「ホント！？　やったよ～っ！」

「じゃあ、まず、――、――、すみません、リンゴを１個ください」

「はいよ～、銀貨１枚と銅貨１枚ね」

「ありがとうございます。――、――、はい、イヴ」

「ありがと、お兄ちゃん！」

そのまま、ロイは右手でトランクを２個重ねてカラカラしながら、左手でリンゴを食べるイヴの手を握って、商人と王都の住民で賑わう商店街を真っ直ぐに進んだ。

余談だが、同じリンゴという概念でも、日本語とこの國の言語は當然違うため、ロイは當たり前だがこの國の言語でリンゴと言った。

「すごいよ！　武屋だよ！」

「そういえば、ボクも剣を習っていたけど、武屋を目にするのは初めてだなぁ」

武屋の窓から中を覗くイヴ。ロイもその後ろから控えめに中を覗いた。

エクスカリバーが例外なだけで、基本的に地方で流通している剣よりも、王都の鍛冶職人が鍛え、王都で売っている剣の方が立派である。

武屋には名匠が鍛えたブロードソード、レイピア、サーベル、フランベルジェ、バスタードソード、クレイモア、ツーハンデッドソードなどが置かれていた。他には盾、槍、弓、そして鎧などが。

そして二人はし移して、隣の店を見た。

十中八九、魔に必要な道、魔作用があるアイテムを置いているアーティファクト・ショップだろう。店では杖や魔力を込めた寶石、のったガラス瓶、書、壺、植、爪や牙などのの一部、そして魔アシストのアーティファクトが売られている。

「そういやイヴ、ボク、まだイヴの魔適を聞いてなかったよね？」

「そうだよ～。わたし、

無屬魔適は７で、

炎は４、

水も４、

風も４、

雷も４、

土も４、

闇は０で、

時と空は２、

そ、し、てっ～～」

にっ、とはにかむイヴ。

ロイが目で続きを促すと――、

「屬魔適は１０だよっ！」

魔適は各々の項目ごとに１０段階評価で高い低いが決まる。

つまり、イヴの屬魔に対する適は最高ランクだった。

「――えっ、本當に？」

「本當だよ！」

まさか兄、しかも天才のと持て囃はやされて、エクスカリバーの使い手に選ばれたロイよりも、妹であるイヴの方に、より優れた魔適があったらしい。

ちなみに、ゴスペルは伝的なモノではなく、兄がゴスペルホルダーだからといって妹もゴスペルホルダーとは限らない。ゴスペルホルダーが生まれるのは１００萬人に１人の確率と言われている。ゆえに、彼らの両親は、イヴにゴスペルホルダーか否かの検査をけさせなかった。

「それにしても――」

再び寄り道をしながら寄宿舎を目指すロイとイヴ。

ロイは辺りを見回しながら、心を弾ませて足をかす。

晝間から繁盛している酒場に、寶石などが持ち込まれている換金所、先ほどの武屋とアーティファクト・ショップ、他には冒険者ギルドの集會所や、宿屋、服屋などもあるではないか。

そして広場に目を向けると、噴水の前で旅蕓人が自分の蕓を披して、そのし離れたところでは遊詩人ぎんゆうしじんがを穏やかに揺らしながら楽を鳴らす。

「ついに、本當にファンタジー世界っぽくなってきたね」

イヴに聞かれないように、けれども心の聲で止めないで、口に出してその実を噛みしめる。

一方でイヴも、ロイが抱いている慨深さとはニュアンスが異なるが、田舎から王都に出てきたという実で、口元がにやけていた。

（正式名稱はロマネスク建築って言うんだろうけど、まぁ、想像どおり、いや、想像以上に西洋風ファンタジーＲＰＧのような街並みだ！）

そのあとも、二人は王都の街を散歩する。

ロイとイヴが寄宿舎に到著したのは、遅めの晝食を食べて、王都に來た記念ということで２人お揃いの羽ペンを買い、お日様が西側に傾き始めたしあとだった。

鉄柵のような扉を開けて、２人は寄宿舎が建つ敷地に足を踏みれた。

「ここが、これからボクたちが暮らす寄宿舎」

思わずで、ロイは震いした。

貴族のお屋敷にも引けを取らない豪奢な口の扉。石造りの建特有の固い質を持った白の壁。寄宿舎を象徴するような鐘の付いた時計塔。そして広々とした庭には天然の芝が広がっていて、二人からし離れたところには、木製のベンチとガーデンテーブルが設置されていた。花壇には來訪者を心地よく迎えさせるために、とりどりの花々が咲いている。

そのような寄宿舎の敷地を、ロイが先導して、その後ろからイヴが付いてくる形で歩く。

「開けるよ、イヴ」

「うんっ」

そして新しい生活、新しい二人の家の扉を開いた。

真っ先に目に飛び込んできたのは――、

「お待ちしておりました、ご主人様、お嬢様！　わたくし、ブラウニー種のメイド、クリスティーナ・ブラウニー・ハローハウスロウと申します。お気軽に、クリス、と、お呼びくださいませ♪　これから、ご主人様とお嬢様のメイドとして、ご辺のお世話をさせていただきますゆえ、どうぞよろしくお願いいたしますっ」