圧力をかけているんですよ。親として謝るならまだしも……」
「お前、ふざけているのか!!」
我慢が出來なかったのか、騎士は剣の柄に手を掛けカインに殺気を放つ。
「フォルトさん、この場で殺気まで放たれ剣を抜いたらどうします? ギルドとして……」
「それは……。マルフ殿引いてもらえませんか? カイン殿はエスフォート王國で――Sランクに登録されている冒険者です。言っている事はわかりますよね? もし、カイン殿が本気になれば、一瞬にしてこの場は――死の山になりますよ」
「…………なんだ……と?」
先程まで息巻いていたマルフは驚きの表をする。
カインは証明の為に、ギルドカードをテーブルに置いた。
「……Sランク冒険者のカインです」
その言葉と同時に、後ろに控えていた騎士の殺気は一瞬にして散り去った。傭兵は冒険者ギルドと異なるが、そのランクによる度量についてはわかっていた。Sランクがどういうモノであるかを。
しかし、マルフは子供のために引くわけにもいかない。
「高ランクの冒険者なのはわかった……。そのランクでは、金貨なぞ、はした金であろう。だからな……代議員権限でこの件は無かった事とする」
にやりと笑うマルフに、カインはフォルトに視線を送る。
「そんな法律がこの國には……?」
「あぁ、一応はある。使えない場合もあるがな……」
フォルトはその権限について、カインに説明を始めた。
代議員および親族が簡易的な罪を犯した場合、相手が貴族の子弟、または平民の場合は取り消す場合が出來る。
しかし、その権限を発した際には、街への獻金を行う必要がある。また相手の立場によって金額が異なる。
貴族の子弟の場合、街からいくらか手數料が引かれて、貴族家に支払われる。
今回については、被害者のカインは無傷であり、撃退した事で簡易的と判斷される場合が大きい。
説明を終えると、フォルトは申し訳なさそうな表をする。
「いくらSランクの冒険者と言えど、これは……我が國の法律だ。法律には従わなければなるまい」
マルフは自信を持ち、高々と話す。
しかし――。
「それでは、今回は――適用できませんね」
「?!……なんだとっ!」
驚く表をする彼らの前に、カインは豪華な飾りがついた貴族証を置く。
その貴族証を見た全員の表が凍りつく。
「カイン・フォン・シルフォード・ドリントル伯爵。それが僕の正式な名前です」
権限には、貴族の子弟は含まれているが、貴族當主は含まれていない。
その前に貴族當主にそんな対応をすれば、それこそ不敬罪で処分されてもおかしくない。
ましてや、今回は他國の貴族當主。しかも上級貴族である伯爵相手に襲撃者を差し向けたのだ。
被害がないとはいえ、死罪でもおかしくない。
「……そんな……」
先程までの強気の表はすでになくなった。
「ちなみに、ご子息が聲を掛けたのは、僕の婚約者でもあり、エスフォート王國の王殿下、公爵令嬢、そして留學に來ているバイサス帝國の皇殿下ですよ」
カインの駄目押しするような発言に、マルフ達の表は真っ青に変わっていく。
エスフォート王國に戦爭を売る。そう言われても仕方ない。
ましてや大國であるバイサス帝國の皇もいる。
これが明るみに出れば、代議員辭職だけの騒ぎだけでは済まないであろう。
下手すれば、二つの大國に戦爭を仕掛けたという『國家転覆罪』という、一家共々処刑というこの國で一番重い罪に問われる可能さえあった。
マルフはを震わせ……そしてぶ。
「今すぐ、ラルフを連れてこい!!」
「はいっ!!」
騎士の一人が駆けるように部屋を出て行く。
「シルフォード卿……この度は……」
先程までの勇ましさは、今のマルフには、すでにない。
打って変わって低姿勢になり、上司にゴマをするような態度に変わっていた。
フォルトも、ギルドランクは知っていたが、『カイン』として登録されている事から、伯爵當主など知る由もない。
待っている間に、カエラを呼び紅茶を淹れ直すように指示していた。
しかも新しく淹れた紅茶は香りも良く高級品だという事が伺えた。
一時間も経たずに、扉がノックされ、騎士に連れられたラルフがった來た。
カインの顔を見るなり、眉間にシワを寄せる。
「父上、急にお呼びとのことですが……」
バチーーン!
その言葉と同時に、マルフは立ち上がり、ラルフの頬を平手打ちした。
「ラルフ! お前は誰に手を出そうとしたかわかっているのかっ!!」
マルフに平手打ちされ、転げたが、頬を抑え立ち上がる。
しかし平手された理由については、わかっていなかった。起き上がるとカインを睨み付けた。
「……脅すように依頼はしたけど、問題になっても父上の権力で何とでも……」
バチーーン!
再度、マルフに平手打ちされる。
「お前は……エスフォート王國の伯爵に手を掛けようとしていたのだぞっ! その意味は分かっているのかっ!」
「?!……伯爵……?」
全く分かっていないラルフに、マルフがエスフォート王國の伯爵當主である事を説明する。
しかも、Sランクの冒険者であることも。
その真実を知ったラルフは唖然とし、膝から崩れ落ちるのであった。
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