《クラウンクレイド》[零10-6・呪詛]

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ゼイリ氏がフレズベルクのパーツを解し始めと、ウンジョウさんから上には話を通してあると言われて私達が利用できる部屋番號を教えられた。ウンジョウさんと私だけでし打ち合わせをして戻ってくるとムラカサさんしかおらずレベッカは何処かに消えていた。

ムラカサさんは私とウンジョウさんが二人きりで話し込んでいた事が気にかかっていたようであったが、私は大した容ではないと首を橫に振る。

「それよりレベッカは?」

「レベッカなら先に部屋に戻ったよ。私はゼイリのオジサンを手伝おうと思うけど」

「私では役に立てそうにないですし、部屋に戻ります。レベッカも心配ですし」

私がそう答えると彼はじっと私の顔を見ていて。

「どうかしましたか?」

「君は冷靜だね。君だってショックだったろうに、それでもそんな素振りも見せずにレベッカを気遣う事が出來るなんてね。君にとってレベッカはまだ日の淺い仲間だろう?」

冷靜、という評価に私は肩をすくめて否定のポーズを見せた。いつか同じ様な事を言われたのを思い出す。

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「怒りはじてますよ。今まで私達が見てきた理不盡が誰かの悪意によるものなら。私はその誰かを許せない。でも」

「でも?」

「それを今ばらまいたって何も解決しません。私達は然るべき相手に然るべき裁きをけさせる必要があるだけです」

私にとっての最後の線引きと言っても良かった。私のしてきた事の全てが間違いとは思いたくないが、それが私にとっての最後の一線ではあった。

力を持っているから、力を振るってしまったから。せめて、そこに悪意の介在を許してはいけない、と。

「君はとても理的で論理的なのね。すべての人がそうであったら、私達の世界もこうはなっていなかったでしょうね」

これは長い話になるかな、と予がして私は傍らに設置してあったベンチに腰を掛ける。彼が語り出す時の癖というものが何となく分かってきた気がしてきた。何にせよこの狀況で報はしでもしい。彼の次の言葉を私は促す。

「人はその全てにが付きまとうわ。それは論理的な判斷を狂わせるし、時に正しさという指標すら見失う。そして他者では変えることが出來ないものなのよね」

「……月並み言葉ですが、それを人間らしさと呼ぶのでは?」

「それ自は否定しないわ。でも、社會という集団をかすのに、もっとも邪魔なものでもあるわね。そんな愚か者はいつも世の中には溢れていて、それが私達の社會をわせる」

の口から滲んだのは強い言葉だと思った。容とは裏腹にそこにはが混ざる。例えばロトの言葉とは正反対な位に。

「この社會が歪で完全なものに変わったのは先人達の過ちの結果でしかないわ。人々は食料危機の時代を回避できなかった、でもそれを回避する為には幾らでも方法と機會があったのよ。

でも賢しい者も愚か者達もそれを選ばなかった。誰もが全の利益のために、論理的で正しい判斷が出來ていれば救えた筈だった。この世界が地獄に変わる前に」

「ハイパーオーツ政策の導前、ですね」

だがそれは。あまりにも理想的というか極論でしかない。現に世界は、その元に滅亡という危機を突き立てられて初めて変わった。ムラカサさんの言葉を借りれば「歪で完全なもの」になった。

私だって全てを肯定するわけではないけれど、きっとそれも人間の可能であるのではないのか。なくとも、世界を「正そう」とした三奈瀬優子を知っている以上、私は簡単にムラカサさんの言葉に頷けなかった。

「それでも、遅かったかもしれないけれど。なくとも世界は変わって、救えた人達がいたんですよね」

パンデミックという悲劇が起こるまで、この世界はきっとどの時代よりも恵まれていた筈で。それが全てを救えなかったとしても、それは最初「祈り」であった筈なのだ。

「だが世界は繰り返してしまったのよ。あの日、迷わず染者を殺すという選択肢が取れたなら、きっと世界は終わったりしなかった。例え歪でも世界は完全なままだった」

「それは……結果論でしかありません。小を犠牲に大を救う結論は簡単には出せるものではないです」

「そう語って死んでいった者達の死骸の上に、私達は立っているのよ。酷いぬかるみの様な、ね」

私は答えなかった。

この世界にゾンビを、悪意を撒き散らした人間はそんな風に社會を呪っていたのだろうかと考えてしまった。

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