《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第九話 皇都到著

事前に連絡が伝わっていたのか、帝都のり口で馬車を止めることなく門をくぐり抜けた。

そして道の両側には帝都の住民が見渡す限りに埋もれていた。

帰還ということが伝わっていたのかもしれない。

歓待の聲が街中から高らかに上がっていた。

衛兵が住民を抑えるようにしていて、その真ん中を馬車は進んでいく。

「それにしてもすごい歓迎だね……」

「うーむ。長い間帝都を留守にしていたからかも……。こうまでされると妾も恥ずかしいかもしれん」

苦笑しながらも、笑みを浮かべたリザベートは小窓から顔を出し住民に向かって手を振った。

カインもつられて窓の外に向かって手を振る。正直、カインは自分の歓迎だとは思っていないが、それでも同席しているとして何もしないのはと思っていたからだ。

歓待の聲をけながらも馬車は進み、中央にそびえ立つ城への門を潛る。

門の両側に立っているのも、立派な角を生やした魔族であり、人族がこの皇都にるのは初であった。

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城の前で馬車が止まると、扉が開かれ、カインが馬車を下りる。

続いて下りるリザベートに手を差しべると、その手を取り優雅に馬車から下りた。

向けられるのは、リザベートの帰還の歓迎の視線と、人族であるカインに向けての敵意であった。

であったが、リザベートへの敵意についてもカインはじていた。

(やはり敵意がすごいな……。まぁ開戦派もここには多くいるし仕方ないか……。リザもじているだろうな)

殺気を全方位に向けて黙らすことも出來るカインであったが、最初から敵対行をとってはエスフォート王國の代表として訪れている以上、恥でしかない。

である以上、紳士的にいかなければならないと自覚していたし、國王からも念押しされていた。

実際には「戦爭になったら全部ひっくり返してこい」などと無茶な要もあったのだが。

向けられた敵意をスルーしながらも、カインはリザベートに視線を向け微笑んだ。

続いて下りてきたセトもリザベートの隣に立ち、ゆっくりと進む。

城のり口には多くの貴族と思われる者たちや従者が並んでいた。

その中の一人が前に出てきた。一際豪華な服裝で、角もリザベートと同じ五本生えている。

きっと、リザベートが言っていた皇太子だろうとカインは推測した。

「リザ、お帰り。無事に帰ってこれたね、僕も嬉しいよ」

「お兄様、ご心配おかけして申し訳ござません。無事に帰って參りました」

リザベートは優雅にスカートの裾を広げ、頭を下げて挨拶をする。

「まぁ、ここで話していても仕方ない。客人もいるようだしな。セト殿も久しいな」

「ご無沙汰しております、皇太子。お元気そうで何よりでございます」

いつもと違ったセトの態度に、カインはし驚きながらも表に出さないようにし、案の後をついていく。

城は魔族のいくつかの國の中心であるべく、しく裝飾されており、派手ではないがその高級が伺えた。

廊下を歩き、一つの応接室へと通される。

カインは案された席に座った。

セトと隣同士に座り、対面には皇太子とリザベートが座る。

ダルメシアはカインの後ろに控えるように立っている。

「改めて挨拶をしよう。私はこのベネシトス魔皇國の皇太子である、ログシア・ヴァン・ベネシトスだ。リザが世話になってそうだね」

「初めまして、エスフォート王國で辺境伯を務めております、カイン・フォン・シルフォード・ドリントルです」

カインの紹介にしだけログシアは驚きの表をした。

カインも長したとはいえ、まだ十四歳である。人も迎えていない年が、辺境伯とし一帯を治めているとしれば、カインを知らない者からすれば驚くのも仕方なかった。

「その年で辺境伯を務めるとは、さぞかし優秀なのであろうな」

「そうなのじゃ。カインの住まいはこの城より居心地がいいぞ。料理も旨いしのぉ。出來れば離れたくなかったのじゃ」

ログシアの答えにリザベートが上書きするように説明をする。

しかし、その説明にログシアは眉間にしわを寄せ、リザベートに鋭い視線を送る。

「……それでは、リザはシルフォード伯の住まいにずっといたと……?」

「そうなのじゃ。奴隷に落とされ、危なかったところをカインに助けてもらってからはずっと一緒にいたのじゃ」

「…………」

ログシアの表が次第に険しくなっていった。

としての立場では、未婚でありながら、いくら未年とはいえ、獨のところにずっといたと知られれば、何かしらの弊害はある。

特にログシアは自分の地位を磐石にするために、自分を推している魔王のところへリザベートを嫁に出すつもりでいた。

「リザ、リザは私の知っている魔王後援者のところに嫁ぐ予定なんだ。いくら保護してもらったからとはいえ、獨のところにずっと居座るのは困るのだが……」

「――――あんな奴のところに妾は嫁ぐつもりはないのじゃ。妾はもう相手は決めておる。このカインに嫁ぐつもりじゃ。すでに――――求婚もしておるしのぉ」

「なっ!?」

ログシアとリザベートの話をカインとセトは傍観していたが、リザベートの弾発言に、カインは肩を震わせ、セトは疑わしい目でカインに視線を送る。

そしてログシアは大きく目を見開いた後、カインを睨み付けた。

「シルフォード伯、どういうことだ? 事と次第によってはそなたの命では足りなくなるぞ?」

「そう言われても、その回答は保留にさせていただいております。魔族の國々が人族の國に対して戦爭を布告する可能があると聞いております。それを止める説得をするためにこうしてリザベート殿下と同行しているのですから」

あくまでカインは戦爭を止める説得のために魔族の國を訪れている。

個人的で流されるわけにもいかなかった。確かにリザベートは魅力的なであることはカインもわかっている。しかし、婚約者が複數おり、王までいるのだ。

國を無視して勝手に婚約者を増やすことなどできるわけがなかった。

セトは婚姻には歓迎しているが、戦爭には反対である。

人族と戦爭になったら魔族が確実に負けると知っている。

――カインという存在があるのだから。

「ログシア殿下、私の國は戦爭反対を表明することに、貴族一同一致いたしました。そしてシルフォード伯と友誼を結んでいる以上、何があっても人族と戦爭を行うことはありません」

今まで黙っていたセトであったが、真剣な眼差しでログシアに語りかけた。

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