《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第一話 リザベートの正

辺境伯となりドリントル以外の領地を治めることになったカインであったが、実際のところ生活については変わっていない。

すぐに領地が引き渡される訳でもなく、現狀は王都から代や査察が派遣され、街の現狀を調査を行い、結果が出てからカインに引き継がれることになっている。

「これからも忙しくなるよね……」

エリック公爵から學園は自由登校と伝えられているが、カインが學園に登校しなければテレスティアやシルクがへそを曲げるのは目に見えていた。

だからこそできる限り登校しようと心に決めていた。

そんな事を考えながら執務室で書類に目を通していると、扉がノックされた。

許可を出すと部屋にってきたのは、ダルメシアを伴ったリザベートだった。

リザベートはソファに座ると、ダルメシアが紅茶を淹れてそっと目の前におく。

カップを口に運び、ふぅと一息ついてから口を開く。

「カイン、妾はそろそろ國へ戻ろうかと思うのじゃ。ここは居心地がいいし、食事も味いから出來ればいたいのじゃが……。さすがに迷をかけることになるからのぉ」

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その言葉を聞き、カインは作業を一度やめ、リザベートの向かいの席に座った。

正直、リザベート一人増えてもたいした出費にはなっていない。

ダルメシアが気を遣い対応し、ルーラやローラと楽しんでいるので特に気にもしていなかった。

しかし、イルスティン共和國からこの街へ來てそれなりの日數も経っている。

イルスティン共和國での生活を含めると長い時間、自分の國を空けていることになる。

「……そうだよね。ご両親も心配すると思うし一度帰った方がいいよね」

カインの言葉にリザベートは軽く頷くが、その表は苦蟲を噛みつぶしたようである。

「……それなんじゃがな……、カインも一緒に行ってくれないかのぉ」

そして後ろで控えていたダルメシアも前に出て頭を深々と下げる。

「カイン様、出來ればリザベート様にご助力いただければ……」

カインからすればダルメシアが、こうして頭を下げ願い出ることは今までになかった。

それだけに違和があった。

「――詳しいことを教えてもらってもいいかな?」

カインも魔族の國に行くのはやぶさかではない。

セトという魔王も知っている。セトの國には訪れたことはないが、行ってみたいという気持ちもある。

しかも今後、辺境伯として忙しい時間を過ごすことはわかっており、行けるなら今しかないと考えた。

「――その事について説明しなければならんのぉ。妾がまず國を出た理由についてじゃが――――」

リザベートから國を出た理由が説明されていく。

兄弟がおり、兄がいるのだが、その兄と仲が良くないこと。

二人きりの兄妹であり、どちらかが國を継ぐことになっているが、兄は自分が継ぐのを絶対的にするために、自分の事を他の國の魔王で嫁がせようと畫策していること。

しかも嫁がせようと思っている相手が、年もかなり離れていて妻が何人もいること。

それが嫌で國を出たこと。

「あれ、そういえば魔族って一夫一妻じゃなかったっけ……?」

以前、セトから一夫一妻制だと聞いていた。

「カイン様、魔族も國によって異なるのです。一夫一妻制なのは魔族の國でも二つだけです。ちなみにリザベート様の皇國は一夫多妻制を敷いております」

ダルメシアからの説明にカインは頷く。

「本來ならば戻りたくはないのじゃがな……。無斷で國を出てきておるのじゃ。それでのぉ……」

リザベートはしだけ表を暗くする。

「そのあとは私から。実はカイン様がリザベート様を助けた闘技場に変裝した魔族もおられたようで……。その者がすぐに皇國へと戻り、報告をしたらしいのです。それで――――皇國の上層部が……」

「もしかしてこちらに探しにくると……?」

驚くカインにリザベートは申し訳なさそうに頷いた。

とはいえ一人のためにそこまで本格的に探すのかとカインはそう思った。

「カイン様、リザベート様の國はベネシトス皇國といって魔族でも他の國家とは全く違います。他の國は実力によって『魔王』を名乗ることができます。しかし、ベネシトス皇國だけは、代々皇國の筋のみが優先され、そのトップは『魔皇帝』と名乗り、各國の魔王を名乗ることを認める権限も持っております。そして皇國だけは數千年と言われているくらいに長い歴史があります」

ダルメシアの説明にカインは大きくため息をつく。

(それだけの長い歴史……國王、いや、前世でいう天皇家と同じということか……。だから最初に會った時にダルメシアが膝までついたのか……)

しかし、この場で話し合っても進展はしない。

「――そうだ。セトを呼ぼう!」

一國の長であるセトを呼べば、もうし魔族の事が摑めるかもしれないとカインは召喚魔法を唱えた。

魔方陣とともにセトが現れる。

久々に喚んだセトであったが、その表はいつもと違っていた。

「カイン様、ご無沙汰しております。しかしながら今は全ての魔族にとって一大事なのです」

現れたセトはこれから戦闘でもあるかのように、鬼気迫っていた。

「こっちも一大事なんだ。それでセトに相談しようと思ってね……」

カインの言葉に、セトはし考え大きく頷いた。

「それなら私からも相談が……。人族にとっても一大事――――」

セトがカインの向かいに座っているリザベートに視線を送り、――そのまま固まった。

これでもかというほど大きく目を見開き、驚きの表をする。

そして、ギコギコという音が鳴りそうな機械的なきでカインに視線を送った。

「な、な、なんでリザベート様がここに……?」

揺したセトをカインは隣に座るように促すが、セトはその場で膝をつき頭を下げた。

「リザベート様、ご機嫌麗しく。ご無沙汰しております……」

セトの態度に、リザベートは皇らしく笑みを浮かべた。

「セト様、久しいのぉ。セト様の魔王就任の時以來かのぉ」

「は、はいっ! それにしても、なぜここに……? 今、魔族一丸となってリザベート様のことを……」

「セト様、まずは席に座るのじゃ。説明をするからのぉ……」

セトはリザベートの言葉に頷き、カインの隣に座る。

そしてリザベートからは、皇國を出てからのことが説明され、その一言一句にセトは驚き、そして怒りを浮かべ、最後はホッとした表をする。

説明が終わるとセトは疲れ果てたように背もたれに寄りかかる。

「それで……セトの方の一大事って……?」

カインの言葉にセトは思い出したように口を開く。

「実は、魔族國家全てが……人族國家全てに――――戦爭を布告することになりました……」

セトの口から衝撃的な言葉が飛び出したのだった。

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