《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十八話 リザベートの思
日を改めて正式に禮をするということでカインは客室に戻ることになった。
「これで役目は終わりかな。短かったけど容は濃いよな……」
魔王三人を無力化し、そのうち二人を反の鎮圧とはいえ殺害までしている。濃いというかやりすぎだと思われるが、あくまで優先されるのは、皇族二人の命であった。
だからこそ反を起こそうとした魔王から二人を守り抜いたカインは、魔人の民衆からは大きな聲援をけるほどに歓迎された。
部屋でゆっくりと休んだ翌日。
カインは呼びに來た従者に案され、昨日打ち合わせをした応接室へと招かれた。
部屋にはログシアとリザベートが並んで座っている。
「おまたせしました。それで要件とは?」
二人の向かいのソファーに座り、呼ばれた要件について尋ねるとログシアは笑みを浮かべた。
「人族と和平を結ぶことが正式に決定したことをまず知らせようかと。それと同時にエスフォート王國に大使館を置きたい。これはお互いの國が連絡をするのに必要になりますから」
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実際に他國の大使館はあることを知っているカインは素直に頷く。リルターナも帝國から留學して貴族街に屋敷を構えているのだ。不思議なことではない。
しかも高位の魔人は転移魔法を使えるので、他國にいても一瞬にして自國へと戻ることができるので問題はない。
「それについては特に問題ないかと思います。正式な場所については王國に戻ってからの決定になると思いますが……」
「とくに問題はない。それで大使なんだがな……」
ログシアはし困した表をしながら、リザベートに視線を送る。
「もちろん妾が大使を務めるのじゃ。他にそんな大役を任せるわけにもいかんしのぉ」
リザベートは笑みを浮かべそう言った。
「こう言って聞かないのだ。もちろん數名派遣する予定でいる。まずはそちらの國も段取りがあるだろう。連絡についてはリザを同行させてもらえないだろうか」
深々と頭を下げるログシアに斷ることも出來ず、カインは渋々ながら了承した。
人選が終わり次第、カインが転移魔法で一度エスフォート王國まで連れて行き、與えられた屋敷へと移することを決めて、カインは先行して國へと戻ることになった。
「もう準備はいいか?」
ログシアからの書狀をけ取ったカインは、リザベートの荷をアイテムボックスに仕舞い、エスフォート王國へと戻ることになった。
リザベートを連れて王城へと向かい謁見をしてもらう予定だ。
「それでは兄様、行ってきます」
カインはリザベートの手を握り転移魔法を唱えた。
その場から消えたカインとリザベートの殘像を眺めてからソファーに深く座り込んだ。
「リザの奴……本気なのか」
一人だけ殘った部屋でログシアは呟いた。
◇◇◇
久々の屋敷に戻ってきたカインは、執務室のソファーに座って待っているようにリザベートに伝え部屋を出る。
王都の屋敷はコランとシルビアの二人に任せてある。ダルメシアも時間がある時に相談に乗ってもらうようにしてあるので特に心配はしていなかった。
廊下を歩き、カインはコランの執務室へと向かった。
扉をノックし、部屋から聲が聞こえると扉を開いて部屋へとる。
「これはカイン様、おかえりなさいませ。お迎えをせずにすみません」
「いいよ、転移魔法で戻ってきてるしね。それよりもお願いがあるんだけど……」
カインは魔族國との同盟が立し、今後、この王都に大使館を置きたい旨を王城に伝えたいことをコランに説明する。
「それではすぐに王城へ聞いて參ります。戻り次第お伝えいたしますので、しの間こちらでゆっくりできますでしょうか? 食事の準備もさせますので」
「うん、よろしく頼むね」
コランは書類整理を一度終わらせて、王城に伝えるために部屋を出て行く。
カインも自分の部屋へと戻った。
謁見は三日後に行われることになった。
カインと打ち合わせをするならば即時に出來たのだが、魔族とはいえ他國の使者として正式な謁見をするために、王都に住む貴族たちも召集をかけるために數日を要する。
カインも辺境伯として正式に召集狀をけ取り、參加することになった。
王城にて謁見までの三日間、リザベートを歓待するために招待をしたのだが本人はカインの屋敷にいると伝え斷ることになった。
「やはりこの屋敷にいるのが一番いいのぉ……」
ドリントルへ転移魔法で移したカインとリザベートは屋敷に與えられている部屋ではなく、カインの執務室で寛いでいた。
「王城で部屋も用意されていたのに、ここでよかったの?」
「王城で堅苦しい生活を送るより、カインと一緒にいたほうが楽しいしのぉ。しかもここは食事も味いのじゃ」
カインがドリントルにいない間、リザベートは暇を見てはドリントルの街を散策し、食べ歩きをしている。念のためにダルメシアにはついてもらっているし、夜には報告をけているが問題を起こすことはなかった。
「正式な謁見が終わるころには屋敷も用意してあると思うし、大使の仕事もしないとね」
〝仕事〟という言葉にし眉を寄せ、嫌そうな表をしたリザベートであったが、魔族と人族の和平の掛け渡しをするという重大任務を擔っている。
遊びではないことはリザベートも重々承知していた。
しかし、リザベートの中の一番大事なことについてはカインに報告はしていない。
ログシアからは再三確認をされたのだが、一度もその信念については折れることはなかった。
「謁見が楽しみじゃのぉ……」
執務をしているカインを橫目に見ながらリザベートは呟いた。
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