《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十六話 後始末
唖然とするティファーナや衛兵達。
そして剣を鞘に収めたカインはコルジーノだった首を見下ろす。
(なんで邪神に魅られたんだろう……)
そんなとき、予想外の聲がカインにかかった。
『まさか、創造神じじい共の使徒がいるとはね……』
カインは驚きの表をし、その言葉を発した先から距離をとった。
同じようにティファーナや驚きの表をする。衛兵達はし距離があったせいでコルジーノの聲は聞こえてない。
首だけとなったコルジーノは、目を開いたまま口をかす。
『きみ、面白いね。創造神じじいたちの使徒なんてやめて僕の使徒にならないかな……?』
「……斷る。邪神の使徒なんて迷以外の何でもない」
カインの言葉に予想外だったのか、首だけとなったコルジーノは笑みを浮かべた。
『そうか……うん? きみの魂は……。ん? そうか……きみは……あの二人の――――』
その言葉が終わる前にカインは魔法を放ち、コルジーノの首を焼いた。
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そして炎の覆われている中から最後の聲が響き渡った。
『僕の名前はアーロン、昔は遊戯神と名乗っていたよ。また會おう。僕を封印した者達の子孫よ』
それが最後の聲だった。
炎が消えたあとには、コルジーノの首だったは灰となっていた。
「それよりも……」
まだ屋敷は燃えていた。
カインは気持ちを切り替えて水魔法を放ち消火にあたる。水魔法を使える衛兵たちも次々と水魔法を放っていく。
十數分後、カインや衛兵の魔法によって火は全て消え、消火によって発生した白い煙がモクモクとあがっていた。
そして探査サーチを使い、生きている人がいないかを確認していく。
その中で小さいながら二つだけ反応があった。
カインは急いで消火が終わったばかりの建にっていく。
「ちょっとまだ危ない――」
衛兵たちの言葉に耳を貸さず、カインは屋敷に飛び込むと二階まで駆け上がり、目的の部屋の扉を蹴り飛ばす。
そこには腹からを流し、倒れている二人がいた。
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メイドともう一人、コルジーノの嫡男ハビットだった。
カインは二人を擔ぎ上げ、そのまま窓を蹴り破り飛び降りる。
突然二階の窓から人を擔いで飛び降りるカインに衛兵は驚くが、カインは気にした様子もなく二人を地面に寢かせた。
「ちょっと待ってろ……」
『エリアハイヒール』
カインが魔法を掛けると二人の傷口が塞がっていく。
「これで大丈夫だと思うけど……」
カインの魔法が効いたのか、二人の呼吸は穏やかになっていく。
「二人は……?」
後ろからティファーナに聲を掛けられてカインは振り向いた。
「探査サーチで探したけど、生きているのはこの二人だけです。こいつは、嫡男のハビット、同級生……」
正直カインとして助けたのが正解かはわからない。
コルジーノ侯爵の今回の反の手助けをしたのはすでに明白である。
コルジーノ一家については、國王からの裁決となり、場合によっては一家全員死刑もありえる。
その場合は、ハビットも嫡男として責任をとる必要もあった。
(こればかりは陛下に任せるしかないよな……)
助かったバビットと従者は衛兵たちに王城へと運ばれていく。
首のないコルジーノの死骸も同じように白い布に巻かれて運ばれていった。
「カイン、一度王城に戻るぞ。陛下に説明をする必要がある」
「うん、そうだね……。飛び出してきちゃったし」
ティファーナと二人無言で王城へと向かった。
◇◇◇
王城の応接室の一つ。
その中で國王は腕を組み、眉間の皺を寄せ悩んでいた。
ティファーナとカインからの説明を聞くと、信じられないような顔をした。
「まさか……邪神が復活するの……?」
國王の問いにカインは首を橫に振る。
まだ確定ではないので、カインも安易に応えは出せない。
答えを出すにしろ、一度、神達と相談をする必要があった。
「そうか、まだ復活しないのなら安心か。それにしてもカイン、邪神の使徒討伐、ご苦労じゃった」
「そうだね。カインくんが報告のために王都に転移してなければ大変なことになっていたかも」
確かに、カインはコルジーノの隙をついて一気に片をつけたが、コルジーノの宿している魔力は禍々しくそして強力であった。
もし、カインがおらず王都で暴れていたらきっと誰にも止められないであろう。
「詳しいことは生き殘った息子から事を聞くことにしよう。それではイルスティン共和國に対してだ」
カインも思い出したように頷く。
邪神の使徒が出たことで王城を飛び出してしまったので、話は途中であった。
今回の事は、相手國の出方次第では即戦爭となることが誰もがわかっている。
戦爭を避け、平和的に解決するためには擔當を決めなければいけない。
しかも今まではコルジーノが擔當していたのだ。
「イルスティン共和國との渉は私の方でしますね。まずは今回の詳細をまとめてからになると思いますが」
エリック公爵の言葉に國王は頷く。
「うむ、エリック。頼んだぞ」
そしてその日は解散となり、カインは屋敷へと戻る。
次の日より、王城は厳重警備の下、襲撃者たちの尋問が行われていた。
バルド子爵も最初は黙を続けていたが、すでにコルジーノが死亡した事を知るとがっくりと肩を落とししずつ事件のあらましを語り始めた。
同時に行われていたマルフについては、すぐに自供することになった。
◇◇◇
「…………そうか」
事件の詳細がまとめられた書類が、會議室でマグナ宰相によって読み上げられた。
この部屋にいるのは、國王、エリック公爵、マグナ宰相、ティファーナ騎士団長、ダイム副団長である。
國王はカインの父親のガルムもいればと思っていたが、あいにくグラシア領におり、不在であった。
カインが「ちょっと連れてきましょうか?」と聞いてみたが、転移魔法についてはまだ公開するわけにもいかず、不在のまま會議は進められた。
「直接手を下したのはマルフ元議員ですが、コルジーノの指示の下、イルスティン共和國への越境についてはこちらも問われることになるかもしれません。それでも、王殿下含め貴族の子息を不法奴隷にしようとしたことは、こちらの攻める口実になるでしょう」
マグナ宰相の言葉に國王は難しい表をして悩む。
対応を一つでも間違えば確実に戦爭になる。正直カインがいるので一人いれば戦爭は勝てる。
しかしながらカインは未年であり、戦爭が起きたとしても戦地に立たせるわけにもいかない。
エスフォート王國の法律でも、未年者は戦爭に赴くのは止していたのだった。
次々と出される案をまとめていき、それをまとめた書狀をイルスティン共和國の議會へと屆けられることになった。
「うむ、これでいいな。そういえば、カイン。一応戻れるならまだ研修旅行中であろう。テレスたちの護衛は追加しておるが、何かあった時のためにお主も合流していてくれると助かる」
その言葉にカインは自分がまだ帰國中だったことを思い出した。
あと、數日で王都まで帰ってくるであろう生徒達を王都で出迎えたらどう思うのだろうか。
『なぜ、生徒達を見送ったカインが王都で皆を出迎えることが出來るんだ?』
誰もがそう疑問に思うだろう。転移魔法については噂を広めるわけにもいかない。
実質、転移魔法で襲撃者を運んだが、すでに全員の死刑が確定している。
近衛騎士団についても、カインの魔法については箝口令が厳しく敷かれていた。
「そうですね。さくっと合流して一緒に戻ってきます」
「そうしてくれると助かる。お主がいれば何が襲撃してきても無事であろうからのぉ」
「わかりました。では、著替えてからすぐにでも」
カインはその場で転移魔法を唱えた。
なるべく國王から従者に見られる事のないように言われており、特例的に王城での魔法使用許可を貰っている。
カインは屋敷に戻り、制服に著替えたあと、コランとシルビアに一言殘し、その場で転移した。
転移した先は、國境の砦である。
生徒達はすでにエスフォート王國に國しているはずであった。
バルド子爵が治めている街、テレンザへは寄らず、王都に直接戻るかカインの治めるドリントルに寄る予定であった。
カインは一人でエスフォート王國への國するために砦を通る。
いや、その上空を素通りしたと言った方が正解であろう。
そのまま道なりにゆっくりと空を飛び、二時間後、生徒達を乗せた馬車を見つけた。
何事もなさそうに進む馬車に、カインはホッとしその近くへと降り立ったのだった。
◇◇◇◇◇
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