《ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&長チート&ハーレムで世界最強の聖剣使いにり上がる語~》4章6話 茜に染まる西洋風の川の岸で、が限界を――(2)
「アリス……その、結婚っていつなのかな?」
ロイは慎重に訊く。言葉のチョイスだけではなく、聲のトーンや、早さ、聲に込めるべきにまで拘こだわって。
アリスはロイの優しい、そしてめるような聲にしだけ落ち著きを取り戻して、彼になるべく心配をかけさせないような聲で答える。
「正直に言うと、わからないのよね」
「わからない?」
怪訝そうに繰り返すロイ。
ロイの反応は當然だ。いくら政略結婚だとしても、自分の結婚の日にちがわからないなど、どう考えてもおかしい。普通ならば、結婚式、籍する日、そのどちらもを知っていて然るべきだというのに。
「きっとお父様、私に準備をさせない気なのよ」
「準備をさせない? 準備をさせるじゃなくて?」
「心の準備をさせるよりも、駄々をこねる準備をさせない。まぁ、戦闘で例えるなら奇襲みたいなものよ。お父様はそういうエルフ。もしかしたら、結婚の數日前、いえ、最悪の場合、結婚の前日に迎えにきて強制的に連れていく、なんてこともあるかもしれないわ」
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「連れていくって……」
「以前にも言ったけど、爵位が上なのよ、相手の方が。だからこっちから向こうに出向く形になるわ」
「まさか――っ」
「相手の貴族が國王陛下から與えられた領地はしとはいえ王都から離れているから、馬車に乗って、そこそこ地方の方に、ね」
衝的にロイはアリスの両肩を摑んだ。
そして彼の蒼い瞳を真っ直ぐ見つめる。
「アリス、それじゃあ、學院はどうするの?」
「――――」
「結婚したら言わずもがな、相手の一族の一員になるんだよ? そうなれば、その男の領地から離れることはできない。いや、できるんだろうけど、なくとも、學院に通うために長期間にわたり王都にいることは絶対にできない。その領地からしてみれば、領主の妻が長期間不在ってことになるんだから」
おかしな話だ。
嗚呼、いつの間にか、アリスではなくてロイの方が泣きそうになっている。
世の中には、別れを寂しく思う人と、思わない人がいるというが、ロイは前者らしい。
そう、ロイは『別れ』というモノに、非常に敏だった。
特に『本人の意思を無視した別れ』というモノに。
一方で、なんとなく、アリスはロイのそういうところをじ取った。
だからこそ後ろめたさで目を逸らしてしまい、全てを諦めたように言い捨てる。
「――自主退學、でしょうね」
「そんな……っ」
これはアリスが悩んでいる問題だ。
だというのに、ロイは自分のことのように絶して、腳の力が抜けてしまい、その場に崩れ落ちてしまう。まさに茫然自失《ぼうぜんじしつ》だ。
ロイの頬には、今にも一筋の雫が伝いそうである。
逆に、アリスはそのようなロイを見て、このような狀況なのに、しだけ幸せをじた。
そっか、この人は、私のために泣いてくれるのね、と。
それが泣きそうになるぐらい嬉しい。このどうしようもない狀況の中で、それだけが、たった1つの支えのように思えた。
殘酷だ。
ロイはアリスに行ってほしくないから涙を流したのに、その涙がアリスに(ロイが私のために涙を流してくれた。それだけで、心の支えは充分よ)と、思わせてしまったのだから。
「ロイには前にも何回か言ったわよね? 私にはお姉様がいる、って」
話しかけられても、ロイは返さなかった。
心の力が湧いてこなかった。
「シィの部屋で説明したとおり、お姉様はお父様を超えて、政略結婚を回避したわ。だからこそ、お父様は今回の婚約に必死なのよ」
「――――」
「お姉様は、全然家にも帰ってこないし、連絡も寄こさない。本當に自由なエルフよ」
「――――」
「お姉様は、あまりこういう言葉は好きじゃないけれど、紛うことなく天才で、でも、それをコンプレックスにじることはなかったわ」
「――――」
「コンプレックスよりも、尊敬や憧れの方が強かったもの」
「……っ、それで、アリスはなにを言いたいんだい?」
「お姉様にできたことが、私にはできなかった。それはつまり、私がダメだっただけ。イヤなことはイヤだけど、どうにかできるチャンスは確かに存在したのに、私がそれを生かせなかっただけよ」
「そんなことは――ッッ」
「だから、ロイはもう気にしないで?」
その瞬間、ロイの心に途轍もない後悔の気持ちが浮かび上がった。それは徐々に心を侵食して、自分が自分自に、どうしようもない無力を突き付けているようである。
結論から言うと、ロイはここにきてはいけなかった。
アリスを追わない方がよかった。
なぜなら、アリスはロイがこなければ孤獨だったが、まだまだ絶の中で多なりとも抗ってみせようとしただろう。弱々しくても、抵抗が無意味に終わることが約束されていても。だがロイが追い付いたせいで、アリスの中に(ロイを心配させないように、結婚をけれましょう)という考えが浮かび上がってきたのだから。
そのことをロイはすぐに察する。
當事者なのだ。すぐにわかった。
だからロイは、無力に叩きのめされながら、せめてもの懺悔の気持ちで、アリスに訊いた。
「なにか……っ」
「?」
「なにか、ボクにできることはあるかな?」
が切ない。聲も切ない。切なくて切なくて、いつの間にか、本格的に涙を流し始めてしまう。
ロイは友達と別れるのが心の底からイヤだった。
否、イヤなんてレベルではなく、認められなかった。そんな現実、拒絶すらしたかった。
それには、ロイの『前世』が関係している。
だが前世とか現世とか、世界の違いは関係ない。この世界で言うところのロイという人格が経験した『とある記憶』、それが、今、ロイをここまで苦しめている。
世界を超えてもロイを苦しめる記憶。
だからロイは、罪滅ぼしのように、アリスに訊いたのだ。
「だったら、ロイ、最後まで、私の人役を貫いて?」
「――――」
「思い出作りよ。ロイと偽の人同士なんて、若者向けの小説みたいじゃない」
どうやら、もう、それしかすることが殘っていないらしい。
無論、ロイが頭を捻れば、もっと多くのすべきことが浮かび出てくるはずだ。
だが、アリスにお願いされたことは、ただそれ1つなのだ。
アリスに悪気があったわけでは斷じてない。だが、それは、アリスからはそれしか求められていないということの証のようにも思える。
ここでアリスを責めるのはお門違いだ。むしろ、責めるべきは自分自。
アリスは、優しいからこそ、ここでこう言ったのだ。
「――――っっ」
ロイは膝に力を込める。そうして、ようやくまともに立ち上がった。
西の空の彼方には茜の夕日。
東の空は紫と紺青に染まっている。
淡くて、儚くて、どこまでも幻想的すぎるほど幻想的でしい、茜と紫と紺青のグラデーションの空。
その下で、ロイはアリスと向き合って、約束した。
「わかったよ。ボクは最後まで、キミの人役を貫いてみせる」
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