《ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&長チート&ハーレムで世界最強の聖剣使いにり上がる語~》4章10話 悲しみで、涙を――(2)

「ふっふ~ぅ? それでぇ?」

「それにボクはキミと同じことをして、キミと同じレベルに落ちぶれたくない」

「――、弱い、ねぇ」

「弱いのはキミの魔だろ? 全然痛くもかゆくもないね」

「アァ? チッ、集え、魔の源よ。形をし、前へ前へと奔り給え。【魔弾】!」

「聖なる、形を以って、顕れよ! 神のご加護を、その者に! 【聖なるの障壁バリエラン・ハイリゲンリヒツ】!」

【聖なるの障壁】は、講義でゴーレムと戦った時にアリスが使った魔の1つだ。

の守りを展開するアリス。結果、一瞬の差だったが、【魔弾】が當たるよりも先に【聖なるの障壁】が完して、ロイを守ることに功する。

「ふふん、弱いっていうのは、キミの社會的地位のことだぜ?」

「平民、それも地方から出てきた田舎者ってこと?」

「そうそう! 貴族になれば、こういうことって、大概許されるんだよ! キミは大層、剣に自信があるようだが――殘念ながら、武力は権力に敵わない」

ここにきて、ようやくジェレミアがそれなりの正論を言った。

武力は権力に敵わない。

確かに、今までの口論、ジェレミアよりもロイの方が正しい。

もしかしたら、実際に決闘をしても、ジェレミアよりもロイの方が強いかもしれない。その可能がないわけではない。

しかしロイはジェレミアに勝てないのだ。

ロイの方が『正しい』として、もしかしたら『強い』かもしれなくても、ジェレミアの方が『偉い』から。

ロイの前世も、この異世界も、そういうところは変わらない。

だが、ロイからしてみれば、変わらないことがシーリーンの現狀の免罪符になるなんて、認められるわけがなかった。

「っていうかさぁ、シーリーン、キミィ、なに被害者ヅラしているんだ?」

「えっ……!?」

突然矛先が自分に向いて、シーリーンはオドオドしてしまう。

そういうシーリーンのか弱い反応が、ジェレミアの勘違いも甚だしい意識を増長させた。

「そいつを傷つけたのはキミだって言っているんだよ」

「な、なにを……、だってジェレミアさんが魔で……」

「キミが原因でそいつとオレがケンカしたんだから、ケンカによって生じるケガは全てキミのせいだろう?」

「ちょっと! なに言っているのよ、あなた!」

「アリス、外野は黙っていろ。――、いいか、シーリーン? キミが加害者だ」

「ひぅ……」

「ロイ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクは、オレがいなければケガしなかった。けど、オレもシーリーン・ピュアフーリー・ラ・ヴ・ハートがいなければ、こいつを攻撃することはなかった。だからオレは悪くない。悪いのはキミだ」

「そんなことないよ!」

「詭弁ですね!」

イヴもマリアもジェレミアに反論するが、彼は聞く耳を持たない。

「そういえば、ロイはシーリーンの友達なんだよな?」

「そうだけど、それがなにか……?」

腹部の激痛を我慢しつつ、ロイがジェレミアを睨む。

しかしジェレミアはロイのこと相手にせず、シーリーンに向き直った。

「キミがロイをケガさせたんだ。せっかくできた友達に、絶されないといいな」

「~~~~っっ!?」

決定的なことを告げられると、シーリーンはその場に座り込んでしまう。

膝から崩れる形で。誇張表現でもなく、言葉の綾でもなく、本當に絶しているじに。

ロイは、シーリーンにとっての久しぶりの友達。

大切な友達。

アリスも、イヴも、マリアも、當然自分の大切な友達で、失いたくないかけがえのない存在である。

だが、ロイだけは、さらに特別で、特別で、特別で、アリスよりも、イヴよりも、マリアよりも、誰よりも好きだった。

「ひぅ……ぐす……、うぅ」

ロイと離れたくない。

ロイに嫌われたくない。

彼と友達でいられなくなってしまうなんて、悲しいし、寂しい。

彼に嫌われるなんて、絶対にイヤで、もしそうなったら、が痛くて、切なくて、苦しくて、悔しくて、間違いなく部屋で1人になった瞬間に大泣きしてしまう。

嗚呼――、

――もう、わかっていた。

……――「ボクは損とか得とかで友達を選んでいるわけじゃないよ? それに、初対面だけど、シィのことが心配なんだ」「ボク、そしてアリスも、キミの味方で、友達だから、またイジメられたら助けを求めてほしい。シィがどうとかじゃなくて、ボクが助けを求めてほしいんだ」「シィが自分で自分のことをコンプレックスにじるということは、誰かがキミをイジメていい言い訳にならないんだよ?」「今度、ボクがジェレミアに會ったら、シィの代わりに一発毆っておくよ」――……

シーリーンの脳裏に、否、心に、次々とロイの言葉が浮かんでくる。

まだ出會って1週間も経っていない。

だから、逆に、かえって、救われない自分を救いに颯爽と現れた白馬の王子様のような気がした。

ジェレミアの言っていることは支離滅裂だ。同い年の學生がした発言とは思えないほど稚拙である。

でも、もし仮に、ジェレミアの言うとおり、ロイに絶されたら?

そう思うと、涙が、止まらない。

(いやだよぉ……、シィ、ロイくんのことが好きなのに……、好きって気付いたばっかりなのに、絶なんて……っ)

「ハハハッハッッハハハッハ、フーリーの涙なんて、汚い汚い。みんな、行こうぜ」

止めどなく、聲を押し殺して泣いてしまうシーリーン。

それがよかったのか、ジェレミアはご満悅な表で、取り巻きを連れて踵を返した。

ジェレミアは、ロイが激を瞳の奧で燃やして、自の背中を睨んでいたことに気付かない。

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