報を整理すると――、

ロイは騎士學部、アサルトナイト學科、５學年次でランクはナイト。

シーリーンは魔師學部、ヒーラー學科、５學年次でランクはシスター。

アリスは魔師學部、ウィザード學科、５學年次でランクはウィッチ。

ロイはシーリーンとアリスの２人と學部が違うので、なかなか講義で一緒になれない。

無論、ロイとアリスはカリキュラムを２人一緒に作ったので、同じ講義が多いのだが、一方でシーリーンはロイの人なのに、そういうわけにはいかなかった。

結果、ロイとアリスが一緒にいる講義、そして同じ學部としてシーリーンとアリスが一緒にいる講義、という二分化が起きている。ロイとシーリーンが一緒にいる講義はほとんどない。

「はい、ロイ、お疲れさま」

「ありがとう、アリス」

グラウンドの近くには階段があり、それに座るロイとアリス。

アリスはロイにタオルを渡す。

例のごとく実戦演習の講義。ロイもアリスも著に著替えて講してした。

ロイはアリスと仲がいいが、そのせいで、他の男子生徒から羨ましそうな視線を送られてしまう。

著姿のアリス。

瑞々しくて１０代のとしてハリがある白い太ももは、健康的で目に眩しい。運のたびに上下にくに対して、先ほどまで、ロイは非常に目のやり場に困った。汗ばんだうなじ、紅した頬、そしてしだけれた吐息はっぽくて、西洋の子中等教育上位生として、男なら生つばを呑むこと必至である。

「ランニング見ていたけれど、ロイってやっぱり足が速いのね」

「まだ故郷の村にいた頃、剣も魔もできない子供の時は、他に自分を強くする手段がなくて、とにかく力を付けよう！　って、村の周辺を走ってばっかりだったから」

「子供の時から？」

「うん、ボクが神様のの子から授かったスキルを超えるスキル、〈零から始めるオンベグレンツァト・無限の修練イーブナヌーマァ〉っていうゴスペル。これの効果は２つで、実力っていうか長の余地の上限解放と、努力が苦痛にじなくなること。努力が楽しくなってやめられなくなることなんだ。だから子供の頃から運ばっかり」

「素敵なゴスペルね。私、そういう前向きで人として誇らしいモノって好きよ？」

「ありがと、ボクもアリスのことが好きだよ？」

「うえ！？」

微笑みながらロイは言った。

一瞬にしてアリスの顔はリンゴのように真っ赤に染まる。

ロイに好きと言われた。以前にも何回かそういうことがあったのに、ジェレミアとの決闘が終わったあとから、アリスは自分でもやたら反応が変わったと自覚している。

自分は自分が人として好ましいと思った人としか友達に、親友にならない。そしてロイは間違いなく自分の親友だ。ゆえにロイの方が、自分のことをエルフとして好ましいと言葉にすることだって、決しておかしくない。

なのになぜか、アリスのは切なくてドキドキしていた。

そしてしだけロイの顔を見るのが恥ずかしいのに、なんだかイヤな気分じゃない。むしろ心のどこかで嬉しがっている自分がいる。

「わ、私も……ロイのこと、好き……」

「アリス？」

「あっ、～～～～っ」

無自覚だった。自分では言葉にしたつもりはなかったのに、アリスはとんでもないことを呟いてしまう。

それに數秒遅れながら気付いたアリスは、瞳をウルウルさせ、口をあわあわさせながら、不自然なほど強烈に弁解を始める。

「ちっ、ちがっ……、違うから！　あくまでも親友として！　親友としてロイのことが好きなの！　男の子として好きって意味じゃないんだから！　勘違いしないで！」

「う、うん……？」

うん、と返事しようとしたのに、なぜか疑問形になってしまうロイ。

翻ってアリスは、自分で自分を言い聞かせるように（そうよ、私がロイのことを好きなのは友達として！　親友として！）と、心の中で呟いた。

「さて、まだまだ休憩時間はありそうだね」

「最後の１人がゴールするまで休憩時間、ねぇ。ロイがダントツの１著とはいえ、時間あまりすぎじゃないかしら？」

アリスの言うとおり、ロイはこの５ｋｍのランニングを１５分臺後半でゴールした。１ｋｍを約３～４分で走った計算で、同年代の男子學生の中では圧倒的に最速である。

そのため、男子の前に走って待機中のの子からは、熱っぽい憧れの視線を送られてしまう。

「ロイくん、カッコいい……♡」

「あたしもロイくんの人になりたい！」

「ロイくんって優しそうな顔なのに、しっかりしてそうだよね？」

「うん、あので抱きしめられたいなぁ♡」

ロイにシーリーンという人がいることは周知の事実だ。しかしそれでもロイに対する淡い心を諦めきれない子學生は何十人もいた。

ある人間のの子は切なそうにの前で祈るように指を組んで、

あるエルフのの子はロイを遠くから眺めているだけで、頬を乙に染めて、

あるドワーフのの子はロイのことを想うだけで、が締め付けられるぐらいドキドキしてしまう。

「あのね、ロイ」

「なに？」

ふいにアリスが落ち著いた様子で會話を切り出す。

２人は並んで階段に座っており、互いの距離はもうしで肩がれ合いそうなぐらい近かった。

男の距離としては、間違いなく、理的にも、心理的にも近い今のポジションに、アリスはを高鳴らせながら、しだけロイ側に寄った。

男のコミュニケーションは、まだ學生の分なのだから、節度を持ってしなければならない。男のコミュニケーションで風紀をしてはならない。

常日頃からそう考えているのに、アリスはロイと、もっと、もっと、仲良くなりたいと思う。あくまでも親友として！　と、アリス本人は言うかもしれないが。

「ありがとう、本當に、ロイには謝しているわ」

「えっ！？　ボク、アリスになにかしたっけ？」