《クラウンクレイド》『14-5・Chaser』
14-5
禱の持っていた杖をけ取って桜が即座にそう言った。弘人はその言葉の意味を問う。
「只の杖って言うと?」
「魔の杖というのは、持ち主の魔力を補う為のものなわけ。だから例えば杖の材質には魔力のこもる柊を使って、杖の頭にはルビーを據え付けたりするわけ。でも、この杖は何の細工もされてない。木目調に仕上げてあるだけで、材質は金屬だわ」
「今の話、すごい魔っぽい」
桜の説明に禱は心したようにいう。魔らしさの欠片も無い素人の様な言葉に、桜が溜め息を吐いた。
「本の魔だから。つまり、禱の杖は形式的なになってるって事」
「そうだね、あくまでこの杖を持っている時に暗示を解除する為だけのものだから」
日常生活において魔法の思わぬ発や暴走を防ぐために、魔は自分に暗示をかけているという。それを解かなければ魔法は使えず、暗示をかける為に彼達は呪文を唱え、そして杖を持つのだと言った。
それが無ければ、先程見せていたような手の平で小さな炎を燈すくらいしか出來ないのだと言う。
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「それで、ここからが本題なんだけど」
ここまでの話であれば弘人が呼ばれた理由が分からなかった。魔についての意見換會であれば、弘人は完全に部外者である。桜が禱に杖を返しながら言った。
「禱の魔法の実力はかなり高いのが見てて分かったわ。あたしと系統は全く違うけど、ちゃんとした魔であるのは間違いないと思うわ」
魔法について弘人は詳しくなく、禱の実力とやらも見てはいない。しかし、彼は明瀬を連れて2カ月間生き抜いてきただけの実績がある。それだけの魔法の実力と判斷力を持っていると言える。
「あたし一人じゃなくて、禱と一緒なら遠くまで探索に行けると思う」
「それって」
「ヘリを追いかけられるかも」
確かに最終目的地はこのホームセンターではない。生き殘る事が目的であり、安全が保障されている此処は籠城出來ても、年単位で生きていく事は出來ない。ヘリが飛んでいる以上、救助の可能は見えていると言える。しかし、今までヘリから返事が返ってきた事は無かった。発煙筒等の合図に反応しないのなら、ヘリを追いかけるしかないのかもしれない。
だが、と弘人は思う。
「反対だ。危険すぎる。そんなことを二人だけに任せるわけにはいかない」
「私は構いません。救助の可能があるならそれに賭けるべきです」
禱がそう言った。その手にした杖を握り締めて。彼の言葉に、初めて強い意志が見えた様な気がした。彼はヘリを追ってここまで移してきた。危険を顧みずに。それをするだけの闘志と必死さが、彼の二か月間の生活を語っている様に思えた。
それでも、弘人はその提案を肯定できなかった。それは死と隣り合わせでしかない。
「ヘリは何度も目撃してる。発煙筒も焚いてる。発見される可能は十分ある」
「ヘリの高度は高くないから発見できていないとは思えないのよ。何か別の理由がある筈だと思うわ」
確かにホームセンターにはヘリの著陸は不可能である。建屋上はそれを前庭とした設計はされておらず、駐車場は凄慘な狀況でそのスペースは無い。発煙筒により此方の存在に気が付いていても、行できない可能はある。周囲に著陸できるスペースがあるかは分からないが、其処からホームセンターに向かうにはゾンビの群れとの遭遇は避けられない筈だった。
ならば、ゾンビと遭遇しても対処が可能な桜と禱が外に向かいヘリと一度接すると言うのは理には適っている。けれども、それを支持する事は弘人には出來なかった。魔法は萬能ではない、魔が無敵というわけでもない。噛まれれば染、そうでなくとも死。その可能は決して低いわけでもなく。
魔一人がいればゾンビを恐れなくて済むわけではないのだ。今まで多くの犠牲者を出してきた事実は消せない。
故に、弘人は反対し続けた。仲間を危険に曬す事は容認など出來ないと。強い口調で何度もそう繰り返す。
桜はし圧倒されて言葉に迷っていたが、禱の目線は鋭く、彼は冷靜に殘りの食料からリミットの日數を計算して告げる。
意見は堂々巡りで答えが出ない中、鷹橋が現れた。見張りの代の時間だと彼は言う。解散となり、椅子を立ち上がった禱は言う。
「明日、もう一度話し合いましょう」
【14章・を求めて 完】
ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―
第七五六系、恒星シタールタを中心に公転している《惑星メカニカ》。 この星で生まれ育った青年キラはあるとき、《翡翠の渦》という発生原因不明の事故に巻き込まれて知らない星に飛ばされてしまう。 キラは飛ばされてしまった星で、虹をつくりながらある目的のために宇宙を巡る旅しているという記憶喪失のニジノタビビトに出會う。 ニジノタビビトは人が住む星々を巡って、えも言われぬ感情を抱える人々や、大きな思いを抱く人たちの協力のもと感情の具現化を行い、七つのカケラを生成して虹をつくっていた。 しかし、感情の具現化という技術は過去の出來事から禁術のような扱いを受けているものだった。 ニジノタビビトは自分が誰であるのかを知らない。 ニジノタビビトは自分がどうしてカケラを集めて虹をつくっているのかを知らない。 ニジノタビビトは虹をつくる方法と、虹をつくることでしか自分を知れないことだけを知っている。 記憶喪失であるニジノタビビトは名前すら思い出せずに「虹つくること」に関するだけを覚えている。ニジノタビビトはつくった虹を見るたびに何かが分かりそうで、何かの景色が見えそうで、それでも思い出せないもどかしさを抱えたままずっと旅を続けている。 これは一人ぼっちのニジノタビビトが、キラという青年と出會い、共に旅をするお話。 ※カクヨム様でも投稿しております。
8 177【洞窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~
【本作書籍版1~2巻、MFブックス様より発売中】 【コミックウォーカーで、出店宇生先生によるコミカライズ連載中】 【コミック1巻~2巻、MFC様より発売中】 サンファレス王國の王子ヒールは、【洞窟王】という不遇な紋章を得て生まれた。 その紋章のせいで、ついには父である王によって孤島の領主に左遷させられる。 そこは當然領民もいない、草木も生えない、小さな洞窟が一つの孤島であった。 だが、ヒールが洞窟の中でピッケルを握った瞬間、【洞窟王】の紋章が発動する。 その効果は、採掘に特化し、様々な鉱石を効率よく取れるものだった。 島で取れる鉱石の中には、魔力を増やす石や、壽命を延ばすような石もあって…… ヒールはすっかり採掘に熱中し、いつのまにか最強の國家をつくりあげてしまうのであった。 (舊題:追放されたので洞窟掘りまくってたら、いつのまにか最強賢者になってて、最強國家ができてました)
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