そして、いつの間にかロイは拷問部屋にいた。

これから、ジェレミアの幻覚が始まる。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！」

まず、最初の６時間は生きたままに火を點けられた。

無論、死ぬことは許されない。

眼球の水分が蒸発して、パンッ、という軽快な音と共に破裂。

皮は熔けて、原形をとどめられないぐらいドロドロの半狀になって、浴時、から泡を洗うように流れていく。

と臓はこんがり焼けて、ふと、ロイはいつも食べているのを思い出して吐き気を催してしまう。

そして――、

どんなに外側を燃やし盡くしても、の奧から新品のや臓などのが、外側に押し出るように、奔出するように製造されるので、最終的にの全てが灰になることは許されない。

が化けのような形狀になっても、ロイは五の全てを弄られた世界で生きることを強制される。

「～～～～～～～～～～～～ッッッッッ！！！！！」

次の６時間は空中の十字架にを磔にされて、硫酸がったカマに足の爪先から浸かっていった。

６時間という長い時間をかけて、爪先が溶ける。足が溶ける。太ももが溶ける。が溶ける。大腸と小腸が溶ける。腹の表面が溶ける。胃が溶ける。肝臓が溶ける。部の表面が溶ける。肺が溶ける。そして、心臓が溶ける。

だが心臓が溶かされても、ロイは死ぬことを許されなかった。

その後も、肩が溶け、腕が溶け、首が溶け、顎が溶け、口に辿り著いた時點で、今さらかもしれないが口から硫酸が流れ込む。

瞬間、首から下なんてとうの昔に溶かされているのに、硫酸がを通り、の側を溶かすような覚がした。まるでの側の表面を、灼熱の炎魔で炙あぶっているようである。

その間も口から上、頬、鼻、耳、眼球、額の順番で溶かされて、最終的にの全てを溶かされてしまう。

本気でロイが（あっ……死んだ）と思った瞬間、五は別の痛みを覚える。

次の拷問が始まった。にかかっているロイは知る由がないが、次の６時間が始まったわけだ。

「あああああああっっ…………、ああああああああああああッッ…………」

次は生きたまま氷漬けにされる。

ジェレミアの幻影魔は実に用なモノで、まず、ロイはではなく、管を流れるだけを凍らされた。脳が詰まる覚なんて初めて知った。心臓はいているのにが前に進まない覚の違和が凄まじすぎて、違和で発狂しそうになる。

例えば、人間は氷にれれば『溫かさ』をじるわけがないが、『なにもかも』をじないわけではない。この場合、『冷たさ』をじるわけである。

ゆえに、ロイはを全て凍らされても、なにもかもをじなくなったわけではない。神が崩壊しそうなぐらいの絶対的な冷気をじた。

その後は、四肢と、次に臓、首から上は最後まで取っておかれた。

が１ｍｍもかせない。

しかし無理にかそうとしたその時――、

――そのせいで氷の彫像となったロイのは々になってしまう。

「――――ッッッッ――ゥゥアアアアアアアア……ッッ、――――ッッッッ！」

ふいに、ロイがいた空間に、シーリーンとアリスとイヴとマリアが忽然と現れた。

みんな一様に、桜のから興した獣のように、年頃のの子にあるまじき下品な涎を垂らす。

そして４人は、なぜかけないロイのを食べ始めた。

を焼くなんて真似はしない。

４人は、ハイエナのように、ロイの抜きされていないがゆえに充された真っ赤な生を食べる。

だがそれでも、ロイは死ぬことを許されない。

…………。

……、…………。

「ダメですねぇ、アレでは」

ＶＩＰ席で１人の、アリシアが呟く。

それにエルヴィスは返事した。

「ロイの方か？」

「いえいえ、ウィザードの方ですわ」

心底つまらなそうにアリシアはコロシアムの中央、ステージで決闘中のジェレミアを睥睨へいげいする。

「魔には、屬、系統に拘わらず、完度というモノがあります」

魔の屬とは――無屬、炎、水、風、雷、土、、闇、時、空の１０つである。

一方で系統とは――無屬魔なら、その細分としてや、音や、や、食（魔で料理を味しくする）や、清（魔で特定のを清潔にする）などがあり、これを系統と呼ぶ。

そしてアリシアの言うところの完度いうのが――、

「剣にも存在しますわよね、完度って」

「無論だ」　と、エルヴィス。

「あのウィザードの幻影魔は、言ってしまえばレベル１ですわ。レベル１で全戦全勝できるだけであって、レベル１には変わりない。まるでレベルが上がっていません」

言うと、アリシアはコロシアムの最前列で泣きながら必死に聲援を送っているの子４人組に目を向けた。

それに気付いたエルヴィスが、アリシアに説明する。

「ロイの友達のようだな。ブロンドのの子が、今回の男同士の決闘の発端らしい」

「――、そういう言い方をすると誤解を招きますわよ？」

…………。

……、…………。

「ロイくん！　ロイくん！　――っ、ロイくん、起きて！　目を覚まして！」

「ロイ！　あなた、絶対に負けないって言ったじゃない！　しっかりしなさいよ！」

「お兄ちゃん！　死んじゃヤダよぉ……っ！」

「しっかりしてください、弟くん！」

４人のの子の視線の先、そこでロイは、エクスカリバーをステージの床に落としたまま、死のように突っ伏していた。

決闘に相応しい激しい剣戟もなければ、蕓のような魔も撃ち合いも飛びっていない。

ただ、死のようなロイからし離れたところに、ジェレミアが立っているだけ。

しかし――、

「…………っぅ」

なぜか、圧倒的な優位に立っているジェレミアの額に、わずかに脂汗が浮き始めた。

おかしい。なにかがおかしい。

者であるジェレミアにはわかるのだ。

幻影魔は予め、６時間ごとの別種の苦痛を４つ用意していて、それを１セット、合計で２４時間、つまり１日としている。そして４つ目の苦痛が終われば、１つ目の苦痛に戻るようにも予め式を組んでいる。

そして幻影魔の中での１日は、現実世界でいうところの１秒。

なのに――、