《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十話 出立
出立當日、壯年の議員の一人が護衛を伴って、カインの宿泊している宿へと現れた。
応接室もない宿であるので、まだ人がいない食堂を借りて向かいあって座る。
「これが賠償金の白金貨二十枚になる。この度はこの國の議員が、いや、元議員がご迷を掛けた」
カインはテーブルに置かれた豪華に仕上げられた箱を開けると、そこには白金貨二十枚が綺麗に並べられていた。
「確かにけ取りました」
カインは蓋を閉じると、議員は一枚の羊皮紙を取り出し広げた。
「では、け取ったサインをいただけるか」
カインは羊皮紙に書かれている容を読み、問題ないと確認するとサインを書き込んでいく。
「これで問題ない。議會の方には私の方から提出しておこう。それにしてもまったく……王國と問題を起こせばどうなるかわかるだろうに……」
議員は愚癡を言いながら、カインから羊皮紙をけ取ると、中を確認し丸めて筒にれると、護衛の一人に手渡した。
「それでは失禮する。今日、この街を出立すると聞いた。道中気をつけてくれ。それなりの大金を渡した事になるからな。まぁSランクの冒険者に喧嘩を売る馬鹿な奴らはいないと思うが……」
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これ以上はイルスティン共和國としても問題があったら庇い切れるものではない。
商業國家として客先に喧嘩を売る馬鹿な者はいないと考えているが、白金貨二十枚は相當な金額となる。
狙われないとは言い切れるものではなかった。
議員と護衛たちを見送ったカインは白金貨のった箱を早々にアイテムボックスへと仕舞い込む。
そして部屋に戻り出立の準備を行った。
実際には荷は全てアイテムボックスにっており、部屋の掃除を魔法を使って綺麗にしただけだったが。
◇◇◇
宿の前には馬車が何臺も並んでいた。生徒たちは各自乗り込む馬車へ荷を積んでいく。
帰りの日程は、まずはガザールへ向かい、そこで一泊した後、イルスティン共和國を出國し、テレンザの街へと向かう。
帰路はドリントルの街に寄らずにテレンザから直接王都へと帰る日程となっている。
生徒たちは殘念がっていたが、カインは逆にホッとしていた。
ドリントルの街には闘技場から連れてきたリザベートも滯在しており、屋敷にいたら確実に顔を合わせる事になる。
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テレスティアやシルクに事を説明するのに、また話がこじれる可能があり、カインとしては直接王都に戻れることに安心していた。
荷の積み込みが終わり、生徒たちは各自の馬車へと乗り込んでいく。
カインは行きと同様にテレスティア、シルク、リルターナと同じ馬車となった。
他の馬車が良いと思っていたが、カインは三人の護衛の役目もある。渋々ながら馬車へと乗り込んだ。
護衛が前後に著き、馬車は出発する。
街をゆっくりと進み、タンバールの街を後にした。
何事もなく馬車は進んで行き、宿場町で一泊し、二日目の夕方にはガザールの街へと到著した。
本來なら、再度ガザールの學園と懇親會の予定があったが、襲撃事件が影響して中止となっていた。
ラルフが襲撃を依頼したのも衝撃的な事件であったが、議會にかけられ奴隷になることが決まり、親のマルフも代議員の失職である。
これ以上の失態はできないと、ダンバールからの圧力により、ガザールの學園側から中止の申しれがあり、同行の教師が承認したのだった。
生徒たちの心を考えても、素直に楽しめないという配慮でもあった。
馬車を降りた生徒たちは、荷を持ち宿屋へとっていき、割り當てられた部屋へと向かう。
ちなみに今回の事件があったおで、自由時間はなくなった。
多のクレームはあるが、事件を考えれば生徒たちも納得するしかない。ましてや上級貴族當主であるカインに向かって本気で文句を言える者など、テレスティア達三人以外にはいなかった。
食事を宿で済ませると、カインは部屋でベッドで橫になりリザベートの今後について考える。
「とりあえず、ダルメシアがいるから何とかなると思うけど、いつまでも屋敷に置いておくのはなぁ……。これから戻ってもいいけど、とりあえず王都に戻るまではお任せだな」
顔を出してもまた何か問題が起こる可能もあり、カインはダルメシアなら何とかしてくれるだろうと期待を込めて眠りにつくのであった。
◇◇◇
ガザールの街を後にし、これから三日掛けて國境の関所へと向かう。途中、移しながらキャンプをしながらの日程になる。
何事もなく一泊目を終え、二日目は森に沿ってできている街道を馬車は進んでいく。
「明日にはもうエスフォート王國の國境ですね。長いようであっという間だった気がする」
「確かにね。まぁカインくんが一番忙しそうだったけどね」
シルクは笑みを浮かべながらウインクする。闘技場のことを話すわけにもいかずカインは苦笑した。
「カイン様、いくらカイン様が強いとはいえ、無茶をして怪我などしたらダメですからね」
し頬を膨らませながら怒るテレスティアにカインは頬を緩めて頷いた。
「それにしても――――あっ……」
カインはそこで言葉を止めた。そして、いきなり馬車の扉を開けて飛び降りた。
馬車を飛び降りたカインは、クロードに向けてぶ。
「クロードさんっ! 襲撃があるかもっ!」
カインのびに先頭を進んでいたクロードが全に停止指示を出して、馬をりカインの元へと向かった。
「カイン……襲撃か?」
「はい、もしかしたらそうかもしれません。まだ距離はあるので、実際に見ないと何とも言えませんが」
二人の會話に者臺で聞いていた従者達は顔を引攣らせる。
護衛の冒険者は合計八人。クロード、リナ、ミリィ、ニーナの一組と、Bランクの冒険者パーティー四人である。それと騎士が四人ついて、戦力としては十二人になる。
「全員馬車をまとめてくれ。襲撃があるかもしれないっ!」
クロードの言葉に、者達は馬をり馬車を街道に並べていく。生徒たちは何かと顔を出すが、教師から馬車にいるように指示された。
「カイン、襲撃というのは本當か……?」
カインとクロードの會話のに一人の教師がってきた。
「多分、襲撃かと。実際は見てみないとわかりませんが。まだ距離はありますが普通の人數じゃなさそうなので……」
「カイン、どれだけきそうだ?」
その言葉に教師は唾を飲み込む。
「……多分、二百人以上……それくらいいると思います」
「?! ……何だとっ!?」
「カイン、マジか……」
クロードは顔を引攣らせ、教師は絶句である。
護衛は騎士を含めても十二人。対する相手は二百人以上。
聞くだけで教師の顔には絶が浮かぶ。
「……他の生徒たちはどうする……?」
「何かあって怪我されても困るから、馬車から降りてもらって僕がこれから出す“”に乗っててもらえれば安全かと」
「カイン、お前、またとんでもないを出すつもりじゃないだろうな……?」
「いやいや、ただの乗りですよ。先生には生徒たちの導をしてもらってもいいですか?」
「……わかった。戦力にはなれそうにないのでな。すぐに取り掛かる」
教師は走って行き、各馬車へ生徒に馬車から降りるように伝えていく。
「では、ここに」
カインはし離れた場所に、アイテムボックスから乗りを取り出した。
見た目はーー護送車。
バスのような形で全が金屬で覆われており、窓は明なガラスに鉄のメッシュで覆われている。
「カイン……これは一……?」
ポカンと口を開けたクロードにカインは説明する。
「本當は捕まえた人に逃げられないようにするなんですけどね……。逆にここの中は安全ですから。質化して剣では傷すらつけられないし、魔法防もされているので、問題ないかなと。勿論一応自走も出來ますよ。全員乗っても席は十分確保してますし」
自信満々に言うカインにクロードは呆れるしかない。
ミリィとニーナは実際に目の前で見ているので、カインの非常識さは理解しているが、クロードやリサは強いのは理解しているが、ここまで非常識だとは理解していなかった。
それは、教師や生徒たちも同じである。どこから取り出したかわからない金屬の塊がいきなり目の前に現れたのだ。
「カイン様、またそんな非常識なを……」
「カインくん、これ大きいね!」
テレスティアは呆れ、シルクは喜び、リルターナは絶句である。
「それより早く乗り込んで! もうすぐ見えるはず」
生徒や者、教師達は順番に乗り込んでいく。
「……見えてきた」
カインの指差す方に、土埃を巻き上げエスフォート王國の一行に向かう集団がみえてきたのだった。
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