《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十二話 新しく現れた者

「おまたせしましたっ」

カインが戻ってきた時にはすでに戦闘は始まっていた。

裂け目を避けるように、襲撃者たちは二手に分かれている。

クロード、リサで分かれ、もう一方をミリィ、ニーナ、そして他二名の冒険者。

リサとニーナが分かれて魔法を放つことによって、襲撃者たちは近づくことも出來ない狀態であった。

それでも魔法の合間に近づく者はクロードの剣の餌食となっていた。

「おせぇぞ! それであっちはどうなった?」

「とりあえず、全員出てこれないようにしてますから、後で対処します」

「あっちも敵だったか……」

「はい、バルド子爵の手勢でした」

「マジかよ……」

剣を振るいながら口を開くクロードに、カインは自分の剣を抜きながら答える。

「わかった、まずこいつらをやっちまうぞ」

「はいっ! とりあえず……」

同じようにカインは地面に手を當てる。

『落としアースフォール』

バルド子爵たちと同じように、襲撃者達を飲み込むように地面は沈んでいく。

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あっという間に全員がの下に閉じ込められた。

「「「「…………」」」」

クロード達も口をポカンと半開きにし、そしてカインに視線を送る。

「取り敢えず、こんなじで……」

しかし、クロードやミリィ達からの冷たい視線がカインを突き刺す。

他二人の冒険者は、何が起きたのかわからない狀態であった。

突如としてできたに閉じ込められた襲撃者たちも、同じように唖然としていた。

「……規格外のSランクなのが良くわかったよ……」

クロードは頭を掻きながら苦笑し、の中に閉じ込められている襲撃者たちを見下ろす。

「それで、どうするんだ? こいつら……」

の中からクロードに向かって火球が飛んでくるが、一瞬にして斬り捨てる。

「しつこいから全部燃やす?」

ニーナが恐ろしい事を言うが、カインは首を橫に振る。

「取り敢えず國に引き取って貰おうかと。このままだと戦爭になりますからね……」

「だよな……。俺たちじゃ荷が重すぎる」

「全部灰にするとか?」

「ニーナ!」

手の平に炎を浮かべるニーナに、ミリィが止めにかかる。

そんな時、カインの探査サーチにまた新しい集団が、エスフォート王國側から向かっているのをじた。

カインは王國側を眺めながら呟く。

「もしかして……また新手がきたかも」

カインの言葉に全員が耳を傾ける。

「ここは私たちで見てるわ。クロード、カインと向かって」

「おう、カイン行くぞ」

「はいっ」

リサの言葉に二人は頷き、バルド子爵が閉じ込められている方向へと向かう。

カインたちに向かう集団は、先頭に一騎が駆け、それを追うように二十人ほどが向かってきていた。

しかし、その先頭を見てカインは頬を緩める。

先頭を走っていたのは、白銀の鎧、緑の髪を靡かせている、ティファーナであった。

バルド子爵達が閉じ込められている大の前で馬を止めると、ティファーナは上から見下ろしてため息をつく。

そして、大を大回りするようにカインの近くへと駆け寄って、馬から下りると勢いよくカインに飛びついた。

「カイン、會いたかったぞっ! それにしても……これはなんだ?」

視線を大の下で何もできずにいるバルド子爵達に一度視線を送り、カインに質問する

「両方から襲撃をけたので、取り敢えず閉じ込めておこうかと……」

クロードも閉じ込められた兵士達を見下ろし、ため息をつく。

「反対側もこんなじだ。全員閉じ込められている」

「そ、そうか……。やはり私の婚約者なだけあるな」

カインの頭をでながら答えるティファーナに苦笑しながらもカインは頷く。

「それで……ティファーナはなぜここに……?」

思い出したかのようにティファーナは口を開く。

「そうだっ! バルド子爵の企みの報を摑んで、すぐに王城を飛び出したんだ」

(王都を放ったらかして近衛騎士団長が飛び出したらマズイでしょ……)

ティファーナから王都でカイン達の襲撃の事を知り、エリック公爵だけに伝えて近衛騎士団を半分に分けて、王都を出たということを聞く。

「それでこいつらは……」

「勿論、全員捉えて王都まで運ぶ予定だ」

「反対側の襲撃者はイルスティン共和國の元議員を含めて、闇ギルドもいるみたいです」

「むむ……それでは勝手に王國へ運ぶ事もできないな……」

「取り敢えず國境の砦の監獄に閉じ込めておくのはどうかな?」

悩むティファーナに、カインが提案すると、大きく頷いた。

「そうしよう。しかしバルド子爵は別に話を聞かないとダメだな……」

ティファーナは鋭い視線を大の下で何もできないバルド子爵へと送る。

カイン達が話していると、ティファーナを追いかけてきた近衛騎士団も到著した。

「団長! 速すぎですよっ。いくらカイン様が襲われるからといっても……。ってこれはっ……」

到著した近衛騎士団も、大の中に閉じ込められている襲撃者達を見下ろして唖然とする。

「……流石にこれはないでしょ……」

「だよな……。戦いにもならないぜ、これ……」

「剣でも勝てないけど、魔法も規格外これかよ……」

到著した騎士団も小聲で話し合う。

「よし、まずは全員を捕らえるぞ」

ティファーナの言葉で、全員が剣を抜き戦闘の準備をした後、カインは大の下で何もできないバルド子爵たち襲撃者に向かって聲をかける。

「全員、武を捨ててください。これから全員を捕らえます」

しかし、カインの言葉に武を手放す者などいない。

逆に罵倒する言葉が返ってくる。

「ここに閉じ込められたって、負けた訳じゃないっ!」

兵士たちは口々にするが、その言葉は――一瞬で消えた。

カインの上には、數メートルはあろうかという火の球が浮かんでいる。

「そうですか……なら……」

にやりと笑うカインに、一人が武を投げ捨てると、次々と兵士たちは武を投げ捨てて行く。

全員が武を手放し両手を挙げた。

「ちょっと待ってくれ! 武は捨てたっ! 頼む。それだけは……」

を捨てたことに、カインは頷いて火の球を拡散させると、襲撃者たちもしだけ安堵した表をする。

「それでは、階段を作るので、指示の下、一人ずつ上がってきてください」

カインは大の脇に手をかざし魔法を唱えると、土が盛り上がり、一人が通れる位の階段が出來上がってくる。

誰もがその狀況に息を飲んだ。

「では、バルド子爵、先にあがってくるように」

ティファーナの言葉に、苦蟲を噛み潰した表をしながらも、一歩ずつゆっくりと階段を登る。

そして、階段を登りきる直前に懐から短剣を取り出した。

「こうなったら……無念」

覚悟した表をしたバルド子爵は、剣先を自分に向けて一気に自分の首に突き刺した。

近衛騎士たちは、その様子に驚くが、カインは一気に近づき首から短剣を引き抜き、投げ捨てた後、回復魔法をかける。

「そう簡単に死なれたら困りますよ……」

自死を選んだつもりであったバルド子爵は、首に刺した跡を手でると、傷がふさがっていることに諦めた表をして、そのまま力なく膝をついたのだった。

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