「イヴちゃ～～んっっ！」

「おねえちゃ～～んっっ！」

ひしっ、と抱き合うイヴとマリア。場所はロイの部屋だった。

一先ず落ち著いたあと、ロイは機の前にある椅子に、イヴとマリアはベッドに並んで座った。イヴの子供っぽい黒のツインテールに対して、マリアの大人っぽい黒のストレート。イヴのハツラツそうな紅のツリ目に対して、マリアの穏やかそうな紅のタレ目。対照的なのに、そして２人は數回しか會っていないのに、姉妹、家族とわかるような外見をしていた。

「そろそろいいかな、姉さん」

「うん、どうぞですね」

「どうしてこの寄宿舎に？」

「ズバリ、ここで暮らしているからですね。的には５０７號室で。街から帰ってきておトイレを５階に著くまで我慢しようとしたけど、危険だったから４階のトイレを」

「お姉ちゃん、ここでグーテランド七星団學院の寄宿舎だよ？」

「そうですね。まぁ、要するにわたしもグーテランド七星団學院に在籍しているんです。弟くんとイヴちゃんが中等教育課程なのに対して、わたしは高等教育課程ですけどね♪」

ふと、ロイは思考を前世の記憶に集中させる。

ロイが前世で暮らしていた日本では大學のことを當たり前のように大學と言っていたが、それ以外にも大學は高等教育課程と呼ぶこともある。実際には、そのことを知っている人はかなり多い一方、普段の會話、日常生活の中で大學のことを高等教育課程と言う人はないが。

「ちなみに、姉さんのクラスは？」

「わたしは魔師學部ウィザード學科、クラスはアークウィッチですね。弟くんとイヴちゃんは？」

「ボクは騎士學部アサルトナイト學科、まだ王都にきたばかりだからアレだけど、クラスはナイト」

「わたしは魔師學部ヒーラー學科、クラスはお兄ちゃんと同じく、王都にきたばかりだからアレだけど、駆け出しのヒーラーだよ」

この世界に魔を討伐して経験値を稼ぎ、それを都合よく數値化して、その上、自分の実力までレベルという概念で數値化するシステムはない。そして連するように、レベルアップという概念もなければ、それによる上位職業の開放や、ステータスの向上なんてモノもない。

ロイで言うところのナイト、マリアで言うところのアークウィッチ、イヴで言うところのヒーラー、おまけとしてエルヴィスで言うところのキングダムセイバーは、全て學生時代に専攻していた學部と學科、そして國家試験によって決定される。

國立グーテランド七星団學院にはパブリック・スクールの段階で、生徒は騎士學部と魔師學部、そして後方支援學部のどれかを、自らの意志で選ぶことになる。

さらに――騎士學部には、アサルトナイト學科とガードナイト學科。魔師學部には、ウィザード學科とヒーラー學科。後方支援學部には、支援學科と隠學科と鍛冶學科がある。

アサルトナイト學科に所屬する生徒は、『ナイト』に始まり、試験に合格すれば『ロードナイト』、次の試験に合格すれば『ルーンナイト』、その次の試験に合格すれば『クルセイダー』、最後の試験に合格すれば『キングダムセイバー』になれる。

ガードナイト學科に所屬する生徒は、アサルトナイト學科とルーンナイトまでは一緒で、それ以降、ルーンナイトの次の試験に合格すれば『パラディン』、最後の試験に合格すれば『ロイヤルガード』となれる。

ウィザード學科に所屬する生徒は、男子の場合『リトルウィザード』で子の場合『リトルウィッチ』に始まり、試験に合格すれば男子の場合『ウィザード』で子の場合『ウィッチ』、次の試験に合格すれば男子の場合『アークウィザード』で子の場合『アークウィッチ』、さらに次の試験に合格すれば『ワイズマン or ワイズウーマン』もしくは『サモナー』あるいは『アルケミスト』になれて、『ワイズマン or ワイズウーマン』のみ最終試験が用意されて、合格すれば『オーバーメイジ』になれる。

ヒーラー學科に所屬する生徒は、『ヒーラー』に始まり、試験に合格すれば男子の場合『モンク』で子の場合『シスター』、次の試験に合格すれば『ビショップ』、さらに次の試験に合格すれば『アークビショップ』もしくは『アストロロジャー』あるいは『エクソシスト』になれて、『アークビショップ』のみ最終試験が用意されて、合格すれば『カーディナル』になれる。

「ふふんっ、わたしは絶対にカーディナルになるよ！　ここに宣言するもん！　そしてお兄ちゃんにいい子いい子って、頭をでてもらうよ！」

「カーディナルって、樞機卿って意味だよ？」

ちなみにモンクは修道士、シスターは修道、ビショップは司教で、アークビショップは大司教である。そして、王國の民が大雑把に約７０００萬人いたとしても、現在、樞機卿は王國に５０人ぐらいしかいない。簡単に計算して１４０萬人に１人しかなれない計算である。

「でも、目標が高いのはいいことですね」

「だってよ、お兄ちゃん」

「わかった。ならイヴがカーディナルになれたら、頭をでてあげるし、他にも１つだけなんでもしてあげる」

「わーいっ」

萬歳して喜ぶイヴ。服が引っ張られたので、白くて子供っぽいぷにぷにのおへそがチラチラ覗けた。

さて、ここで部屋の壁の近くに置いてある振り子式の時計を、ロイは一瞥した。

もうすぐで１９時、クリスティーナに説明されたとおりなら、夕食の時間帯だ。

「姉さん、イヴ、そろそろ夕食に」

「そうですね」

「は～いっ、だよ」

部屋を出る３人。そしてロイが鍵を閉めると、３人揃って階段を下りた。

こうして、ロイの王都での生活は始まる。

國立グーテランド七星団學院の學式まで、あと３日。

長いようにもじるし、短いようにもじる。

早く３日経ってほしいのに、現実的な時間はなかなか３日経ってくれない。

そのようなもどかしさの中、ロイは一先ず、寄宿舎での日々を送る。

そして３日後――、