《クラウンクレイド》[零10-8・幾重]
0Σ10-8
食事を終えて用意された寢室の部屋に向かう。この部屋には備え付けのシャワーあって、私は疲労を抱えてお湯を被った。
頭上からお湯の粒が降り注ぐ間、レベッカの言葉が何度も反芻する。きっと私の言葉はめになっていないだろうと思い、それを歯がゆくじた。
そしてレベッカに優しい言葉をかけながらも、私自、誰の言葉がしくて仕方がなかった。救ってしかった。
私には確かにあの時の記憶がある。目の前で人が死んでいく瞬間を、友達が死んでいくその瞬間を、決して噓なんかじゃないリアルなで目の當たりにしてきた。死の恐怖も痛みも苦しみも、希だってだって確かにじてきた。魔法という力を手にして、ゾンビという恐怖と対峙して、明瀬ちゃんという大切な人が側にいた。それは間違いなく噓じゃないって言えるのに。私はこの時代の人間であるのは間違いないと言う。
私のの中にあるナノマシンがそれを証明しているという。目を覚ました私は60年間の斷絶を越えてきたのではなく、ほんの數日か數週間か數年か紛れもなくこの世界の連続の中にいた。
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「……私の記憶には斷絶がある」
三奈瀬優子から清を奪った後。明瀬ちゃんを救った後。その後に記憶は途絶えて世界は変わっていた。有り得ない筈なのに。
「じゃあ、全部私の見てた夢だって言うのか。明瀬ちゃんの事だって噓だって」
私の聲は誰にも屆かなくて。明瀬ちゃんが今此処にいてしかった。それだけで良いのに、私の側には誰もいない。
誰も私にしい言葉をくれない。シャワーが自で止まって、私はまるで突き放されるみたいにシャワールームを出た。部屋の中には何故かレベッカがいて、気まずそうな表をして座っていた。
「あの、すいません。盜み聞きするつもりとかじゃなかった……のですが」
「別に気にしないで」
何の用事だろうかと思って私は彼の次の言葉を待つ。
「あの……なんだかまだ心が落ち著かなくて」
「うん」
「一緒にいても良いですか?」
「良いけど」
々とあり過ぎて私はもうベッドに倒れ込む事にして。今のんでいた言葉をレベッカに聞かれていたのも、どちらかというと恥ずかしくて私は早々に寢てしまおうと思った。
けれども、レベッカは私のベッドにり込んできて。そっちか、とし揺しながらも私はそのままでいた。
私の目の前で橫になるレベッカの顔が近くて、彼の整った顔立ちと明のあるをつい
見てしまっている自分に気が付いてふと視線を逸らす。
「パンデミックが起きたのは5年前です」
「うん」
「あの日あたしは母と出掛けていて、出先でゾンビパンデミックと遭遇しました。訳の分からないまま母に手を引かれ近くのビルに逃げ込んで。だけどそこで母は染しました」
布の中で、細々と呟かれる言葉は靜かに落ちていって。反響せずにシーツに吸い込まれていきそうで。目の前にあったレベッカの手を軽く握る。
「その時、當時特殊部隊に所屬していた父が偶然突してきたんです。父は母を見て迷って、それで噛まれて。あたしの目の前で二人とも染して、そして殺されました」
「そっか……」
「その時引き金を引いたのがウンジョウさんです」
「それは……」
「ダイサン區畫での子を助けた時から、あの日の事がずっと脳裏から消えなくて。目の前で二人が死んだ景が消えないんです」
その指先は震えていて私の手の中で、それは何かを求めて微かにき回る。シーツ越しに伝わる彼の熱が、私のそれとの境界を曖昧にしていく。
「あの時、あたしは強くなれって言われました。その言葉を信じてずっと戦ってきました。強ければ父も母も死ななかったんじゃないかって、強ければもう誰も殺させないんじゃないかって」
「それは」
「正しいのか間違ってるのかなんてわかりません。でも、あたしにはそれしかなかったんです。だから、あたしの全部が間違ってたわけじゃないって言葉は嬉しかったんです。あなたが今生きている事はそれの証明になるみたいで」
ぎこちなくばされた彼の手が私の頬にれた。くすぐったくありつつも、その指先があまりにもおしそうに繊細にくから、私はそれをされるがままにさせた。
優しく寄り添う様な言葉は、つい私の口を開かせる。
「明瀬ちゃんの為に、私は止まるわけにはいかなかった。負けるわけにはいかなかったから。二人で生き殘る為になら、何だって切り捨てられた。何だって出來た。そうやって進み続けてきていくうちに、私の傍には誰もいなくて、それでも明瀬ちゃんだけ居れば構わなくて……。なのに今、私の傍には誰も、明瀬ちゃんすらもいなくなってしまった」
「あたしがいます」
「レベッカ……?」
「あなたが幾ら進んだとしても、あたしが傍にいます」
それは今の私にとってはあまりにも強烈で、そして優しく甘い言葉の様に聞こえた。レベッカが私の頬に手を添えてその視線を私のそれと合わせてくる。その瞳の奧へと吸い込まれそうな覚が私の背筋をでて。
そんな中、部屋の片隅に置いた通信機から音聲がった。
『ダイニ區畫上空にフレズベルクを確認した!』
その通信と共にベットから跳び起きる。傍らのハンドガンを摑んで。
「……やっぱり來たか」
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