《ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&長チート&ハーレムで世界最強の聖剣使いにり上がる語~》4章7話 2人きりの自室で、ロイにを――(1)

しばらくして、ロイは寄宿舎の自室に戻ってきた。

自室にはロイしかいない。他の誰もいない。

ゆえに、我慢してきたモノを発させられる。

「ふざけるな! なにが聖剣使いだ!? なにがゴスペルホルダーだ!?」

みっともないことだということは百も承知。自分で自分を稽だと思う。

だとしても我慢してきたモノを堪えることができず、ロイは荒っぽく機とセットになっている椅子を蹴り飛ばす。

我慢してきたモノ。

これを一言で語ることはできない。で例えると、黒が混じったような赤。無力というわりには打ちのめされている覚はなく、逆に抗いたい覚さえあり、正直、誰かに、もしくはなにかに暴れたい。激怒というわりには他人よりも自分自を責めていて、本當に當たり散らしたい相手は、椅子でも、ましてやアリスの父親でもなく、無力な自分だ。

強いて言うなら、自分でもよくわからない、というだろう。

「ジェレミアの時もそうだった……っ、前回は上手くいったけど、結局、ボクは貴族に勝てない……っ!」

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武力では権力に勝てない。『強さ』では『偉さ』に負けてしまう。

力がほしい。戦える力ではなく、それこそ貴族のように、自分の大切なモノ全てを守れる力が。

ようやく、ロイは自分を知った。

自分も、いつか、貴族のようになりたいと。

「……ッッ」

奧歯を激しく軋ませるロイ。

いささか、ロイの反応は過剰だ。確かにアリスとは友達ではあるが、普通の友人関係では、友達が各々の家庭の事に首を突っ込むなどありえない。他の家の都合に介しようなど、友達という枠を超えた行だ。

仮に介したら、いい方に転がっても、悪い方に転がっても、どちらにせよ、「キミはどうしてこんなことをしたんだ?」なんて呆れられるのがオチである。

言ってしまえば、悪い言い方になるが、常識的ではない。

だがロイがここまでどうにかして抗おうとしているのには、理由があるのだ。

この世界にではなく、前世の出來事に、理由が。

「もうボクは、不本意な離別なんてッ、不條理な現実なんて、いらないんだよ!」

現実なんて、思いどおりに進む方がない。珍しい。

教育機関の學試験や、就職活なんてまだまだ優しい方で、人間が人間である以上、あるいはエルフがエルフである以上、人間が人間であることそのもの、エルフがエルフであることそのものが、世界一、思ったように進まない、上手くいかない壁として立ちふさがる。

要は、対人関係ほど複雑で、繊細で、壊れやすい問題はないということだ。

対人関係の問題に比べたら、なくともロイは、社會學の課題も、科學的な論題も、どこか簡単なように思えた。

無論、重要度や優先度や規模は、対人関係の問題よりも、社會學の課題や、科學的な論題の方が上である。

だからロイは――、

「ハハ、ハ、ハ……、個人的であればあるほど、問題っていうのは、大きく見えるモノなのかな……」

遠くにあるモノが小さく見えるように、逆に、近すぎるモノは大きく見える。

ゆえにロイは、そして彼以上にアリスは、現実に、対人関係に打ちのめされている。

個人的であればあるほど、問題というモノは大きく見える。ロイのこの発言は1つの真理だ。なぜならば、問題が個人的であればあるほど、當事者は他人事ではなくなってしまうのだから。

「せめて、アリスのお父さんの向やスケジュールさえわかれば……」

ほんの先刻までは荒々しく、苛立たしげに、激しいじで喚ていたのに、今、ロイはもう意気消沈してその場に座って、蹲ってしまう。

アリスをなんとかしたい。してあげたい。

例え自分に全く関係がなかったとしても。

例え自分がどんな目にあったとしても。

それぐらい、ロイは必死である。

「くそぉ……」

ロイが今、抱いているこの覚。理解できる者と、できない者がいるだろう。

理解できない者は、しロイの反応が唐突、なんて言うかもしれない。だが、それは問題ではない。

問題なのは、逆に、ロイのことを理解できる者の方なのだ。

理解できる者は、ロイの優しさに共したのかもしれない。

だがそれは、ロイの本質ではない。

ロイが抱いている、抗いようがない覚は、真の意味で、彼にとって彼だけのモノだった。ただの1人にも、99%を伝えることができても、100%を伝えることはできないのだ。

(――嗚呼、この世界にきても、ボクは前世の鎖から解放されないのかな?)

もう聲を出す気力もなかった。力の問題ではない。心の力、気力の問題だった。

狀況はダメというほど詰まっている。

他人に協力を求めるという手もあるが、それは即ち、アリスの事を全て説明するということだ。でなければ、協力なんて求めようがない。

だがしかし、それは論外だ。

普通に考えて、政略結婚のことをみんなに知られてしまうなんて、理屈がどうとかではなく、純粋に、イヤな気持ちになってしまう。

その上、アリスから話を聞いた分には、相手は30代後半の男らしい。

年頃、思春期、花も恥じらう乙が30代後半の男と結婚します~など、もはや屈辱だ。相手が悪いというわけでもないが、どうしようもないの反応だ。

確かに、アリスと例の男ほどの年の差で結婚した事例は、ロイの前世にも、この世界にも、それなりに存在する。だから絶対におかしいというわけでもないが、それは両者が好き合っている場合だ。別にアリスは、例の男を好きというわけでもない。

「頼むよ――、神様。なんとかしてほしい、なんて、人任せなことは言わない。でもせめて、ボクがどうしたらいいかだけ教えてほしい。そこから先は、ボクがするから――」

ロイの聲が虛しく自室に響く。

彼の部屋には彼1人しかいないのだ。誰かにその祈りが屆くわけがない。

ふと、ロイは窓の外に視線を送る。

もう、夜だ。

こんな時間に、明かりも燈さずに、床に蹲っているなんて、ハタからみたら痛々しすぎるほど孤獨だろう。

「――――?」

だがもし、この部屋にロイしかいない。それが、彼の勘違いだったら?

急になにもない虛空が揺れた。なにもない空間に、水が揺れるような波紋が広がった。

それを認識した瞬間、ロイはバッと慌てて立ち上がる。

數秒後、そこから姿を現したのは、1人のだった。

「あらあら、うふふ。隨分と疲弊していますわね」

「アリシアさん!?」

王室直屬の特務十二星座部隊、その星の序列第2位の【金牛】、オーバーメイジのアリシアがそこから忽然と出現した。

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