《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十一話 襲撃者の末路

エスフォート王國一行に向けて駆けてくる騎馬が次第に近づいていく。

クロード達護衛の者は最背後に集まり、護衛騎士は生徒や教師が乗り込んだバスを守るように立つ。

勿論カインは王國、いやこの世界で一番の強者である。

クロード達と伴って向かってくる騎馬を迎える為に冒険者達と並んで立つ。

「それにしても襲撃とはな。馬鹿なことを考えるやつもいるもんだ」

「まぁ、こっちには最終兵カインがいるしね」

クロードも自信満々に剣を構え、リサも杖を構える。ミリィとニーナもそれぞれの武を持ち構える。

――そして一行の前でその騎馬達は止まった。

その者達は私兵、冒険者だけでなく、いかにも裏の世界にいるであろうという者までいる。

二百人以上がそれぞれの武を抜き、いつでも戦闘が行える狀態で構える中、そこから一人の男が出てきた。

にやりと笑みを浮かべた男はマルフ・バンデーガだった。

「シルフォードもいるか。これは丁度いい。お主のせいでわしの貯め込んでいた財産の大半を失った。を以て返してもらわないといけないからな」

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「こいつらを処分したら、達は好きにしていいんだよな?」

「王たちは駄目だぞ。あれは奴隷にしたら高く売れるだろう? 他の奴らは好きにしていいぞ。だが、あの銀髪の小僧だけは確実に殺せ」

「あぁ、それは分かっている」

闇ギルドであろう黒盡くめの男とマルフの會話にカインはため息をつく。

同じようにクロード達四人も大きくため息をついた。しかし、カインの事をあまり知らない二人のBランク冒険者は、張しながらもクロードに問いかけた。

「クロードさん、こっちはこれだけの人數だがどうするんだ!?」

不安そうに問いかけた冒険者にクロードは歯を見せて笑う。

「全く問題ないぞ。というか、カインがいれば俺たちも必要ないからな」

クロードの答えに、冒険者は驚き、カインは苦笑する。

「?! カインってその生徒か? 小僧一人でどうにかなる人數じゃないだろ」

「いや、本気を出せば……俺たちが敵になってもきっと瞬殺されるだろうぜ。Sランク冒険者様だしな」

「え、Sランクだってっ!? マジかよ。それなら……」

普通に考えたら、この人數相手にするのは難しい。確実に生きては殘れないと覚悟をしていた冒険者であったが、クロードの余裕にホッとで下ろす。

カイン達が話している間、マルフ達は囲うようにいていたが、襲ってくる様子は見せなかった。

カインとマルフの視線が差すると、マルフはニヤリと笑った。

それと同時に背後からは、騎馬の駆ける音が聞こえてくる。咄嗟に探査サーチを使うと、背後からも數百にも及ぶ人の反応があった。

「どうやら間に合ったようだな」

マルフはニヤリと笑いながら呟いた。

「クロードさん、後ろからも敵が……數百はいるかと」

「何っ!? カイン……どうする?」

クロードも前後から挾まれるとは思っていなかったようで、余裕の表は消えていった。

「とりあえず、後ろは僕が対処してきます。その間、ここを死守してください」

「それなら大丈夫だな。ここは任せておけ」

クロードの言葉に頷き、カインは踵を返す。

「あ、そうだ。これだけやっておきますね」

カインはそう言うと、剣を抜き一振りする。

それだけで、地面には二メートルほどの幅で二十メートル以上に渡って裂け目ができた。

「「「「…………」」」」

クロードやリサ、ミリィ達、そして相手側も唖然とする。

たった一振り。

それだけのこの威力があるのだ。

「あとはお願いします」

カインは一言を殘し、背後へと駆けていった。

「やっぱりカインはとんでもねーな。よし、リサ、ニーナ。ここを死守するぞ」

六人の冒険者は敵対する相手に視線を送り、構えたののであった。

◇◇◇

カインは一人で駆けてきた兵士達を出迎えた。

護送車の護衛をしていた騎士達は、その兵士の鎧を見てし安堵の表をする。

しかし、カインの一言で脆くも崩れることになった。

「あれは、多分敵です。気を抜かないように。他のみんなを頼みますね」

「はい、命を賭けても殿下たちをお守りします」

カインは頷くと、一人で先頭に立ち、向かってくる兵士たちを出迎えた。

その先頭には見覚えがある顔があった。

「おぉ、シルフォード卿、ご無事であったか」

先頭を駆けてきたのはテレンザの領主である、バルド子爵であった。

「えぇ、護衛が今対峙してます。それにしても、何故この場所へ……? ここはイルスティン共和國の領地でしょう。それにしてもなんで僕たちが襲われていることを?」

「……それは、とある報筋から、とだけ。それで兵士を集め王殿下を含め、救出に向かうために駆けてきたのだ」

救援にきた兵士たちは三百人近くいるだろうか。

冒険者と見けられる者はおらず、兵士とあとどこから見ても裏世界にいるであろう風貌の者が見けられた。

「……そうですか。では、救出のために、なぜ――闇ギルドのメンバーがいるのでしょう?」

カインの一言で、兵士たちに張が走った。そしてバルド子爵はニヤリと笑みを浮かべた。

「フッフッフ。やはり気付かれたか。そうよ。この兵士達は――――お主を討つために集めたのだ。シルフォード卿、お主の命は貰いける。王殿下たちは私たちに任せて貰えばいい。いい値段の奴隷になるだろうよ」

豹変した態度のバルドにカインはため息をつく。

「マルフとつながっていたわけですね。貴方の上のコルジーノ侯爵もこの件は知っていると……」

「勿論だ。お主の首を持ち帰らんといけないからな」

(コルジーノもか……完全な反だな……。とりあえずクロードさんを助けないといけないから……)

カインはこの後について考えていく。

「そうですか……。これは完全にエスフォート王國に対しての反としてけ止めていいですね。それでは僕も容赦なくやらせていただきます」

「一人で何ができるのだ。これだけの人數を相手に……」

カインはその言葉を待たずに、地面に手を當て魔力を流していく。

『落としアースフォール』

その瞬間、バルド子爵を含む兵士達のいた場所が、地震のように揺れ一気に沈んでいく。

直徑にして五十メートルほどであろうか、円形に沈んだ地面の深さは十メートルにも達していた。

「これは何だっ!?」

「ここから出せっ!!」

カインは上から覗くと、憤慨する兵士達がんでいた。

「とりあえず後で相手するから、そこでおとなしくしておいて」

カインは、護送車の護衛をしている騎士に聲をかける。

「多分出てこれないと思うけど、もし出てきたら対処を頼む。合図をくれれば駆けつけるから」

「は、はいっ。わかりました」

「では、頼んだよ。僕はあっちの相手をしにいってくる」

カインはすぐにクロードたちの方へと駆けていった。

殘された護衛や、護送車から心配そうな表をしながら眺めていた生徒と教師たちは、その非常識さに唖然としていた。

「ねぇ、シルク。普通にあんなことができるの……?」

「テレス。カインくんしか無理だと思うよ」

護送車から見えるのは、いきなり現れ兵士達を飲み込んだ大と、底からぶ聲だけだった。

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