「あらあら、うふふ。昨日はお世話になりましたわ、ロイ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクさん？」

「昨日の怪しい！？」

ロイが驚いた次の瞬間、學院長が慌てたように注意をする。

「ロイくん！　彼にそのような言い方は……っ」

「いいのだ、學院長。アリシアは昨日、自分の分をただのと偽って、ロイを騙しながら戦ったそうだからな。非があるのはアリシアの方だ」

「そ、そうでございましたか」

一先ず、ロイはエルヴィスに視線で促されたので、エルヴィスとアリシアと呼ばれるの対面のソファに座る。

ソファは高級品で、座るためのアイテムだというのに、ロイの自室のベッドの１０倍はふかふかしていた。

「改めまして、私の名前はアリシアと申します。特務十二星座部隊における星の序列第２位、國王陛下より直々に【金牛】の稱號を授かったオーバーメイジです」

「な――っ！？　特務十二星座部隊！？　しかも星の序列第２位ということは――ッッ」

「オレよりも強いということだ」

「も、申し訳ございませんでした！　その、昨日はそうとも知らず、剣の切っ先を向けてしまい……っ」

慌ててロイはソファから離れ、床に片膝を付いて首こうべを垂れる。

わかりきったこと。昨日のアレは、アリシアにとってお遊びだったのだ。まるでアリシアという飼い主が、ロイという玩犬と戯れるレベルの。

あの戦いにおいて玩犬と同等のロイがいくら本気になろうと、必死になろうと、アリシアに勝てるわけがない。

アリシアが本気だったならば、自分は戦闘開始から最長でも１分で消し炭になっている。

「気にするな。実際に見ていなくともわかる。話を聞いただけでアリシアの方が悪いのは自明だ。ソファに戻っていいぞ」

「は、はいっ！」

ロイはエルヴィスに促されたとおりソファに戻る。

もはやソファのふかふか合なんてどうでもよくなった。それほどまでに張し始めている。

「ちなみに、ロイさん」

「はい、なんでしょうか？」

「昨日の最後の危ないアレも分だったから、気にしなくていいですよ？」

と、アリシアはロイにウインクを飛ばす。

そこでエルヴィスが反応する。

「危ないアレ？」

「最後の最後に私の分の１が殺されかけたんです。ねっ、ロイさん？」

目配せをするアリシア。

當然、アリシアの言う『危ないアレ』とはキスのことだが、エルヴィスには誤魔化しておく。

キスのことは２人だけのナイショ、にしておきたいらしい。

「そ、そうなんです！　アリシアさん、分とはいえ、昨日は本當にすみませんでした」

「そうか。まぁ、話が進まないからアリシアのおふざけのことは置いておこう。さて、學院長、本題をあなたの方から」

「承りました」

ゴホンと、學院長は咳払いをする。

そして――、

「ロイくん、キミのクラスは今ナイトだが、ジェレミアくんとの決闘が評価され、ロードナイトに昇進できることが決定された」

「本當ですか！？　ありがとうございます！」

「そして同時に、１クラス昇進だけでは果に見合わないとして、ロードナイトからルーンナイトに昇進できる話も浮かんでいる。こちらは無條件というわけではなく、昇進試験の験資格を得られた、という現狀だが」

「な――っ」

聲を出せない。上手く舌が回らなくて発音できない。あまりに信じられない喜ばしい事態に、ロイは言葉を失う。

「で、このような事態は滅多にないので、その真実の保証人として、お二方にはわざわざご足労かけていただいた」

「學院長が言うように、このようなケースは滅多にない。しかし、オレは特務十二星座部隊の一員として、まぁ、要するに王國七星団の、自分で言うのも変な話だが、それなりに責任のある立場として、この事実を保証する」

「そして、保証人であると同時に、私たちは伝書鳩でもあったのです」

「アリシアさま、オーバーメイジの貴がご自分を伝書鳩などと……」

「あらあら、申し訳ありません、學院長。他に上手い喩えが思い浮かばなかったもので」

上品に口元を手で隠しながら、お淑やかにアリシアは微笑む。

アリシアが喋るだけで、容がどうであれ、會話そのものが優雅になったじがする。

「ケースがケースだけに、なかなか信じられないだろう。すぐに終わってしまう話だったが、お前を信じさせるためだけに、オレたちは今日、學院にきたわけだ」

「本當にそれだけのために……」

「ふっ、それに、お前の長を近い距離で確認したかったからな」

「それでロイさん？」

ふいにアリシアがロイに視線を向ける。

「當然ながら、ロードナイトに昇進すること、そしてルーンナイトの昇進試験をけること、この２つはアナタの自由です。さて、アナタはどうしますか？」

ロイは、１回ゆっくり息を吸って吐くと、躊躇わずに答える。

答えなんて、最初から決まっていた。