《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十五話 決著

演臺での戦闘を固唾を飲んで見守っていた民衆もログシアが立ち上がったことに驚きの表をしていた。

自分たちの目の前でデニスによってを貫かれていたのだ。即死であったとしてもおかしくない。

しかし服は破れているものの、怪我をしているようには見けられなかった。

ログシアはリザベートに一度視線を送り、大きく頷いた後、演臺の中央に立った。

「皆の者、心配をかけてすまない。私はこうしてカイン卿のおかげで無事だ。まさか魔王の三人が戦爭を企んでいるとは私も思わなかった。いや、わかっていたが気にしないようにしていた。しかし、今回の兇事によって皆もわかったであろう。カイン卿は信頼に足る人族だ。私はこの國の代表としてではなく、個人を持って友誼を結びたいと思う」

ログシアの言葉に民衆の歓聲が湧いた。

カインも民衆の歓迎に笑みを浮かべ、リザベートと目を合わせ頷きあう。

しかし認められない魔王ーーアグスはセトにを押さえつけられながらも片手を元から二人の魔王が飲みこんだ欠片よりも一回り大きな結晶を飲み込む。

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「……絶対にそんなこと認めない。私が魔族を全てまとめるのだ……うぐぐ……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

一際大きなび聲をあげたアグスの管が浮き出て脈を打ち始める。

次第にそのは筋が膨れ上がり、押さえつけていたセトは片手で軽く振り払われる。

「ぐはっ」

セトは勢いよく吹き飛ばされ、がふた回りほど大きくなったアグスはゆっくりと立ち上がった。

「うははははははっ! これだ。これこそが力だっ! 力こそが魔王の象徴! などで語り継がれるべきではない。魔族は力が全てだっ! だからこそワシが全てを治めるの……」

アグスは立ったままそのまま白目をむき意識を失った。

しかし數秒で白目を向いていた表はゆっくりと笑みを浮かべた。

「あーあ、意識を無くしちゃったか。まぁその方が自由にできるからいいんだけど……。うん? 君は……あぁ久々だね。相変わらず創造神じじいたちの使徒をやってるんだ?」

アグスの聲は先程とはまるで違っていた。

三メートルを超えるからは年のような聲が響き渡る。

カインにとってもそれは聞きたくない聲であった。

――コルジーノの時と一緒だと……。

「……まさか、――アーロン……」

カインの言葉にアグスは不敵に笑う。

「一応こう見えても神なんだけどね……」

しかし二人の會話にログシアやリザベートが絶句する。

アグスだと思っていた男はアーロンといい、そして神と名乗っているのだ。

魔族も神の存在は知っているが、神よりも皇族を敬うのが普通であった。しかし皇族として神の事を知っていた。

「……まさか神が降臨なされた……」

ログシアが小聲でつぶやくと、カインは首を橫に振る。

「アーロンは、元々遊戯神だったけど、今は――邪神です」

「じゃ、邪神……?」

ログシアから返ってきた言葉にカインは頷く。そうしてアイテムボックスから取り出した剣をアグスに向けた。

「僕に剣を向けるのかい? これでも今まで以上にくから完全とは言えないけどそれなりに強いよ?」

アグスのを乗っ取ったアーロンは片手をあげるとそこには黒い靄が発生し、次第に剣へと姿を変えていく。

その剣からは禍々しい黒い瘴気が溢れ出ており、カインも眉間にシワを寄せる。

「二人ともこの場から離れて。セトは二人の避難を頼む。あと民衆にも逃げるように」

カインの言葉に三人は頷き、演臺から下りていく。

セトが大きな聲で民衆に逃げるように伝え、その聲に民衆は蜘蛛の巣を散らすように逃げ始めた。

その間、カインとアグスは視線をわしたままきひとつしない。

數分経つと先程まであれだけいた民衆の影は見ない。カインは剣を握り直し剣先をアアグスに向けた。

強化をし、一気にアグスに駆け寄り剣を一閃するが、軽くアグスにけ止められる。鍔迫り合いのまま二人はきを止める。

「ふーん。それなりに強いみたいだね。使徒なだけはある。でも、これくらいじゃ僕を倒すことはできないかな」

軽く剣を振るうと、カインはそのまま投げ出される。

制を整え、著地したカインは今までにないほどに強い敵に思わず苦蟲を噛み潰したように表を歪めた。

さらに魔力を込めていつも以上に能力を向上させたカインであっても、さすがは神と言うべきか全くじずカインの剣に合わせていく。

何合も打ち合うが、その破壊力はとてつもなく風圧で周りの建が崩壊していく程であった。

「……これでもだめか……。どうだけ強いんだよ……」

剣を持つ手に力を込め直し、アグスに挑むが難なく剣を合わされる。

一度後ろへと下がり、どのように攻めるか思考するカインに、アグスは呟いた。

「あぁ……時間切れか……。仕方ない。また會おう。創造神じじいの使徒よ」

その瞬間にアグスの手に持っていた禍々しい剣は――消えた。

先ほどまであった威圧が消えると、アグスは不思議そうにカインに視線を送った。

「……なんだ。俺は――どうしたんだ?」

自分がどうしてここに立っているのかわからず困しているアグスにカインは安堵の息をらす。

「意識がなかったのか……。ならちょうどいい」

カインは一瞬にしてアグスの背後に移すると、首元に一撃を與え意識を奪い取る。

意識のなくなったアグスはそのまま前へと倒れていった。

「……神だけあってやはり強いな……」

意識のないアグスを見下ろしながらカインはそう呟いた。

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