そしてイヴは、ベッドに腰を下ろしたロイの隣に座る。

余談だが、メイドのクリスティーナは立ったままだ。

「さて、詳しいここの規則でございますが、朝食は毎朝６～７時。みなさまで一斉にいただくのではなく、こちらで用意いたしますので、お好きなタイミングで食べていただいてけっこうです。夕食は毎晩７～８時で、食べ方は朝食と同じでございます」

次に、

「浴時間ですが、基本的に朝でも夜でも、お好きな時間に浴室をご使用いただいてもらって大丈夫でございます。時間帯で男子と子が分かれているのではなく、最初から浴室を別々にしてございますゆえ」

続けて、

「夜間の外出は基本的に止でございます。毎日、夜の９時までにはお戻りくださいませ。外泊の場合は、その日の朝までに擔當のメイド、ご主人様とお嬢様の場合はわたくしにお申し付けください」

加えて、

「また、夜間は１１時以降、自室から出るのがご遠慮くださいませ。わたくし個人といたしましては、そのぐらいいいと存じますが、メイド長がうるさいもので……。あっ、ですがお手洗いだけはセーフでございます」

「はは……」

ロイは乾いた笑いしか出せなかった。クリスティーナはメイドにしては々お茶目らしい。

そのクリスティーナは最後に――、

「最後に、ご主人様とお嬢様にはこれを」

「これは？」「うぅん？」

ロイ、次いでイヴの順番に渡したそれは、寶石を中央にはめ込んだ薄い石板だった。

縦に１０ｃｍをし超えるぐらい、橫に５ｃｍをし超えるぐらい、厚さは１ｃｍ未満といったところか。

「ここで暮らす生徒全員に無料で配布されるアーティファクトで、ざっくり申し上げますと、念話、お互いにそれさえ所持していれば離れていても會話ができる優れものでございます」

「す、すごいよ！」

「これはわたくしも常に攜帯しておりますので、ご用命の際には、こちらでわたくしをお呼びくださいませ。無論、これがあれば１１時以降もご兄妹で會話することも可能でございますし、ご主人様にガールフレンドができた時も、これで深夜までイチャイチャできます♪」

「むぅ！　お兄ちゃんはわたしのお兄ちゃんだよ！　ガールフレンドなんて、わたしの許可なく作りませんよ～だ」

「えぇ……ボク、ガールフレンドを作るのにイヴの許可いるの？」

「勿論！　無論！　ゆえに正論！　だよ、お兄ちゃんっ」

ロイは思わず困った表かおをしてしまうが、彼の困り顔をみて、クリスティーナは楽しそうに、しかし手で口元を隠してクスクス笑った。

可い笑顔というとか、の子らしい笑顔というか、さすがに直接年齢を訊くことはできないだろうが、案外、ロイと近い年齢なのかもしれない。

「このアーティファクトの使い方は、本當に魔力を込めて念じるだけでございます。ただ、念話の相手は、一度中央の寶石を、相手のアーティファクトの寶石にかざしたその人に限られますので、お気を付けてください。なお、ご主人様とお嬢様がご到著なされる前に、わたくしが３人のアーティファクトにお互いの寶石をかざしておきましたので、そこだけはご安心を」

「はい」「うんっ」

「ではでは、わたくしはいったん、これで失禮させていただきますが、他に、今の時點でなにかご用命はございますでしょうか？」

「いえ、大丈夫です」

「大丈夫だよ！」

爽やかに言うロイに、元気いっぱいでしいじのイヴ。

それを確認すると、クリスティーナは「失禮いたします」と斷ってから、部屋を出た。

「そういえばさぁ、このアーティファクト、姉さんも持っているのかな？」

「お姉ちゃん？」

「うん、これで念話できるなら姉さんともいつでも話せると思って」

「むっ、わたし、まだ手で數えるぐらいしか、お姉ちゃんと會ってないんだよ……」

そう、ロイとマリアは７歳差で、ロイとイヴは４歳差。ということで、マリアとイヴの年齢差は１１歳もある。事実、イヴが生まれた頃には、マリアは村から王都に旅立っていた。

それに改めて気付いたロイは、イヴの頭を、ポンポン、とでる。

「なら、なるべく早く姉さんに會いに行こうね？　早くお話するために」

「っ、うんっ」

先ほどから２人はベッドに腰をかけっぱなしで、イヴはロイの隣に座っていた。

ロイに頭をなでなでされて、嬉しくなったイヴは、彼のに飛び込んで、ベッドに押し倒したあとに、頬をスリスリさせる。

「お兄ちゃん、優し～い、大好きだよ～♡」

「はいはい、ボクもイヴが大好きだよ」

と、そのようなやり取りが１～２分続いたあと、ふいに、ロイはイヴの肩を摑んで、自分のの上からどかす。そしてイヴをベッドに置いたまま、スッ、と立ち上がった。

「ちょっとお手洗いに行ってくる」

「ハイハイ！　お留守番は任せてよ！」

イヴがそう言って、発育前のをえっへん、と、グーで叩いたので、ロイはお言葉に甘えて彼に留守番を任せて、各階のつきあたりにあるトイレに向かった。

トイレは男共用とはいえ、しっかり鍵が使えるようになっている。

そして今、鍵はかかっていない。

ロイがトイレのドアを開けると――、

「きゃあ……っ」

か細い悲鳴が聞こえた。

「えっ！？」

結果から言うと、トイレの中にの子がっていたのである。

の子は幸いにも用を足したあとで、一番恥ずかしいシーンは見られなかったものの、スカートをめくって、おしりを丸出しにして、下著を履こうとした瞬間だったため、ロイは見てしまう。

白くてぷにっとしたやわらかそうなおしりを。

の子がスカートをめくり過ぎたため、偶然にも視界にったくびれた細いウェストを。

白の素が眩しい健康的で、の子らしい的な太ももを。

そして、微妙に未だ、しだけ濡れている、の子の一番大切な花の楽園を。

「す、すみません……っ！　で、っで、でも、鍵がかかっていなかったです！」

「い、いえ、こちらこそお見苦しいモノを見せてしまいましたね……っ、って、あれ？」

「……んっ？」

２人してお互いの顔を見合う。

このの子。歳は２０歳前後に思える。恥部を見られて赤らんだ頬。潤んだ瞳。恥ずかしくてモジモジ揺らすと。

しかしの子の方も、ロイからを逸らすようにしているクセに、彼のことをチラチラ窺う。

「姉さん？」

「弟くん、ですよね？」