《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十一話 裏工作

ラルフは崩れ落ちたままく様子もなかった。

「……それで、今回の場合は……?」

カインは紅茶を一口飲み、カップをテーブルに置く。

「最低でも、マルフ殿は議員辭職。そして國を代表して、カイン……いや、シルフォード卿及び、エスフォート王國への謝罪と賠償金だな。まぁ、それを決めるのはタンバールの議會で決める事となるが。國としても王國に戦爭を仕掛ける事はあるまい。多分、賠償金になると思う。相當な金額になると思うが……」

を震わせて言葉を発する事が出來ないマルフに代わり、フォルトが説明をする。

「……そうですか。僕も國同士の戦爭まではしてしくありません。その條件でいいかと」

「そう言ってもらえると助かる」

カインとフォルトは納得し頷く。

そして、マルフは崩れ落ちているラルフの隣に土下座し、頭を下げた。

「シルフォード卿。この度は……申し訳ない。ほら! お前も頭を下げろっ!!」

マルフはラルフの頭を床に押さえつけるようにする。

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「……シルフォード卿……この度は……申し訳ありません……でした……」

頭を下げる二人に、カインはフォルトに視線を送る。

「申し訳ないが、謝罪だけはけ取ってもらえるか……。この後、議會にかかるとは思うが……」

「わかりました。謝罪はけましょう。あとの手筈はフォルトさんにお願いしても?」

「責任を持って対応させてもらおう。統括エディン殿に何を言われるかわからんからな……」

「あ、エディンさんをご存知で……?」

「あぁ、もちろん。この街のギルドマスターに命じられたのもエディン殿だからな。それと、シルフォード家の神なら、エディン殿の妹君の近衛騎士団長も婚約者ということだよな……」

「その事まで……知ってましたか」

「ギルドは報が命だからな」

二人は頷くと、フォルトに「後のことは任せてくれ」と言われ、ギルドを後にし宿へと戻った。

宿に戻ると、ギルドに呼ばれたことを心配そうに、テレスティア、シルク、リルターナの三人が待っていた。

「あ、カイン様。大丈夫でしたかっ!? 急に出かけて行ったので。先生に聞いても何もわからないと言われるし」

「カインくんがまた何かやらかしたのかと思ったよ……」

「そんな、他國にきてまで……大丈夫」

カインは黙っているつもりだったが、表を見ていた三人はすぐに気づいた。きっと何かをやったんだと。

「カイン様、とりあえずお部屋でお話を聞かないといけませんね。カイン様は相部屋ですから、私たちの部屋で行きましょう」

「そうだね、カインくん。そんな誤魔化してもすぐにわかるんだからね?」

両手をテレスティアとシルクが摑み、カインは部屋に連れていかれるのであった。

◇◇◇

屋敷に戻ったマルフは激昂していた。椅子を蹴り飛ばし、持っていたグラスも壁に投げつけた。

「ふざけるなっ! せっかく今までの努力をそう簡単に捨てられるかっ!! これもラルフ、お前のせいだっ! お前はし謹慎してろっ! こいつを連れて行けっ!」

マルフの言葉に、護衛の兵士がラルフの両腕を摑み部屋を退出させる。

一人になったマルフは考えた。どうやったらこの狀況を抜け出し、議員としての地位を殘せるか。

そんな時従者がノックをし、部屋にってきた。

「何でってきた! 誰も許可を出しておらんぞっ!」

怒るマルフに恐しながらも従者は口を開く。

「それが――エスフォート王國のコルジーノ侯爵から使者がお見えに……」

「エスフォート王國だとっ!? しかも……コルジーノ侯爵かっ。これは――」

先ほどまでの怒りはどこへいったのか、マルフはにやりと笑う。

マルフはコルジーノ侯爵とは深い縁がある。最近は荷が途絶えているが、マルフはコルジーノ侯爵の人売買における國を許可していたのだ。

攫った者を犯罪奴隷として、イルスティン共和國に國させ、裏で手を回し売買を仲介し、手數料を得ていた。

自分のが危なくなったら、コルジーノ侯爵の今までの事をぶちまけると言えば……。

マルフは脳をフル回転させ、卻するために知恵を練る。

「それで使者は……?」

「応接室にご案しております」

「よし、すぐに會おう。案してくれ」

「わかりました。では」

従者とともに応接室へとる。

使者はまだ二十代に見える若者であった。

「おまたせしてすまんな。々とあったのでな。それで使者殿、今日のご用件は?」

「急に尋ねてきて申し訳ございません。実は折りって話が――」

使者はちらりと従者へ視線を送る。それを察してか、マルフは部屋を出るように伝えた。

「それでは失禮いたします」

扉は閉められ、二人だけとなる。

「ご配慮ありがとうございます。私はコルジーノ侯爵の従者で、リガンと申します。それで、今回、お伺いした件ですが――――」

マルフはリガンが話を進めるにつれ、頬を次第に緩めていく。賠償金などで多額の費用が掛かるが、それが戻ってくる可能もある。

「わしの方でもすぐに手配しよう。実はわしの方でも問題があっての……功すれば、今の立場のままでいれると思う」

「それはそれは。私たちも危ない橋を渡ろうとしておりますので、全力でいく予定でございます。では、細かいことを詰めていきましょうか――」

二人の計畫は長い時間続いた。従者は誰にも室させず、マルフ自ら飲みを淹れるまでである。

打ち合わせは二刻ほど続き、終わった時には疲れ果ててはいたがマルフは満足した笑みを浮かべていた。

「それではリガン殿、頼んだぞ。わしの方も明日からさっそく手配させてもらう」

「えぇ、こちらの方も抜かりなく。これでコルジーノ侯爵の目の上のたんこぶが無くなると思えば――」

二人はにやりと笑い固く握手する。

「ではリガン殿、頼みましたぞ」

「えぇ、こちらこそ」

リガンは一禮し、屋敷を後にする。

一人になったマルフはにやりと笑みを浮かべ、ご機嫌で新しいワインをグラスに注いでいく。

「これが上手くいけば、わしの立場はそのままでいれる。もし、ダメだとしても使いきれないほどの金がるな……」

ソファーに座り込み、満面の笑みでワインを飲み始める。

計畫が上手くいった時の事を思い浮かべて。

二人は、いや、コルジーノ侯爵やバルド子爵も含めてわかっていなかった。

カインのことを普通の冒険者の基準として認知していた。たとえSランクとはいえ、人の領域であると。

それを知っているのは、エスフォート王國の中でも、國王を含め數人である。

カインの知らないところで、崩壊までのカウントダウンは始まったのだった。

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