「見破りましたよ、アスカロンのスキル！」

「…………ッッ」

「言いましたよね、ボクは転んでもタダじゃ起きない、って」

「ハッ、違いねぇ」

ロイはツバ、否、の奧から滲んだを吐き捨てる。

対してレナードは皮そうに言葉を吐き捨てた。

「今のボクの聖剣の波、なぜか、通常よりも輝いていたんです。だとしたら普通、出力が上がったと考えますよね？　しかし、アスカロンのスキルが処理できなかった分を除けば、逆に、ただ輝いただけで攻撃は無効化された」

「目がいいじゃねぇか。いや、目がいいんじゃなく、目の付け所がいいのか」

「ボクは先ほど、アスカロンのスキルは、斬ったモノの『本質』に近いナニカを、強くしたり、弱くしたりするスキル――と、見當を付けました。そこでじたんです。アスカロンのスキルを使って起こした現象、その共通項はなにか、って疑問を」

「――――」

「斬ったモノの『本質』に近いナニカを、強くしたり、弱くしたりするスキル？　微妙に違いますよね？　なぜなら、エクスカリバーによる聖剣の波、あれについては、攻撃力は弱くなったのに、輝きは強くなったから。つまり２つ以上のファクターに対して、真逆の現象を起こしていることになります」

「ハッ、アスカロンのスキルに、２つ以上のファクターを真逆なじに処理する、ってスペックがあっただけ、とは考えねぇのか？　いや、考えるんじゃなく、じねぇのか？」

「１回だけなら、ボクの思い過ごしですみます。だけど！　斬撃の四重奏の軌道を逸らした時は、普通、なかなか起きない現象、４つの太刀筋の全てを逸らすという現象を起こした！　【聖なるの障壁】を強化した時も、普通、なかなか起きない現象、魔防壁で飛翔剣翼を防ぐという現象を起こした！　不可能を可能にするスキル？　否！　そんなチートスキルを使えるならとっくに勝敗は決しているし、そもそも、なかなか起きない現象というだけで、不可能とまではいかない。つまり、殘っている可能を合理的に取捨選択するなら――ッ」

ロイはレナードを睨む。

レナードはそれを愉快そうに迎えた。

「斬ったモノがその概念に宿す『発生順位』をれ替えるスキル！」

「ハハハッッハハッハッハハハハッッ！　正解！　正解！　大正解！　初回の戦闘でアスカロンのスキルを看破できるヤツなんて、そうそういねぇよ！　最ッ高じゃねぇか！　流石は俺と同じ聖剣使い！　そうでなくちゃ、面白くねぇからなァ！」

斬撃の四重奏にも、【聖なるの障壁】にも、風の大砲にも、聖剣の波にも、それぞれ個々の現象がもたらす『結果』というモノがある。しかも、大抵は複數の。

斬撃の四重奏には、パッと思い付くだけで『太刀筋が増える』『相手を斬ることができる』『もしかしたら躱される』『手をかす必要がある』『イメージをエクスカリバーに流し込む必要がある』という、斬撃の四重奏を発するにあたって、無視することのできない可能が存在する。

【聖なるの障壁】には、パッと思い付くだけで『攻撃からを守る』『魔力を消費する必要がある』『もしかしたら壊れる』『空間に固定すれば、上を歩くことができる』という、やろうと思えばできること、やろうと思わなくてもしかしたら起きてしまうことが存在する。

風の大砲、厳には空気には、パッと思い付くだけで『斬ろうとしても空振るだけで斬ることはできない』『だが、剣を振れば多の風は起こせる』『吸うことができる』『音のように振を伝えることができる』という、意味があるか否かは置いといて、使い道、応用の仕方が存在する。

聖剣の波には、パッと思い付くだけで『相手にダメージを與える』『輝く』『大気中の魔力を消滅させる』『純白の輝きと黃金の風が発生する』『前方に進む』『予備作として、エクスカリバーを振り下ろす必要がある』という、本意か不本意か、意図したか否かは置いといて、どうしても聖剣の波という概念に付きまとい、そして連する事象が存在する。

「――と、こんなじのモノ、その優先順位、事象が発生するランキングの上下に介するのが、俺のアスカロンのスキルだ」

斬撃の四重奏に付きまとう事象には、実例で『相手を斬ることができる』と『もしかしたら躱される』があり、普通に考えるなら、前者の可能が高く、世界に発生することを優先されて、後者の可能が低く、世界に発生することを蔑ろにされる。

【聖なるの障壁】に付きまとう事象には、実例で『攻撃からを守る』と『もしかしたら壊れる』があり、対象が飛翔剣翼に限るなら、普通に考えるなら、後者の可能が高く、世界に発生することを優先されて、前者の可能が低く、世界に発生することを蔑ろにされる。

風の大砲、空気に付きまとう事象には、実例で『斬ろうとしても空振るだけで斬ることはできない』と『だが、剣を振れば多の風は起こせる』があり、普通に考えるなら、前者の可能が高く、世界に発生することを優先されて、後者に関しては風を起こすことは容易だが、竜巻や嵐と呼べるレベルの風を起こせる可能は低く、世界に発生することを蔑ろにされる。

聖剣の波に付きまとう事象には、実例で『相手にダメージを與える』と『輝く』があり、どちらも普通に発生しうる事象だが、どちらがより聖剣の波という攻撃の本質・存在理由に近いかといえば、當然前者で、正直、後者の事象は聖剣の波から取り払われてもなんら攻撃に支障がない。

「そう！　言ってしまえば！　この実例における、『発生回數』の多い前者と、ない後者をれ替えるのが、アスカロンのスキルだ！」

高らかに言うと、レナードは再びアスカロンを構える。まだ、彼は戦う気だ。

対してロイも再びエクスカリバーを握る手に力を込めた。右腕はもう使いにならない。ゆえに、左手だけで。

「テメェ、右手が使えねぇんだろ？　無理すんなよ」

「先輩こそ、脇腹から大量出していますよ？　左右のどちらにも、を捻ることができないんじゃないですか？」

図星を指されるとレナードは失笑した。

釣られてロイも苦笑する。

この程度、戦いをやめる理由にならない。

「ボク、先輩のことを気に食わないって言いましたよね？」

「ああ、先輩に吐く悪口じゃねぇ」

「やはりボクは先輩のことが気に食わない！　アリスに絶対相応しくないし、ボクよりも強いなんて、ムカつくじゃないですか！」

「上等！　俺もテメェが気に食わねぇ！　俺の好きなの近くにいるどころか、俺よりも將來、長する余地が殘っているんなんて、ぶった斬ってやりてぇぜェ！」

好戦的に犬歯を剝き出しにして笑うロイとレナード。

２人が互いに向かって走り出そうとした、その時だった。

ボロボロになった決闘場のステージの中央、ロイとレナードの中間に、隕石のようななにかが落ちてくる。

その正は――、

「あらあら、うふふ、２人ともケガされているじゃないですか」

「アリシアさん！？」

「誰だ、この！？　邪魔すんじゃねぇ！」

と、レナードが恫喝どうかつする。

しかしアリシアは特に怯えた様子もなく、１回、両手を叩いて音を鳴らすと、２人の傷を完璧に直した。

時を巻き戻したのではない。

大気中の魔力を生きのに変換する魔を使ったのだ。

魔ではあるが、これはオーバーメイジよりもアルケミスト、錬金師の領分なのに。

無論、ランクはＳランクの錬金だ。

「初めまして、レナード・ハイインテンス・ルートラインさん。私はアリシア。特務十二星座部隊、星の序列第２位の【金牛】、オーバーメイジです」

「なっ、ん……だと！？」

あの誰よりも自分が１番、と、本気で考えていそうなレナードですら、アリシアの発言に驚愕する。否、それよりも、より深く、鮮烈に、正確に言うならば、そう、戦慄した。

レナードは、いつの間にか自分が一歩、後退りしていることにすら気付かない。

完璧に、それは無自覚、無意識だった。

「さて、唐突ですが！　この勝負、私が預からせてもらいます！」