実戦演習の講義のために、グラウンドに赴いたロイとアリス。そして２人と同じ講義をける２５～３０名ぐらいの生徒たち。

この日は晴天で、かといって過度に暑くもなく、をかすには絶好の日和《ひより》だった。

グラウンドにはすでに男講師が到著していて、彼の背後には１０ぐらいの粘土でできた、寸な人型のオブジェがあるではないか。

大きさは３ｍぐらいで、は黃土、額に相當する部分には『 אמת 』と記された羊皮紙がり付けられている。

ロイは、前世でファンタジー小説を好していたから知っている。

これは、ゴーレムだ。

しかし、こちらの世界に來て実際にお目にかかれたのは初めてである。

「ねぇ、アリス」

「？　なに？」

「えっと……確か額にり付けられた羊皮紙に書かれている文字、『 אמת 』は、グーテランドの言葉に直すと emeth 、真理って意味だっけ？」

「「「「「――――っ」」」」」

「で、ゴーレムを破壊する時には emeth から１文字消して『 מת 』にすると、グーテランドの言葉に直すとmeth 、死んだって意味になるから破壊できる……だよね？」

田舎者のロイは、自分の知識が間違っていないかどうかを確かめるためにアリスに視線を送るも、振り向けば、ここにいた全子生徒から熱っぽい視線を送られているのに気付く。

あるの子は瞳をうるうるさせて、あるの子はロイのことを尊敬の眼差しで見つめて、別のの子はロイに上目遣いをして、また別のの子は憧れとが混じった視線をロイに向ける。

「ロイ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイク。君はその知識をどこで？」

と、講師の男が訊いてくる。

「えっ？　そのぉ……昔、小説で読んだので」

「それで？」

「いや、深い意味はないんですけど、ボク、地方の村出ですから、自分の知識が間違っていないか、そして遅れていないかを確かめただけなんですけど……」

答えると、講師の男が笑する。

「え？　ぼ、ボク、なにかおかしなことを言いましたか？」

「いやいや、違う違う。君が今しがた口にした知識は、正しいけど、まだみんな習っていないモノだったんだよ。君は変なところで天然なんだな」

講師は口元を手で隠して、クツクツと笑いを堪える。

と、その時だった。

「きゃあ～～っ！　ロイくん、すご～い♪　今度、あたしに勉強教えて～♡」

「ねぇねぇ！　今度、わたしと二人きりで図書館に行きましょう？　ねっ？　ねっ？」

「ロイくんってやっぱり頭がいいんだね～っ！　わたし、すごい尊敬しちゃうなぁ♡」

ロイはの子に群がられて、やら腕やらでもみくちゃにされた。ぱつんぱつんなボディのの子には、腕にたわわにかな雙丘を押し付けられて。背が小さいの子には、正面から抱き付かれて。バランスが取れたとしての、腰、おしりの曲線が黃金比のの子には、右腕で腕に抱き付かれて、左腕で腰に手を回される。

「あ、アリス、た、助け……っ」

「こら！　ロイが困っているでしょ！　未婚のレディとして恥ずかしくないの！？　風紀的に考えて、今すぐロイから離れなさい！」

「「「「「えぇ～～っ」」」」」

アリスの言うことを聞きそうにないたち。

そしてついに、講師が狀況を見かねて口を挾んだ。

「諸君、もう講義は始まっているんだぞ？　単位、落とされたいのか？」

「「「「「はぁ～い……」」」」」」

ここでようやくロイはの子たちから解放された。

それを確認すると、やっと、講師は講義を開始する。

「この講義は実戦演習だ。期末試験にレポートや筆記テストはなく、評価、點數は実技テストで決まる。まぁ、実戦演習ということで、一応、教科書を用意しているが、それを全部のページやるということはないはずだ。そして――」

一呼吸、置く講師。

「初回はみんなの実力を測るためにゴーレムと戦ってもらう！　一番手は、そうだな、ゴーレムの倒し方を知っているロイにでも頼もう」

瞬間、ロイのカッコイイところを間近で見られるかもしれない、と、の子たちが黃い歓聲を上げる。

えっ、ボク？　と、ロイは慌てて周囲を見回すも、同級生たちはもうロイの活躍を期待しているふうで、今さら「できません」とは言えないような狀態だった。いつなら「できません」と、言えたのかは謎だが。

「１対１でゴーレムに挑むのは難しいから、１人、パートナーを選んでもいいぞ？」

「はいはい！　わたし、ロイくんと一緒にやりたい！」

「あ～っ、あたしもあたしも♪」

「わたしもロイくんとお近づきになりたぁい♡」

講師が言うと、すぐに子生徒が反応した。

しかし、ロイは――、

「アリス、お願いできるかな？」

「えっ、私？」

「うん」

普通に考えて當たり前の判斷、結果だった。

他の立候補してくれた子がダメなのではなくて、アリスがいいのだ。

なぜならこの大勢の中で、アリスは一番魔を使っているところをロイに見せてくれていて、その上、一番気心が知れている。まだ友達になってししか経っていないが、この場合なら彼がいい、と、ロイが結論付けるには、充分に一緒の時間を過ごした。

「仕方がないわね。一緒に頑張りましょう」

「當然っ」

同時にの子たちから落膽の聲が上がるが、ロイとアリス、そして講師はいそいそとゴーレムとの模擬戦の準備を始める。

ゴーレムのし離れた前に立つ、ロイとアリス。

講師は適當なゴーレムの１に命令をれる。

そして、講師はゴーレムに命令をれ終えると、ロイに一言だけ。

「ロイ、君は騎士學部だろう？　剣はあそこに用意したが……」

「お構いなく。自前の剣がありますので」

講師が指差した方には、確かに車付きで移が簡単な剣立てがあって、そこには數本の剣が並んでいたが、ロイは首を橫に振る。

ロイは、その場から一歩だけ前に出た。

前方にかざす右手。

剎那、ロイの右手の平に、眩いばかりの純白のと、神聖の圧力をでビリビリ、ジリジリじるような黃金の風が、弩ッッ、と、大気を唸らせて収束し始める。

「　顕現せよ、エクスカリバー　」