《ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&長チート&ハーレムで世界最強の聖剣使いにり上がる語~》4章5話 茜に染まる西洋風の川の岸で、が限界を――(1)

アリスは1人になれる時間がほしくて、王都を橫斷するように流れるフリーデンナハト川の岸にいた。川沿いは西洋風に整備されており、地面は長方形の、例えるなら大きめなレンガを組み合わせたような模様に整っており、小粋でシックなじにイメージされた鉄柵に、アリスは肘をかけて黃昏たそがれる。

「――――」 と、アリスは無言で遠くの景を眺める。

遙か西の空の彼方には、センチメンタルで、溜め息を吐きそうになるほど、彩りかな茜の夕日。その逆、遠く果てない東の空の向こうには、紺青と紫を混ぜたような終わりのない、どこまでも、本當にどこまでも続くような夜空が広がっていて、さらに、そこには銀の月が獨りで寂しそうに、ポツンと浮かんでいた。

まさに、月は東に日は西に、である。

そしてその中間には、世界そのものが演出家にして、これを生み出したクリエイターと言わんばかりに、言葉を失うほどしい、茜と紫と紺青のグラデーションが広がっていた。

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王都の空が神様のキャンパスだとしたら、さぞかし、神様は世界というキャンパスに、優しさというモノを表現したかったのだろう。それぐらい、王都の夕空は、空っぽだったアリスの心に沁しみる。

それが王都の街並みをし切なげ、そしてノスタルジックに演出した。王都の石造りの建はどれもが茜に染まり、その影はし虛しい。

「私、どうしたらいいんだろう――」

目の前の景は本當にしかった。

そしてそのような景、世界を心が空っぽな時に見てしまうと、思わず人は、そしてエルフは涙ぐんでしまう。なくともアリスはそのようで、彼の目には、薄っすらと、涙が浮かんでいるではないか。

アリスが、悲しくて、寂しくて、ついに雫が一滴、瞳から手の甲に落ちようとした、その時だった。

「アリス!」

「!? ――、あっ、ロイ?」

アリスのもとに、息を切らしたロイがやってきた。恐らく、どこかでアリスを見失ってしまったが、それでも、見つけてあげるために、全力で走ってやってきてくれたのだろう。

ロイに泣いているところを見られたくない。

ゆえに、アリスは意地を張るように、そして、泣いていません、と、言葉ではなく態度で主張するように、目を手の甲で拭った。

「どうしたのよ、そんなに急いで?」

「――っ、アリスは、ボクの大切なの子だ」

「ふぇ!?」

「大切な友達なんだ」

「むっ、それで?」

「大切な友達が、つらそうで、今にも泣きそうな表かおで帰って行っちゃったんだ。追いかけるに決まっているじゃないか」

「ちょ――、ロイ!?」

ロイはアリスに歩み寄って、彼の手を自分の手で握る。

ロイの顔は真剣そのもので、彼に見つめられて、アリスは頬を赤くして顔を逸らした。

自分は今、赤面しているだろうけど、それは夕日のせい。

という、誰にも聞かせられない言い訳を自分のに殘して。

だとしても、アリスはロイに手を握られて、全然イヤなじはしなかった。それだけは、例えアリス本人でも、誤魔化しようがない。

むしろ、もしも葉うのなら、アリスは、もっと、ずっとこうして、ロイに手を握っていてほしい。

心が休まるから。心が溫まるから。心が癒されるから。

「ねぇ、アリス」

「な、なによ?」

「本當は政略結婚なんて、したくないんだよね?」

「っっ」

「いや、きっと誰でもしたくないと思うから當たり前か。なら、言い方を変えるけど、割り切れているように虛勢を張っているだけで、本當は、割り切れてなんて、いないんだよね?」

「~~っ」

嗚呼、そうか。

なんで今まで、自分は心のどこかで泣きそうになっていたのか。

その答えを、アリスはついに知る。

誰も自分を、理解してくれなかった。理解して、その次に、めてくれなかった。

アリスはロイに気付かれないように、顔を俯かせて自嘲するように笑う。

當たり前だろう、そんなの。

政略結婚についていろいろ、どのような形でも関りを持たれるのがイヤだった。だからロイとシーリーンにしか當てはまらないが、バレてしまった相手には強がりの態度を見せた。だというのに、強がりを見破って、本當の自分に気付いてほしいなど、矛盾だ。

こんなに自分に都合がいいのだ。今まで誰にもめてもらえなかったのは、自業自得だろう。

「ゴメン、アリス、今まで気付いてあげられなくて」

でも、ロイだけは気付いてくれた。

瞬間、アリスのは、トクン、と、高鳴る。

切なくて、切なくて、苦しいのに、もっと切なくなることを求めてしまうこのじ。

アリスは今、このじに溺れていたかった。ずっと、この時が止まればいいと思った。

この気持ちの名前を知らないのに。

アリスを真剣に見つめるロイ。

ロイに手を握られるアリス。

2人のことを、2人の世界を、茜の夕日と銀の月だけが眺めていた。

「私……私っ」

「うん、ゆっくりでいいよ?」

優しい聲で、ロイがめてくれる。

自分のペースでいいのだ、と。

「本當は……っ、結婚なんてしたくない!」

切なげに、を傷めるんじゃないかというほど痛ましげに、アリスはんだ。

もうダメだ。我慢できない。

この瞬間に、再び、先ほど拭ったのにアリスの目から、涙が溢れた。

「イヤよ……っ、私、初めては好きな人に捧げたかったのに……。キスだって、まだ誰ともしたことがないのに……」

「――――」

「相手が悪い人というわけじゃないわ……。でも、好きというわけでもないのよ……。そして私は……好きな男以外と結婚なんかしたくなかった!」

「――――」

「結婚は幸せなことだから――この人なら私を幸せにしてくれる。私もこの人なら幸せにしたいと心から思える。そんな最のパートナーを自分で探して、幸せな家庭を作りたかった!」

「――――」

「なのに……っ、なのに、なのに、なのにッ! なんでお父様の言いなりにならないといけないのよ! 貴族の娘であることが、私が私であることよりも大切なの!?」

的になってしまうアリス。

私が私であること。今のアリスは冷靜じゃないから、訊いても答えられないだろうが、これは別に、自分が自分である証明アイデンティティや、己が信じる生きる理由レゾンデートルの話をしているのではない。

ただ、簡単なことで、當たり前のことで、ありふれていることで、あとしでいいから、結婚に関することだけでいいから、私、アリスの気持ちを尊重してほしい。本當にそれだけのことだった。

アリスは毎日毎晩、苦しくほど悩んだ。

貴族の娘として、生まれる前からの決定は、本人の気持ちよりも大切なのか、と。

「結婚って、ウェディングドレスって、の子の夢じゃないの……? 私はッ、誰かに、例えお父様だとしても、の子としてごくごく普通の憧れを奪われたくない……っ、手を付けてほしくない……っ」

アリスの言うことは間違っていない。個人の夢や幸せ、そのようなモノに誰が無許可で介していいのだろう?

夢を応援するのも、幸せを後押ししてあげるのも、親ならばありふれたことかもしれない。事実、アリスの父親はそうだ。

しかし本人の意思を無視した応援や後押しは、逆に邪魔でしかない。

そう、押し付けた善意など、悪意となにも変わらないのだ。

世の中には、自己満足や、余計なお世話という言葉があるように。

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