《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第五話 カインの実力

カインたち謁見の場にいた者は、海岸で海に浮かぶ無人島に視線を送っていた。

「カイン様、この疑っている者たちに実力を見せてやってください」

セトは笑いながら言うが、カインは苦笑しかできない。

そしてため息を一つ吐き、カインは海に浮かぶ島へと視線を送った。

時はし遡る。

謁見の場でセトが放った言葉により、混が起きた。

一人の年が魔族の國を滅ぼすことができる。

誰が聞いても衝撃的、そして馬鹿げた言葉だった。

たとえ魔王であるセトだとしても無理なことである。

それを簡単に言ったセトには批判の言葉が多くあがった。

「証拠を見せよう。それで納得できるはずだ」

セト、リザベートを始め上級貴族たちは馬車に乗り、二時間ほどかけて海岸へとたどり著いた。

誰もが「無駄なことを……」と呟きながら、セトの後をついていく。

海岸には簡単な天幕が張られ、貴族たちのために観客席が簡易的ながらすでに用意されていた。

カインはジト目でセトに視線を送るが、企みがバレた時のように焦ったように視線を外す。

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最初からこうなる事が分かっていたかのように。

「まぁ、カイン様、ここでババーンと実力を見せてもらえればあいつらも何も言わなくなりますし」

二人だけ席を外したことで、すでに『カイン殿』ではなく、『カイン様』に戻っていることにカインはため息をつく。

「あそこの島目掛けて魔法を放てばいいと……」

「そうです。あそこは無人島ですし、いるのは魔だけですから。しかも放置しておくと、魔がこちらの島へと渡ってくるんですよ」

海岸から一キロほど離れた場所に直徑二キロほどの島。

その島には魔だけ棲んでおり、時より海を渡り街へと向かってくることで、門には常に衛兵を配置し晝夜監視させているとセトはカインに説明していく。

「――わかった。あの島がどうなってもいいって事だよね」

「えぇ、構いません。あの島の真ん中にドカーンと魔法を撃ってもらえれば」

観客の上級貴族たちも、カインの実力を知るために今か今かと待っている。

一度リザベートに視線を送ると、カインをずっと見ていたのか視線が差する。

にっこりと微笑むリザベートに、カインは口を緩める。

「まぁやってみるよ……」

カインはそのまま魔法を使い、を浮かせ空へと舞い上がる。

そして海岸と島の中間地點に浮かぶと魔力を練っていく。

「ここなら帝級でも問題ないかな……」

使う魔法は帝級魔法。

カインは今までに使ったことはない。

使う機會がなかったというのが正解かもしれない。

ユウヤからもらった資料や、魔法神レノからもらった魔法一覧を読し、使い方も理解している。

『星の裁きスタージャッジメント』

両手を上げ一言唱える。

カインの両手からは尋常でない魔力量が放たれる。

それと同時に空高くに現れる、――隕石。

それは流星群とは違う、ただ一つだけの巖の塊。

ただし、大きさは比類ない程大きく、微かに見えるその巖の塊は島へと一直線に向かう。

しかしまだ空高くにある巨大な巖は観客席からは見えることはなかった。

見學をしている上級貴族でも気づく者はない。

しかし、カインの魔力量に気づいた者もなからずおり、恐怖に震えるか、椅子から崩れ落ちる者もいた。

そして現れた――たったひとつだけの巖の塊。

近くなるにつれ、その巖の塊によってできた影。

カインの魔力に気づいていない観客たちは、いきなり自分たちのいる場所が日になったことに不思議に思い、空を見上げた。

――――そして全員が固まった。

視界に移る巖の塊。それは目の前にある無人島と変わりない大きさ。

固まっている観客たちの前で、そのまま無人島へ直撃した。

響き渡る振と衝突音。大地震とも言えるほどの揺れだったが、カインは空中に浮いているために衝撃音だけが響き渡る。

そして衝突と當時に発生した、大津波。

「これはヤバイか……」

海岸へ押し寄せる高さ數十メートルの大津波。

このまま海岸まで到達したら、いくら魔族といえ被害は免れない。

カインは咄嗟に別の魔法を唱えると、海水を壁のよう立ち上がり、津波の衝撃を打ち消していく。

津波が落ち著くと、カインはため息をつき魔法を解除した。

そうして見えたのは、塵があがって何も見えない無人島。

カインは風魔法を使い、その塵を飛ばしていく。

そして見えてきたのは、元の無人島より、大きな巖山がオブジェとなった無人島。

木々は全て吹き飛び、大きな巖山が海に突き刺さった狀態なのが伺える。

想像以上の大きさにカインは不味かったかなと思いながらセトへと視線を送った。

しかし意外にもセトは笑みを浮かべている。

「どうだ? これがカイン殿の力だ。魔法一発だけでこの威力。これが街に放たれたらどうなると思う? そしてあの津波に対しての対応力。あの大規模な津波を防いでも、全く疲れを見せていない魔力量。再度問う。カイン殿と戦って勝てる自信がある者は前に出てくれ」

セトの言葉に誰も反論するものはいない。

中には頭を抱えて倒れている者や、気絶している者もいた。

靜まり返ったその中で、パチパチパチと一人が拍手を送る。

「これはいいものが見れたのじゃ。やはりカインと來て正解じゃったのぉ」

唖然とした表をした上級貴族の中、リザベートは一人でケラケラと笑っていた。

そして、口角を上げて言葉を続ける。

「これで戦爭は止められるのじゃ」

リザベートの言葉に、セト一人だけ大きく頷いたのだった。

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