翌日、トパーズの月、１３日の朝――、

空は青く晴れ渡っていて、小鳥が木々の枝に留まってさえずっていた。

白い雲に、麗らかな風。まさに秋晴れの１日の始まりである。

學院には続々と生徒が、勉學のために、剣のために、そして魔のために通學してきて、だんだんと活気に満ちてきて、喋り聲も聞こえてくるようになる。

「ゴメンね、みんな。ボクに付き合ってもらって」

「ううん？　ロイくんの隣が、シィのいるところだから♡」

と、ロイの腕にやわらかいおっぱいを押し付けるシーリーン。そして彼は、そのままロイの腕に気持ちよさそうに、幸せそうに目を細めながら頬ずりした。

２人の様子を、アリスはつまらなそうに、イヴは不機嫌そうに、マリアは笑顔なのになぜか怖い雰囲気で見つめる。

「コホン、それで、ロイ？」

「ん？」

「なんで決闘場なんかに用があるの？」

ロイはシーリーンとアリス、イヴとマリアを連れて第１決闘場を訪れていた。

ここは昨夜、レナードと剣をわしたところで、その戦いの衝撃で、盛大にステージをぶっ壊してしまったのだ。

それを、勝負を預かると言ったアリシアが、特別に直してくれると提案してくれたのである。

要するに他の４人はロイの付き添いだが、ロイは直ったか否かを確認しにきたわけ。

「いやぁ、ちょっと用事があって……」

「アリスさんはその用事がなにか、って訊いているんだよ？」

「お姉ちゃんにも言えないようなことなんですかね……？」

と、小さく、きょとん、と小首を傾げるイヴ。

次いで、寂しそうに、シュン、とするマリア。

どうしよう、と、ロイは心で焦りつつ、言い訳を考える。

確かに普通、決闘場なんかに用事など、そうそうないのだから。

「もうダメだ、罪悪に勝てない……」

「ぅん？　ロイ、それってどういうこと？」

「特にアリスには怒られると思うんだけど、昨日、學院の許可なく勝手に決闘場を使っちゃったんだ……」

「ほえ！？」「ふぇ！？」

「お兄ちゃんが！？」「弟くんが不良さんに……っ」

「それで、そのぉ……決闘場のステージを壊しちゃったんだけど、親切な人が明日までに直してくれる、って……」

「ロイくん、親切な人って……」

「完璧に詐欺の手口じゃない！」

「いや！　ちょ、ちょっと待って！　確かに言葉だけ聞くとそうかもしれないし、ボクも他人から聞かされたら詐欺だと思う。でも、一先ず、とりあえず、一応！　決闘場を確認しに行った方がいいかなぁ……って」

「お姉ちゃん、これ、もしも直っていたら、どうなるのよ？」

「修繕費を普通の１０倍とか、かもしれませんね……？」

「大丈夫だよ、ロイくん！　ロイくんが一文無しになっても、シィは一生、ロイくんと添い遂げるから！」

「そ、そう……？　シィ、ありが……と？」

もうロイは、曖昧に笑うしかなかった。

確かに、主にアリスの言うとおり、言葉だけ聞けば詐欺の一環のように考えてもおかしくないが、そのロイが言う『親切な人』とは、アリシア、つまり特務十二星座部隊の一員で、オーバーメイジなのだ。

社會的に絶大な地位を確立している彼が、悪事を働いて、自ら地位を貶めることをするわけがない。

無論、昨日のアリシアが偽という意見もあるかもしれないが、Ｓランクの錬金を詠唱破棄、錬陣なしで使えるなんて、アリシアの本しか考えられない。

で、數分後、ロイたち５人は決闘場のステージに辿り著いた。

「本當に直っている……」

思わずに慄いてしまうロイ。

たかがステージの修復、面倒くさいことは事実だが、なにも絶対に不可能というわけではない。そのジョブに付いている人に頼めば、６時間もあれば元通りにしてくれるだろう。

だからたち４人はそこまで驚愕しなかったが、ロイだけは知っている。

第１決闘場のステージ。

昨夜ここで行われたのはただの決闘ではなく、聖剣と聖剣のぶつかり合いだったのだ。アリシアに仲裁されたあとに自分が立っている周りを見てみれば、そこはまるで下位とはいえ、竜が暴れたように破壊されてしまっていた。

しかも大気中の魔力はれていて、魔を発するにも、なかなか難しい狀況。

大気中の魔力がれている狀態で魔を使うことは、嵐の中で気球を飛ばすようなものである。

だというのに、この完度。

ロイは思わずステージをってしまったが、破壊される前よりも綺麗で丈夫になっている気がする。

「あっ、ところでロイ？」