《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十六話 後始末
執務室の一角は処理をするを待っている書類の山ができていた。
その中で、機に座りひたすら書類の中を確認し、決済を進めていく一人の青年――アレク・フォン・シルフォードがいた。
領主、カインのむちゃくちゃな計畫を聞いた時は、何十年掛けてこの街を整備するのかと思っていたが、予想外の早さで街の拡張されていた。
街が大きくなれば、それだけ決済する仕事も増えていく。
當初、政として建築の計畫などを立てていたルーラも、予想外の頭の良さにアレクは舌を巻いた。
一番驚いた計畫は、ドリントルに城を建てるなどと、想像がつかないような発言をしていたが、カインの魔法をフル活用し、數ヶ月のうちに完させてしまった。
思わずアレクでさえ「天才がここにもいた」と思わせるほどのしさをじさせる程の城である。
実際は、前世で建築専攻をしていたルーラが、趣味の海外旅行で世界の城を巡って記憶に殘していたものを、いいとこ取りしただけなのだが、この世界の住民にそれは気づくことはない。
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更に言えば、カインに質問することにより、カインの『世界事典ワールドディクショナリィ』によって正しい答えが返ってくることにルーラは味を占め、このような城ができることになったのだ。
肝心の領主であるカインは未だ學生である。基本的にアレクが街を運営することになっていた。
半ば納得できないと思いつつもアレクは決済を進めていた。
領主邸という名の城では、従者も増えていく。ここまで急速に発展すれば手が回るはずはないのだが、採用から教育までダルメシアに一任したことにより優秀な揃っていおり今のところは問題は出ていない。
そして忙しい最中さなか、自分の婚約についても著々と話は進んでいた。
あと數ヶ月もしないうちに、レリーネが嫁いでくることになっている。領主邸城の橫には、他の街では領主邸と言っても過言ではないほど立派な代邸も新築されており、すでに妻に迎える準備を終わっていた。
數週間前に打診があった、王立學園の生徒達の宿泊についても無事に終わり、教師、生徒共に満足してイルスティン共和國へと向けて街を旅立っていった。
カインとルーラが意見を出し合って基本的な事は決めていったが、想像もつかない食事方法など、効率的で溫かい料理が食べられるのは今後においても役に立つとアレクは考えていた。
二人の意見はアレクには理解できないことも話していたが、二人がわかりやすく説明していく。地頭のいいアレクはすぐに飲み込んでいったのだった。
決済をこなしていくと、扉がノックされルーラが焦ったように執務室へと室する。
そして開口一番で――――。
「カイン様がを連れ込みました! しかもすごいを!」
「な、何っ!?」
思わずアレクは席を立つ。
カインの転移魔法については知っている。スケジュール的にはもうイルスティン共和國の首都へとついてるはずであろう。
すぐに戻ってこれるのは理解していたが、なるべく生徒達と寢泊まりを共にし、ドリントルへと戻ってこなくても問題はないと伝えていたのだが……。
そんな中、カインは戻ってきた。を一人連れて……。
「カイン様、また妻を増やすつもりなのですかね……」
ルーラの言葉にアレクはため息をつく。
この國は重婚が認められているので、確かに問題はない。経済力的にもカインであれば數十人の妻を娶っても問題はないだろう。
ただし、カインの婚約者は王と、公爵令嬢二人である。さらに、聖までがカインに嫁ぐと斷言している。
その中に加われるだけのなんてそうはいない。
「……さて、どうするか……」
悩むアレクであったが、扉がノックされたことで思考は中斷する。
許可を出して部屋にってきたのはダルメシアであった。
「アレク様、客人に最上級の部屋を使わせようと思っております。よろしいでしょうか」
ダルメシアの言葉にアレクは疑問が浮かぶ。
この領主邸城の客間はグレードがいくつか分かれている。最上級はエスフォート王國の王族や、國賓である、國外の王族まで対応できるであろう部屋から、上級貴族、下級貴族とグレードが分けられている。
その中で、カインが連れてきたにダルメシアが最上級の部屋を用意するのかが、理解ができなかった。
「ダルメシア、カインの連れてきたはそこまでの人なのか……?」
「――はい、アレク様は私が魔族ということを知っておられますよね。カイン様が招かれた客人は――――」
ダルメシアの説明が終わったあと、アレクは額に手を當て天を見上げた。
「まさに『oh! my god!』ですね!」
ルーラの言葉にアレクは首を傾げて質問をする。
「ルーラ、なんだ、そのオーマイゴッドというのは……」
「あ、簡単に言えば『なんてこった!』みたいなものです」
「……まさにその通りだな……」
思わずアレクは苦笑する。
「それでは……」
「あぁ、最大限のもてなしを頼む。ここはダルメシアの方が向いているだろう。メイド達にもそのように伝えておいてくれ」
「ありがとうございます。それではすぐに手配を」
ダルメシアは優雅に一禮すると退出していく。
「――何か問題を起こさないかと心配はしていたが、いきなり弾を落とされた気分だよ」
「これだけで済めばいいですね……」
アレクとルーラの二人は大きくため息をついて、これ以上カインが問題を起こさないことを祈ったのだった。
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