《ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&長チート&ハーレムで世界最強の聖剣使いにり上がる語~》1章6話 キスのあとで、挑発を――(2)

自分以外の4人がロイに視線を送っているのだ。それに気付いたアリエルも、視線を辿り、ロイに著いた。そして、心の底から嘆したように、ロイに名を訊たずねた。

ロイは以前、新聞にも顔寫真付きで載ったことがある。アリエルがロイの顔を知っていても、別に不思議ではない。

「お初にお目にかかります、エルフ・ル・ドーラ侯爵。確かに、ボクはロイ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクです。アリスさんには、日頃からお世話になっております」

こうして挨拶をしている間にも、ロイはアリスからの視線をじていた。

縋るような、しかしそれに応えないで、といわんばかりの視線。

助けを求めるような、しかしそれを無理と諦めているような瞳。

別れを惜しむような、しかしそれをれらない表かお。

二律背反の中で、アリスはいろいろな正反対なモノを一緒くたにして、最終的には切なそうに、涙を流す一歩手前な表かおをした。

「噂はかねがね聞いている。君も、アリスの友達なのだね?」

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「お言葉ですが――」

「?」

「ボクとアリスは友達ではありません」

あまりに無禮な発言に、シーリーンもイヴもマリアも、ウソ偽りなく、本當に心臓が止まりそうになった。驚いた時、例えば馬車に轢かれそうになった時、心臓が飛び跳ねそうになり、背中がまるで低溫やけどのように、冷たいのか熱いのかわからなくなるが、今のロイの無禮はそれを超えている。

3人は、まるで演劇で役者がセリフを間違えた時のように、自分のことではないのに、が心から熱くなる。

「ほう? それはいったい――」

「ボクとアリスは、友達ではなく、人です」

さも當然と言わんばかりに、ロイは、貴族でもあるし、その上、人の父親本人であるアリエルに言ってのけた。

流石のアリエルも、この発言には目を見開く。

翻ってアリスは、やかに、を高鳴らせる。

嗚呼、ロイは約束した。

約束したのだ、アリスと。

ボクは最後まで、キミの人役を貫いてみせる――と。

それを、たった1つ、アリスとの約束を、本人の父親が現れたからといって曲げることは許されない。

例え世界中の全ての人が許そうと、ロイ自が、約束を曲げることを、良しとしない。

ロイ自が、約束を破ることを許さない。

もし許してしまえば、今度は、自分自を許せなくなってしまいそうだ。

1度誓ったことを裏切ることなど、自分の信念を裏切ることと同義。

まだ、この時は、約束の言葉にあった『最後』ではないのである。

(だったら、父親の前でも、人役を貫かないとね)

無言のままのロイとアリエル。

長の関係で、ロイがアリエルを見上げて、アリエルがロイを見下す。

だが、ロイはアリエルから視線を逸らさない。

逸らしたら負けだ。

己おのが雙眸に、ロイは強い意志を込める。そして彼は、目の前の貴族を見據えた。対してアリエルの方は、真意を察することなど、推し量ることなど不可能なほど、なにも伝わってこない鋭い雙眸で、ロイをねめつける。

「ボクはアリスさんが結婚することを知っていました」

「それで?」

アリエルは、上から目線で、ロイに続きを促す。

だが、ロイもそれに怯むことはない。

「その上で、ボクはアリスさんとキスしました」

とんでもない発言をするロイ。思わず、マリアなんかは卒倒しそうになって、後方に倒れかけた。そんな彼を、近くにいたシーリーンが支えて、の魔の適がカンストのイヴがヒーリングする。

だが、それに意を介さず、ロイはなおもアリエルに真正面から視線をぶつけた。

これは挑発だ。

父親に対して、箱り娘の、嫁り前の娘のファーストキスを奪ったと宣言する。

これでムカつかない父親などいるはずがない。

「君は――」

「はい」

「――覚悟ぐらい、できているな」

「でなければ、わざわざ侯爵様の前で、このようなことは言いません」

毅然とロイは言い放つ。彼に引く気はないようだ。

翻ってアリエルは、ふぅ、と、1つ溜め息を吐く。

貴族に対してこの発言、これは普通ならば不敬に値する。だがしかし、不敬の基準は、當然ながらそれぞれの貴族、各々のじ方に拠よってしまう。ではアリエルの場合はどうかというと、彼は(これを不敬罪としたら、私の貴族、そして子の親としての底が知れる)と考えた。

それに、見ろ。

アリエルは真意を隠した目で、先刻からこちらをずっと見據えているロイの目を一瞥した。

この年は、いい目をしている。

これに応えなければ、自分は貴族として一生、先代や先々代に顔向けできない。

ゆえに、ロイをどうするかなど、自明なことだ。

「よろしい、ならば決闘だ」

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