《ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&長チート&ハーレムで世界最強の聖剣使いにり上がる語~》3章1話 報確認のティータイム(1)

結論から言えば、ロイが作り方を教え、魔族領に潛するまでにイヴとアリシアによって完した銀塩インスタントカメラによって、マリアは即行で自分の任務を終わらせた。

これを知ったら寫本なんてまどろっこしいですねぇ! と言わんばかりに彼は學院に保管されていた卒業生=軍屬北西區域第13研究所の研究員の學士、修士、博士を問わない論文をメチャクチャ撮りまくった(當然ひとまず、公に発表されていて、在籍生なら誰でも借りられるそれに限られたが)。

それがシャノンという子に扮していたロイが帰宅した時、テーブルの上に広げられていた寫真である。

「反則ですねぇ、これ」

と、個人的には反則と認識しながらも、特に悪びれた様子もなく、マリアは紅茶を一口、口腔こうくうに含んだ。そして味を堪能し終えて嚥下えんげすると、ティーカップをソーサーに置き直す。次いで、テーブルの中央にあったクッキーをひとつ摘まむと噛んで、含んで、味わう。

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拠點のリビングにて、なんというか、もう、非常に和んでいた。

「まぁ、魔なんて大量破壊攻撃手段があれば、科學の方はなかなか進歩しないよね……。國の予算も科學者より魔研究員に多く分配されるはずだし」

マリアの対面の席では、ロイがコーヒーを飲みながら魔族領で売られていた本を読んでいた。

なぜかアリスやレナードが奴隷制度に嫌悪を抱いていたとおり、人権水準はグーテランドの方が上であったが、この書籍から得た報から察するに、科學水準は魔族領の方が上回っているようである。

「うん、特に今は戦時中だし、生活をかにする科學よりも、敵國を討つ魔の方に需要が集まっているんだよ」

最後に、ロイの隣の席でシュークリームを食べているイヴ。指に付いていた白いクリームを舐め取ったあと、口元にも付いているのに気付いたようで、ペロッ、と、舌をばしてそちらの方も拭ってしまう。

の方もロイの帰還から數十分後、異世界アイテム製作工場と化したアリシアの拠點からB班の拠點に戻ってきており、今はこうして椅子に座り、テーブルにシュークリームの山を築いて休憩中だった。

「原子論がほぼ確立されているのに、向こうの世界の18世紀レベルの技力しかないのも、そのせいか……」

「でもお兄ちゃん、王都に初めてきた時、中世みたいな街並みって言っていなかったっけ? 18世紀は近世だったような……」

「ボクも去年、調べてみたけど……、王都はどの區畫でもテセウスのパラドクスを防ぐために、理的な補修工事じゃなくて、魔による再生対処を義務付けているらしいね。100年後とか200年後には、大聖堂とかだけではなく、王都全が歴史的価値の高い1つの建造區域になるんじゃないかな? 今でも充分高いと思うけど」

「て、てせ……なに?」

「なにかしらの作られたを構築する要素、それを補修工事のたびにれ替えていった場合、最終的に當初の対象を構築していた要素が1つもなくなったら、同じ形をしていても同じ存在と言えるのかな、っていうパラドクスのことだよ。察しのとおり、建造に限定する必要はないけど」

「ぅん? それを防ぐとなにがいいの? 結局は気持ちの問題のような……」

「それもあるけど、一番はやっぱり、完した時點での素材を、後世でも研究できることじゃないかな? 補修工事でれ替える素材は當たり前だけど、完した時代の質じゃなくて、工事する時代の質になっちゃうし」

以上のとおり、ロイ、イヴ、マリアの3人、第562特殊諜報作戦実行分隊B班の面々は拠點にて、意外なことに割とくつろいでいた。

無論、休憩時間にはきちんと休養を取って、次の行まで自己管理をしておくのも、七星団の団員にとって大切なことではあるが。

「と、いいますか、イヴちゃん、まったく銀塩インスタントカメラの仕組み、知りませんでしたよね……?」

「まっ、待ってほしいんだよ、お姉ちゃん! わたしも學校に行っていなかったし、あと、そもそも、お兄ちゃんを基準にしちゃダメだよ、絶対! お兄ちゃん、とりあえず目に付いたを片っ端から調べていたし、明らかに小學生や中學生の知識量じゃなかったもん!」

「まぁ、不確定原理とか、トップダウン脳検索信號とか、子供に理解できるとは思えませんし、薄々そんな気はしていましたが……。とはいえ、これって、本當に魔力を使っていないんですよね?」

「厳に言えば、カメラ本、並びにハロゲン化銀やゼラチンやポリエステルとかは、確かにアリシアさんの錬金で作ったよ。素材をいちいち科學的なアプローチで作るより、時間を短できるからね。けれど、組み立てたあとは科學的な仕組みだけで作するから、魔力反応が検出される理由は特に思い付かないかな」

おかしかった。

イヴにはなぜか故郷の言葉が理解できなかった。

「ぜ、ゼラチンとポリエステルは聞いたことあるけど、は、はろ、げ……?」

「銀のハロゲン化合のことですね。えっと……臭化銀、塩化銀、ヨウ化銀、フッ化銀のことだったはずです、たぶん……。えっと……、その……、ハロゲンは弟くんとイヴちゃんの前世の元素周期表、その第17族に當てはまる元素の総稱だったはずですね」

「えっ?」

「えっ?」

「お姉ちゃん……、なら、ゼラチンとポリエステルは……?」

「あれ? う~ん……、ゼラチンはコラーゲンを加熱して出した……のはずですよね?」

「う、うん……、それはギリギリわたしでも聞いたことがあるんだよ……」

「それで、確か寫真のフィルムに使われているのは……えっと、ポリエステルの中でもポリエチレンテレフタラート……ってヤツでしたっけ? エチレングリコール? ってアルコールと、テレフタル酸? って有機化合を、合したポリエステルで、どうも昔、イヴちゃんがそれで船を作ろうとして、キチンと洗浄、除菌しなかったからカビを大量発生させ――」

「いやいやいや! お兄ちゃん!? お姉ちゃんにウソを教えないでよぉ!?」

「いやいやいや、イヴ、作ろうとしたじゃん。ペットボトルで船を」

「あっ……、ペットボトルのペットって、そういう……」

ふと、ロイどころかマリアにもジト目で見られていることに気付いたイヴ。

かなり長生きしているはずなのに、まったく勉強してこなかったことを咎められているような気分になり、気まずくなって即行で目を逸らした。

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