《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十九話 リザベートの正

別行をしていたカインは宿で生徒達と合流した。

教師達もまさか議會の見學で、自分の生徒の裁判を傍聴するとは思ってもいなかったらしく、ましてや研修中の襲撃事件となればただ事ではない。個別に呼ばれ引率の教師たちに説明する事になった。

「――――以上です」

カインはことの始まりからの説明を終えると、し冷えた紅茶を口に含みの渇きを潤した。

「――まさかそんな事が……」

教師たちも事を聞いて、大きくため息をつく。今回は議員の息子であるラルフの短慮から起きた事件であったが、もし、カイン以外が同じような事があったのなら無事では済まなかったはずである。

「カイン、君がSランクの冒険者であることは、生徒たちにはとなっているが、私たち教師は知っている。それでも今回の件については、王國に戻り次第學園長含め協議をする事になる。場合によっては君の処罰も検討しなければならない」

「……それについてはわかっています」

さすがに非がないとはいえ、研修中に起こしてしまった事である。カインはそれについては素直にけようとしていた。教師から解放され、ため息をつきながら自分の部屋へと戻る。

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しかし、部屋の前には無表とも言える三人が待っていた。

「……やっときましたね。それではじっくりとお話しをしましょうか」

「カインくん、々と教えてくれるよね? もちろん」

さすがにリルターナは突っ込むことはできないが、無言の圧力がカインに迫る。

手招きされるがまま、カインは力なく部屋へと吸い込まれていったのだった。

◇◇◇

時は前日まで遡る。

シルクが部屋を退出したのを確認すると、カインは著替えを済ませドリントルへと転移をする。

執務室に転移すると程なくして、扉がノックされた。

許可を出し、扉が開くとし疲れたような表をするダルメシアが室してきた。

「ダルメシア、大丈夫……? 疲れているようだけど……何か問題があった?」

「カイン様……、あ、貴方は何て人を連れてきてくるんですかっ!」

珍しくダルメシアが疲れてきった表をする。普段見せない表にカインは首を傾げた。

「うん……? リザベートの事? 何か問題が……。もしかしてセトの國と敵対している國だったり?」

「そんな問題じゃありません。リザベート皇殿下は――」

ダルメシアの言葉を遮るように扉がノックされた。

扉を開けて覗き込むのはルーラだった。

「カイン様が來てる気がするとリザベート様が……」

ルーラと同様にリザベートを部屋を覗き込んだ。

「ほら、やっぱりカインがいたのじゃ」

ニコリと笑みを浮かべて部屋へとる。カインとダルメシアは大きくため息をついた。

カインは執務室にあるソファーへと座るように促すと、機嫌が良さそうにリザベートは真ん中に座る。

カインが対面に座り、ダルメシアは紅茶の準備を始めた。

「カイン、この屋敷が気にったぞ。食事も満足じゃ。妾は當分ここに世話になることにしたのじゃ」

リザベートはご機嫌良さそうにそう答える。

「うん、それは構わないけど、その前になんであんな狀態に……?」

カインが初めて見たのは檻にれられ、魔力吸収の腕をつけられていた狀態だった。

しかも魔族の國とはまったく違うイルスティン共和國でだ。不思議に思わない訳がない。

「言わないとダメかのぉ……。まぁカインには世話になることじゃし、仕方ないか……」

ポツリポツリとリザベートは事を話し始めた。

殆ど屋敷から出ない生活に飽きて、路銀代わりに屋敷にあった魔石をいくつか持って家を飛び出したこと。

空を飛び、海を超えて人族が住む大陸まできて、魔石を路銀に換して、それから一人で各街を巡ってたこと。

そして何処かの街で、冒険者たちと飲み比べをした時に、酔い潰れて変を解いてしまい、気がついた時には捕らえられて、イルスティン共和國の奴隷商に売られてしまったこと。

転移魔法を使えることから、いつでも逃げられると思っていたら、魔法封じの腕をつけられていたこと。

そして、闘技場であの戦いになったことまでをリザベートは話した。

「――カインのおで助かったのじゃ。流石に妾は命を失う訳にはいかなかったからのぉ」

話し終えたリザベートは目の前に置かれた紅茶のったカップを手にとる。一口飲んでフーっと一息ついた。

「なら、いつでも自分の國には帰れるってことだよね。しの間ならこの屋敷にいてもいいけど、一度、自分の國に戻って反してきたほうがいいんじゃないかな?」

「……他にも戻りたくない理由もあるのじゃがな……。仕方ない。し世話になったら一度戻ることにしよう」

自分の國に戻ることがし嫌そうな表をしながらも、渋々ながらリザベートは頷く。

その後、街へと出る場合は必ず、護衛をつけることをお願いした。

「頼んだよ、ダルメシア」

「……はい、微力ながら承りました」

ダルメシアには珍しく、し嫌そうな表を浮かべながらも頷いた。

「それにしても、カインよ。この街といい、この屋敷城といい隨分立派な領地を治めているのじゃな。人族としてはまだ若いじゃろう」

「うん、最初はもっと小さな街だったんだけどね。みんなに手伝ってもらってここまで大きくなったじかなぁ……。あと、城って言わないでね。一応“屋敷”だから。ちょっとだけ大きく造りすぎちゃってね」

カインは、ドリントルの領主になった最初の頃を思い出し懐かしんだ。

々な問題が発生し、それを解決しながら街を広げていったが、他の街とは違い、大量の資金とチートな魔力、そして前世の知識を駆使して一気に作り上げたのだ。

他の街を治める領主からしたら信じられないようなことである。

あくまで國王から「もう好きにしていい」という言葉をもらったからこそ出來たことである。

しかし、さすがここまで大きくなるとは國王、宰相含め誰も想像してなかったことだろう。

「ふむ……。カインにそれだけの甲斐があるということかのぉ」

その言葉の後に小聲でブツブツとリザベートは獨り言を始め、一人で納得したように大きく頷いた。

「とりあえず、しの間はゆっくりしてもらってかまわないよ。あと數日でイルスティン共和國を出る予定だから、そうすれば戻ってくる予定だし」

「そうじゃ、お主は人族では珍しく転移魔法が使えるのじゃったの。上位魔族であれば珍しいではないが、人族で使える者には初めて會ったのじゃ」

「そこら辺は々とあってね」

まさか、自分で考えて『創った』とも説明するわけにもいかず、カインは言葉を濁す。

その後も雑談は続き、いい時間になったので解散となった。

カインはダルメシアに後のことをお願いし、自分の泊まっている宿へと転移しベッドの中へ潛り込む。

「そういえば、ダルメシアにリザベートの事聞いてる途中だったな。また今度聞けばいいか……」

ダルメシアの心労など気にしていないカインは、次の日の議會に向けて眠りにつくのであった。

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いつもありがとうございます。

結局のリザベート正は……ってじですね。

次巻の作業含め頑張っております。

よろしくお願いいたします。

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