「　顕現せよ、エクスカリバー　」

ロイが唱えると、王に勅令を出されて、颯爽と馳せ參じる騎士のごとく、彼の右手には、聖剣・エクスカリバーが握られていた。

神々しく、暴力的なのに聖なるオーラをじて、圧倒的で絶対的なのに、その外見は蕓的で、まさに聖剣と呼ぶに相応しい一振りである。

エクスカリバーがロイの右手に顕現したのと同時。

「「「「「きゃああああああああああああああああ～～っっ！！！　ロイく～ん、カッコイイいいいいいいいいいいいいいいいいい～～っっ♡♡♡」」」」」

の子たちが惚けたような、ロイという男子を目の前にして自分はの子なんだ、と、心底自覚したような乙の顔で、ラブラブな聲援を送る。

ロイに送る視線は熱っぽく、瞳は潤んでいて、白の頬には赤みが差し、表はもはやロイのせいでトロトロになっているではないか。

「じゃあ、行こうか、アリス」

「ええ、そうね。私もロイに負けていられないわ」

「わかっていると思うけど、ボクが前衛で――」

「――魔師である私が後衛、でしょ？」

アリスはロイに応えるように、にっ、とはにかんだ。

ロイはエクスカリバーを、アリスは自分の右手を、眼前のゴーレムにかざす。

そして講師が宣言した。

「模擬戦、開始ッッ！」

疾ッッ！　模擬戦開始の宣言と同時、ロイはゴーレムに突撃する。速い、速い、速い。生の人間の限界に挑戦するかのように、ロイは全力で突っ走る。

５秒、否、３秒もかからずロイはゴーレムに接近完了した。

ロイの聖剣、そしてゴーレムの土塊を圧して固めた剛腕。両者共に、互いを互いに、攻撃の間合いにれている。だが、ゴーレムはロイより腕力があっても、関節の可域が狹く、小回りが利かない。

ゆえに――、

「最初の一撃さえ躱かわせばッッ、懐にれる！」

轟、ッッッ、ッ！　と、ゴーレムは己おのが剛腕を振り上げた。ロイの眼前に広がるのは黃土の一だけ。回避するタイミングなど、とうの數瞬前に過ぎ去っている。今さら回避など不能。

剣でガードする？　否、力負けしてしまう。

無理矢理、強引に回避行に移る？　否、どう考えても不可能だ。

だからこそロイはぶ。

「アリス！」

「聖なる、形を以って、顕れよ！　神のご加護を、その者に！　【聖なるの障壁バリエラン・ハイリゲンリヒツ】！」

ロイの顔面にゴーレムの四角っぽいゴツゴツしい拳が當たりそうになる。その數瞬前、ロイの前に純白にる硝子ガラスのような障壁が出現する。言わずもがな、アリスの魔だ。

その１０００分の１秒にも満たない間隙をロイは見逃さない。流水のようなきで、ロイはゴーレムの懐に潛り込む。

「ッッ、ダッ、ア、ッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！」

振るわれる聖剣・エクスカリバー。風を斬る音を鳴らして力強く一直線にゴーレムのに斬撃を撃ち込む。その衝撃で大気は軋み、空間に浮遊するマナは吹き荒ぶ。

だが――、ゴーレムのに切れ目をれることができても、切斷とまでにはいかなかった。

そして最悪なことに――、

「エクスカリバーが抜けない！？」

と、ここで模擬戦を遠くから見守っていた講師が、ロイとアリスにアドバイスを送る。

「ゴーレムは確かに粘土でできている。しかし！　今の段階では、そのは巖石そのもののようなさを誇っているぞ。聖剣とはいえ、剣で一刀両斷するのは難しいからな！」

講師の発言に、２人の戦いを見守っていた生徒からも殘念そうな聲がれる。

しかしロイは焦らない。戦いとは常に、氷のような思考を以って、炎のように苛烈な策で挑まなければならない。考えろ、考えろ、考えろ。

一度止まってしまった斬撃に再び力をれても、切斷できるわけがない。そして巖のようにいゴーレムのに中途半端に切れ目をれている剣はなかなか抜けない。押しても無駄。引いても無駄。

早々に次の一手を決めないと、ゴーレムからの反撃がやってくる。しかしエクスカリバーを手放すのは論外だ。ロイの攻撃の手段がなくなってしまう。

ならば、ロイが取れる次の一手は１つしかない。

「アリス！　強化と重増加の魔をボクに！」

「重増加！？　重力作じゃダメなの！？」

「それでいい！　早く！」

「わ、わかったわ！　詠唱破棄！　【強さを求める願い人クラフトズィーガー】！　【黒よりシュヴァルツ・アルス・黒いシュヴァルツ・星の力ステーンステーク】！」

詠唱破棄はアリス、つまりエルフのように魔適が高くないと、なかなか容易くできるようなモノではない。長所は詠唱を唱えなくていい分、発まで時間がいらないこと。短所は詠唱を唱えない代償として、魔の効果が多減ること。

【強さを求める願い人】によって強化。

【黒より黒い星の力】によって、自とその周辺にかかる重力を増加。

そしてロイは、一瞬だけエクスカリバーから手を離すと、エクスカリバーの特を思い出す。

エクスカリバーは絶対に折れない。

エクスカリバーは刃が幅広の剣で、橫向きにすれば人が乗ることも可能。

即ち――、ロイは強化したそので、その場で跳躍。

「アリス！　ボクはもう落ちるだけだ！　重力をもっと強くしてくれ！」

「了解！　そういうことね！」

グン……ッッ！　と、ロイのに重力の負荷がかかる。まさに星の中心から発生する引き寄せるチカラとして偽りなし。

そしてロイは――、

「いっけええええええええええええええええ！」

重力が増加された狀況で、ゴーレムのから抜けないままのエクスカリバーの柄に、隕石のように勢いよく乗っかった。

剎那、崩壊の轟音。

一部分ではあるが、ゴーレムのが砕けたのである。

ロイは自を力點、エクスカリバーが抜けないままのゴーレムのを作用點として、梃子てこの原理を利用し、エクスカリバーを境目に、ゴーレムのを上半と下半とで分離するようにぶっ壊した。

「ロイ！　ゴーレムは中途半端にしか壊れていない！」

そう、アリスの言うとおり、ゴーレムは人間のでいう左の脇腹を破壊されただけで、右の脇腹の方で繋がっていた。

しかし、ロイはそれすらも見越している。

戦場と化したグラウンドに、ピシ……、と、なにかがひび割れる音がしたではないか。

剎那、重低音を響かせて、今度こそ本當に、ゴーレムの上半は傾き、上半と下半が離れ離れになった。

「そうか、自重で……っ、ゴーレムは人間よりも重いから……っ！」

「これで理的には、ゴーレムの額の羊皮紙は手の屆きやすい高さに！」

再びロイは疾走する。標的は數ｍ先で上半だけもがいているゴーレム。

走りながら聖剣を構えるロイ。一方でロイを援護するために、いつでも魔を撃てる狀態で待機するアリス。

ロイが迫り、アリスが後方で待機する狀況で、ゴーレムは、腕だけで移を開始する。

「 GAA , GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!! 」