《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十五話 シルクは鋭い?

いきなり膝をつき頭を下げるダルメシアにカインは困する。

カインの従者になった時でさえ、このような対応はした事がない。

しかし、リザベートはソファーに座り込んだまま、ダルメシアを見下ろし目を細める。

「ぬしは妾のことを知っているようじゃの……。もしや、同輩かや?」

その言葉にダルメシアはしだけ肩を震わせて頭を更に下げる。

「ちょっと、ダルメシアがこんなになるなんて、リザは……?」

カインの言葉にしだけ、リザベートは口元を緩める。

「カインはそのままで構わんぞ。なんせ、命の恩人じゃしの」

「……うん」

立ち上がったダルメシアはそのまま紅茶の準備をして各自の前にカップを置いていく。

「僕も急に抜けてきたから、すぐに戻らないといけないんだ。しの間、この屋敷で寛いでくれて構わない。でもーーもしダルメシアみたいに変できるなら、お願いできるかな? 他の従者が驚いちゃうから」

カインの言葉に顎に手を當て、しだけ考えてリザベートは笑みを浮かべ頷いた。

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「恩人の頼みじゃ。無礙にもできんしの。わかったのじゃ」

そう言って、小聲で何かを唱えると、角は隠れ真っ白な綺麗なストレートの髪、どこから見ても絶世のともいえるリザベートが座っていた。

そのしさにカインは思わずを鳴らす。

「それでいてくれると助かる。細かいことはダルメシアに聞いて貰えればわかるから。それにしてもリザって……」

先ほどのダルメシアの対応といい、確実に魔王クラスの存在だとすぐにカインは理解していた。

「妾は、一國の姫ではあるが、何かをしているわけではない。自由なのじゃ」

ダルメシアに視線を送ると、しだけ顎をひき、同調の意思を示す。

「なら、セトとかも知っているの……?」

その言葉にリザベートはしだけ目を見開く。

「セト殿も知っているのじゃ。そうか、お主はセト殿の配下であったか? それにしてもカイン、お主は魔族に忌みする気持ちはないのかや?」

「なんで? 魔族も、エルフや獣人と同じ、一つの種族でしょ? 見た目がちょっと違うだけだと思うけど……」

カインの答えに、リザベートを大笑いする。

「あっはっはっは。そうかそうか、主はそんな考えなのじゃな。わかったのじゃ。それにしてもセト殿を“セト”と呼んでいるあたり、セト殿の配下ではないようだが……? アレも一応“魔王”であるのじゃが……」

「うーん、セトは友達みたいなもんかな……。々と手伝って貰っているけど、ダルメシアもセトの紹介でこの屋敷に勤めてもらっているんだ」

楽しそうにわす會話の中、ダルメシアは冷や汗をかいていた。ダルメシアはこのリザベートの正を知っている。魔族の中でどんな位置にいるかも。しかし、本人や、カインが言わない以上、ダルメシアが話せることではない。

「魔王を“友達”と言えるのかや。主は面白いのぉ。どうじゃ? 妾ともーーその“友達”にならんかや?」

「うん、それは構わないよ」

カインはそう返事をすると、右手を差し出す。

「これはなんじゃ……?」

リザベートの問いカインは首を傾げる。

「握手とか知らない? お互いの手を握るの。友達の挨拶みたいなもの。ほら、手を出して!」

不思議そうに右手を差し出したリザベートの手をカインは握る。

「こんなじ」

握ったままの手を見下ろして、リザベートはしだけ頬を緩める。

「これが握手というものかや。悪いもんでもないのぉ。初めてやったのじゃ」

手を離し、お互いにまた座ると、カインは今後の説明を始める。

「夜にはこっちにこれるけど、僕はちょっとさっきの場所に戻らないといけないから、ゆっくりしていて。ダルメシア、部屋の用意とか頼んだよ」

「かしこまりました。すぐに準備いたします」

カインは、リザベートのことをダルメシアに任せて、その場から転移していった。

リザベートとダルメシアだけ殘った部屋で、リザベートは笑みを浮かべる。

「ダルメシアとやら、カインは面白い存在じゃの? しの間、世話になるのじゃ」

リザベートの言葉に、姿勢を正してダルメシアは深々と頭を下げる。

「恐れながら、仰せつかった大役、誠心誠意努めさせていただきます、皇殿下」

「うむ、頼んだのじゃ。まずは……食事を頼んでもいいかや? まともなを食わせてもらってなかったのでな……」

その言葉にダルメシアはすぐに食事の準備に走ったのだった。

◆◆◆

二人が消えた後の闘技場は沈黙が支配した。

突如として消えた魔族と謎の男。そして、一撃で失神して転がっているガームズ。

「…………これは一……?」

視界の聲が沈黙の會場に響き渡る。

それは観覧席で観ていたテレスティアたちも一緒だった。

「一何があったんだろう……あのガームズさんは、この國で一番強いって言っていたけど……」

「……うん、そう言っていたね」

テレスティアの問いに、リルターナが答える。

シルクだけは無言で何かを考えていた。

係員が闘技場に出てきて、ガームズに回復魔法を掛け、タンカーに乗せられてそのまま運ばれていく。

そして司會からの放送が続いた。

「えっと……主催者からの連絡です。本日はこれで全てが終了となります。気をつけてお帰りを」

釈然としない観客たちも、終了の合図とともに次々と席を立って帰路についていく。

そんな時、扉が開かれカインが戻ってきた。

「いやぁ、お手洗い混んでてさ……お待たせ。って、あれ? もう終わり……?」

貴賓席から観客が帰って行く姿を見て、カインが首を傾げる。

「カイン様、遅いです! 大変なことがあったんですよっ!」

「そうなんだ……見逃しちゃったな……」

カインは苦笑しながら、指先で顎をかく。

「それでは、観覧も終了なので次の場所へ向かいますよ」

同伴した教師の言葉にテレスティアを含めた生徒たちは席を立った。

予定よりし早いが、次の場所へ向かう事になっている。

カインは他の生徒たちと一緒に案について歩いて行く。そんな時、後ろから肩を叩かれてカインは振り返った。

そこには――笑みを浮かべた、シルクが立っていた。

「シルク、どうしたの?」

その言葉にシルクはニコリと笑って、カインの耳元に顔を寄せた。

「さっきの――――カインくんだよね? テレスたちは気づいていないけど。あとで教えてね」

一言だけ殘して、テレスティアの元へ走って行く。

「……なんでバレたんだ……?」

唖然としたカインは、係員から聲を掛けられるまでその場で立ち盡くしていた。

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