瞬間、ロイと、彼のすぐ背後で魔の刃を構えていたの足場、地面が崩壊する。

そしての【そこに我はいない、故に咲き誇る純黒の花】は制不能狀態に陥る。これはロイの計算どおりだ。影とは、地面や壁に映る存在。その地面が形を変えてしまったら、魔が無効化されるわけではないが、いくらでも脳で制できないぐらい、制のための処理が複雑になる。事実上の魔無効化。

翻って、【そこに我はいない、故に咲き誇る純黒の花】とれ替わるように、地面から無數のエクスカリバーの刃が咲きれる。

そこでは気付いた。

先ほどから、エクスカリバーの先が地面に突き立てられていたことに。

「エクスカリバーの刀を変形させた！？　刀をばして、地中から攻撃を！？」

エクスカリバーのスキルは『使い手の剣に対するあらゆる想像・イメージを反映する』というもの。

つまりロイは、形が変化する剣と、剣先が分裂する剣をイメージしたのだ。

「地中でばしていたエクスカリバー、分の方まではまだ距離があったのに、本の方が慢心してボクに近付いたからこうなったんですよ！」

「だから格上の私を相手にお喋りを――！？」

「ボクがキミを倒せるとしたら、発想力にしか勝機はないからね！」

背中から倒れ込む。その先には花弁のように複數あるエクスカリバーの切っ先、その１つが待ち構えていた。

無論、【神様の真似事】を使えば簡単に回避できるように思える。

しかし――、

「――【神様の真似事】は使えないよ！」

「なっ――！？」

「――『速さ』っていうのは、前後左右、とにかくどっちでもいいけど、けて初めて立する概念だ！　つまり、人間の場合、足場を崩されたら『速さ』を降臨させても移できない！　けないから！」

これが【神様の真似事】の弱點。

例えば『速さ』を降臨しても、足がなければ意味がない。

植に『速さ』を降臨させても意味がないように。

例えば『味しさ』を降臨しても、食べられなければ意味がない。

剣や本、時計や椅子に『味しさ』を降臨させても意味がないように。

例えば『可さ』を降臨しても、顔がなければ意味がない。

骸骨になった死に『可さ』を降臨させても意味がないように。

だというのに――、は余裕を取り戻して、笑う。

あどけなくて、稚くて、くるしいじで。

「なら、これでどうですか？」

「――――ッッ」

はギリギリの距離だったが、自分の片手でロイの倉を摑んだ。

そしてロイは倒れ込むに引っ張られる形で勢を変えて、否、変えられて、と共にエクスカリバーの分裂した剣先の１つに倒れそうになってしまう。

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。

ロイの脳で警鐘が鳴る。

このままでは、が突き刺さった１秒後ぐらいに自分も突き刺さってしまう。

つまり、死んでしまう。

「エクスカリバー、戻れ！」

とっさの判斷で、ロイはエクスカリバーを普通の狀態に戻した。

結果、剣先は１つに収束して、刀も元の長さに戻る。

だが――、エクスカリバーが元に戻っただけで、ロイとが倒れなくなる、というわけではない。

だからこそ、最悪の事態が起きてしまった。

「「～～～～っっ！？」」

そう、ロイとは倒れ込んだ勢いでキスしてしまう。

しかも戦闘のり行きで仕方がないとはいえ、ロイがを押し倒す形で。

のはぷにぷにでやわらかかった。

が、のを味わっている暇などない。

この子の外見は１０歳以下だ。そんなの子を相手にゴスペルホルダーで、聖剣使いの自分がキス？　社會的に死んでしまう。絶対に、だ。

「ご、ごごご、ゴメン！」

慌ててからを離すロイ。

一方では、恥ずかしかったのか頬を乙に染めている。

「これで、私の勝ちですわね」

「えっ？」

「社會的に私の勝ちです」

「た、確かに……」

言うと、は踵を返す。ロイとの『お遊び』もここまでということだろう。

しかし、きっとこの余裕ぶっている態度も、実は『年上』としての虛勢かもしれない。

今のロイには余裕がないが、第三者がいれば、強がっているのがバレバレだった。

「ふふっ、久々に楽しめました。それでは、また明日、お會いしましょう」

「えっ！？　ちょ――」

別れの挨拶を済ませると、本、と、いうことになっていたのが霧散する。

その數秒後に、ロイを心配に思ったシーリーンたちがメインストリートから路地裏にってきた。

（えっ……？　また明日？）