「結婚、かぁ……」

なぜかアリスは寂しそうに遠い目をしていた。

もしかしたらイヴとマリアの発言で、結婚についてなにかを考えてしまったのかもしれない。しかしロイには報が不足していたので『なにか』が的になんなのかまではわからなかった。

「んで、ブロンドのロリ巨がロイのカノジョのシーリーン・ピュアフーリー・ラ・ヴ・ハートだろ？　ジェレミアと決闘することになったきっかけの」

「先輩、ボクのカノジョをロリ巨とか言わないでくれませんか？」

事実、シーリーンは長が１５１ｃｍでＨカップのロリ巨だったが、それをロイと本人の前で口にするのは、いささか配慮に欠けている。

「うぅ～、ロイくん……」　と、恥ずかしがるシーリーン。

ちなみにシーリーンはＨカップだが太っているわけではない。スリーサイズは上から９０・５５・９４だ。いわゆる、の子として出るところは出ていて、くびれるところはくびれている型で、それのメリハリがの子として極端なだけである。

バストとヒップは平均よりも膨らんでいて、ウエストは平均よりも細い。普通、バストとヒップが膨らんでいるならウエストは太くなるし、ウエストが細いならバストとヒップはなだらかになるのに、だ。

要するに、バストとウエストの差、そしてウエストとヒップの差が大きいため、の子として理想的なＨカップを実現させているのである。

ウエストが細いから、より巨が際立つと言うべきか。

「んで、黒髪ツインテールが妹で、黒髪お姫様カットのロングストレートが姉貴か」

「イヴ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクだよ」

「マリア・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクです。よろしくお願いしますね」

どうやらレナードは、シーリーンのことは知っていたが、イヴとマリアのことは知らなかったらしい。

恐らく、シーリーンのことは、ジェレミアとの決闘の際に、噂で耳にしたのだろう。

「あれ？　レナード先輩はアリスのことを知っているの？」

ふと、シーリーンが小首を傾げた。

話の矛先が自分に向くと、ようやくアリスはハッ、とする。

「初めまして、レナード先輩。私はアリス・エルフ・ル・ドーラ・オーセンティックシンフォニーと言います。エルフ・ル・ドーラ侯爵の次で、ランクはウィッチです」

優雅に微笑んで會釈するアリス。

しかしここで「「ん？」」と、ロイとレナードは頭の上にクエッションマークを浮かべた。

ロイは思う。昨日のレナードの話のとおりなら、アリスはレナードのことを知っているのではないか？　つまり、初めましてではないのではないか？　と。

「先輩、１ついいですか？」

「ななんあななああんあな、ななな、なんだ？」

わかりやすすぎるぐらい、レナードは揺していた。

これ以上、追い打ちをかけるのは気が引けたが、確認にしないわけにはいかなかったので、ロイは覚悟を決めて、レナードに問う。

「アリスと話したのって何回ぐらいですか？」

「……、……実は今回も含めて片手で數えられるぐらいだ」

「あれ？　私と先輩、どこかでお會いしたことありましたっけ？」

確定だった。

レナードは真っ白な灰のようになってしまっている。

そんな彼のことを、ロイは哀れむような目で、アリスは（私、なにか悪いことしちゃった！？）と、オロオロしたじで対応する。

「あっ！？　そうです、先輩！」

「！？　なんだ、アリス！？」

「どうして昨日、ロイに決闘を申し込んだんですか！？　決闘は模擬戦と違い、互いに譲れない想いがあって、場合によっては命を懸けることもある戦いなんですよ？　ロイになんのイヤな部分があったんですか！？」

「……っ」

「ただ気に食わなかったから～、なんて理由は許しませんよ？　私には、貴族として風紀・秩序を守る義務があるんです！」

「あ、アリス……、その言い方はマズイよ……」

ロイがアリスに注意するも、もう遅い。

レナードは、肩をプルプルと震わせていた。

これはもう、レナードはを制できなくなってしまうだろう。

「――ッ、俺はアリス、テメェと前に會ったことがあって、その時、テメェに惚れたんだよ！」

「……うえ？」

「それでアリスの隣にいるロイが気に食わなくて決闘を申し込んだ！　そしてロイの方も、テメェを奪われたくないから決闘を承諾したんだ！　文句あっか！？」

「ろ、ロイが、私を奪われたくない……っ？」

アリスが頬を赤らめてロイのことをチラ見する。

アリスは、このような狀況なのに、がドキドキしてしまうのが、自分でも意味不明だった。

「アリス！」

「は、はい！？」

「急で悪いが、俺はテメェのことが好きだ！　付き合ってほしい！」

レナードは真剣な眼差しでアリスのことを見る。

勢い任せとはいえ、ここまできてしまったら、ロイに止めることはできない。そもそも、止めようとももはや思えない。あとはもう、最後まで勢いに任せきってしまうべきだ。

シーリーンはアリスのことなのに顔を真っ赤にして、イヴは正直、面白がっているじで、マリアはどこか（あ～あ……）というじ。

そしてアリスは心の底から驚いたように――、

なにも考えられないような顔になっていて――、

しかし數秒後――、

「私は――先輩とは付き合えません」